001話 5月10日#01
『おっと、カイト選手!相手の猛攻を鮮やかに避けました!』
「いいぞ!カイト、そこだー!」
「頑張れー、カイトくーん!!」
背中から聞こえる歓声。足元で舞う土埃。はあはあと息を荒げながらも、俺の目は相手の姿をしっかり捉えていた。
奥に見えるのは、長い杖を持ったローブ姿の魔術師。何度も叩きつける大技に耐えきる俺にしびれを切らし、イライラしているようだ。
「仕方がない。カイト、私が持つ最大の技をお前に見せてやる!!」先程から歓声よりも大きく聞こえる相手の魔術師の声が、そう叫んだ。
「『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』」
魔術師が魔法の詠唱を始めた。フィールド全体が黒い雲のようなものに覆われ、視界が真っ暗になった。
しんと静まり返る会場。俺は耳をそばだて、相手の動きを把握しようと気配を探った。
「これで終わりだ!観念しろ、カイト!!!」
魔術師が叫ぶ声が聞こえた瞬間、黒い雲がさっと晴れ、4つの魔法陣が俺の周りを取り囲んだ。そこから勢いよく噴き出す炎を剣で斬り裂き、相手めがけて一気に詰め寄る。
対戦相手は、驚きを隠すことができなかった。その場で固まり、目を見開いて俺を見つめる。
「喰らえーーー!!!」
俺は剣を振りかぶった。相手は魔法盾を展開したが、遅い。
魔法は完成せず、俺の剣は相手の腹に深々と突き刺さった。
「があああああ!!!」
魔術師はがっくりと膝をつき、杖を投げ出した。
『試合終了!カイト選手の優勝です!!』
その声を聞き、会場中が大きな歓声に包まれた。
「すげーーー!!さすがカイトだーーー!!」
「きゃーー!カイト君、かっこいい!!!」
「カイト、まさかあんたがこんなに強くなるなんてね」いつの間にか俺の隣に、見知った女性が立っていた。「見直した。あと、今まで散々嫌味を言ってごめん」
「これでわかっただろう!!」俺はにやりと笑った。「俺のやり方は間違っていない……俺の力は世界に通用するんだ!!」
「『世界』は言いすぎでしょうが!」女性は俺に微笑みかけた。「でも、あんたなら世界大会での優勝も夢じゃないかもね」
そこでやってきたのは、見た目は弱々しいおじいさん。重そうなトロフィーを両手で軽々と運んできた。
「おめでとう、カイト!これで晴れて君も『殿堂入り』じゃ!!」
俺はトロフィーを受け取り、それを掲げた。
会場中が、更に大きな声援に包まれる。
「おめでとう、カイト君!!」新聞記者っぽい人が、俺に近づいてきた。「今の心境をひとこと、お願いします!!」
「もちろん!!」俺は、会場中に響き渡る声で叫んだ。「サイコーーーーです!!!!!」
「ワーーーーーーー!!!!!」
その後、色んな人がフィールドになだれ込んできた。みんなの勢いで俺はもみくちゃになり……でも、心臓は喜びで弾け飛びそうだった。
「カイト!カイト!カイト!カイト!」
……カイト、カイト、カイト、カイ……
――ズドーーーーーーーーン!!!!
こんにちは初めまして~!く~が~です!
実は長編小説を、初めて書き終えられました。やったー!
最後まで楽しんでいただけますよう投稿を頑張りますので、よろしくお願いします!
追記:『ケレス』は、街の名前です。章にある地名が、主人公たちが今いる場所です。
あと、タイトルは日付です。1日ずつゆっくり進みます。なかなか濃厚な旅ですね笑




