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第二章 泰三の話-6

※本作は 文芸社より2026年7月に書籍化 されます。

応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。


30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。

母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。

どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。


それでも――

毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。


この作品は、

人生のどん底に落ちた男が、

どうやってもう一度立ち上がったのかという、

“再生の記録” です。


読んでくださるあなたの人生が、

少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。



ゲームに没頭していた日々と違い、旅に出ることは刺激溢れる冒険だった。泰三は、いつも感じていた倦怠感とは別に、どこか誇らしい気持ちを抱いていた。ゲームも最初のうちは面白いと感じるのだが、次第に飽きつつも、惰性で続けてしまうだけだった。そんな日常から抜け出しつつある今、泰三の心は驚くほど新鮮な気持ちに満ちていた。


未知の世界へ足を踏み入れるには勇気が必要だ。しかしながら、それこそが泰三が求める刺激だったことを、今はっきりと感じていた。


食後、カバンに念のために忍ばせておいた携帯ゲーム機を一応は取り出してみたが、ゲームを起動することなくカバンの中にそっと戻した。今はゲームをするべき時ではないだろう。内なる声が頭の中で忠告した。


それからは、車窓から流れる景色をぼんやり眺めたり、出勤途中のサラリーマンたちを観察したりして旅に浸る。日常生活を送っている中では、そんなことをする余裕などない。それを噛みしめるように、周りの風景・景色・人々を観察した。彼らは仕事へ向かう途中、必死に本や新聞を読んで時間を有効活用していた。そんな姿を見て、泰三は大学生という今の立場のありがたさを感じるとともに、なぜ、人はこうも必死に生きているのだろうかと、自分に問いかけていてみたが、現時点で答えは見つかりそうもなかった。


その後、泰三はお気に入りの音楽を聴きながら、家を出る前に手に取った、古びた本を読むことにした。普段は読書をしない泰三だが、移動時間のことを考え、バッグに忍び込ませておいたのだ。


その本は、父に内緒で拝借したものだった。久しぶりに読む本は、なかなか内容が頭に入ってこなかった。行きつ戻りつ、それでも、少しずつ本を読み進めるうちに物語の世界に引き込まれていった。ページを繰る手が進まなかったが、少しずつ、本の世界に引き込まれていった。


耳に入ってきた車内アナウンスに気付くと、もうすぐ上野駅に到着することを告げていた。ここ最近の泰三にしては、意外と集中力は続いたようだった。少し疲れを感じた泰三は、本を閉じ背筋を伸ばす。本を読むことで、夏休みでぼーっとしていた頭を久しぶりに使ったことで、五感が研ぎ澄まされたような気がした。


次は東京駅だ。そろそろ降りる準備をしなければ。読書を切り上げ、スマホを取り出した。泰三は地方出身の大学生である。都会に出るのは、気恥ずかしいながら、少し緊張していた。とにかく、駅のホームが広すぎて、どこへ向かえばいいのかよく分からないのだ。都会に住んでいる人にとって当たり前すぎることだが、田舎に住む泰三にとっては、新鮮なことだった。そのことを、恥ずかしいことだとは思いたくはなかった。初めてのことは、だれしも緊張し、そのたびに、人は、一つ壁を乗り越えてゆくのだ。


そんなことに思いを馳せていたら、もう東京駅に到着したとのアナウンスだ。泰三は、慌てて荷物を抱え、東京駅に降り立った。


広告なしで全文無料公開中! 続きは2026年7月文芸社書籍で加筆修正版を!

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