第二章 泰三の話-1
※本作は 文芸社より2026年3月に書籍化 されます。
応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。
30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。
母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。
どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。
それでも――
毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。
この作品は、
人生のどん底に落ちた男が、
どうやってもう一度立ち上がったのかという、
“再生の記録” です。
読んでくださるあなたの人生が、
少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。
ここで、幸助の話を一旦切り上げ、泰三の話をしようと思う。
ゲーム好きな大学生一年の泰三は、ゲーム三昧の日々を送っていた。現在は長い夏休みの真っただ中だ。冷房が適度に効いた部屋で、何も考えず、ただひたすらにゲームに没頭できるのは幸せの極みだった。泰三は主にアクションゲームをプレイしていて、その中でも特にサードパーソンシューターゲーム、通称TPSが好きだ。これは、三人称視点で操作するシューティングゲームで、主人公を前に見据え、操作できるのでまるで自分がゲームの主人公になった気がするからだ。泰三は一対複数で戦う、鬼ごっこのようなゲームが泰三の最近のお気に入りだった。このゲームについては人よりも秀でていると自負していて、漠然とゲームで生計を立てることができたらいいなぁ、とぼんやり思っていた。
ただ最近は、一時間ゲームをプレイすると自然と集中力が切れてしまう。要は、飽きてしまっていたのだ。小学校の頃などは、時間など気にせず親にしかられるまでゲームできたのに。もっと卓越した集中力が欲しい、ゲームスキルが欲しい。少年の頃よりも、間違いなく集中力が欠如してきている。なんともいえぬが、泰三にとっては、悲しい老化現象のように感じていた。
事実、ゲームをするのに飽きてきたし、せっかくの夏休みなのだから、何か変わったことをしたい。そう泰三は考えるようになっていた。大学生の夏休みがいくら自由といえども、ゲーム三昧では、なんとなく気が引けるし、家族や友人たちに示しがつかない。普段は外出することが少ない泰三であったが、人生の中で一番時間に余裕があると考えられる大学の夏休み。ゲームで時間を潰すのは、さすがの泰三も気が引けた。普段とは何か違うことをしてみたい。人生というものに、「飽き」を感じていたのかもしれなかった。そうだ、旅に出よう。TVなどで耳にタコができるほど聞いた、使い古したフレーズではあったが、ふっと、そんなフレーズを思い出し、泰三の心は、しがらみから解放された気がした。
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