第一章 幸助の話-21
※本作は 文芸社より2026年3月に書籍化 されます。
応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。
30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。
母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。
どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。
それでも――
毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。
この作品は、
人生のどん底に落ちた男が、
どうやってもう一度立ち上がったのかという、
“再生の記録” です。
読んでくださるあなたの人生が、
少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。
幸助には幼い頃に体験した、少し奇妙な出来事がある。
当時の幸助は、よく運動する少年だった。特にサッカーが大好きで、卒業ビデオでは「将来はサッカー選手になりたい」と夢を語っていたほどだった。その頃は、弟と一緒にミニサッカーをするのに夢中になっていた。ただし、場所が悪かった。車庫の中でサッカーをしていたのだ。
普段は車が停まっている状態でプレーしていたが、その日は車庫に車がなかった。だから、ボールが少しでも転がると、障壁となる車がないため、簡単に国道まで出てしまう。しかも、その国道は交通量が非常に多いものだった。
しかし、幸助と弟はサッカーに夢中で、そんな危険など気にも留めていなかった。そして案の定、ボールは国道へと転がっていった。幸助はボールを追いかけ、安全確認もせずに飛び出していった。大人の今であれば、絶対にしないような無茶な行動だったが、如何せん、当時はまだ子供だった。
ボールを追って国道のセンターライン手前まで来たとき、なぜか足がピタリと止まった。まるで誰かに止められたような感覚だった。その瞬間、猛スピードで接近していた車が急ブレーキをかけ、幸助の目の前を通り過ぎていった。
「何やってんだ、バカヤロー!」
と、当然のように運転手に怒鳴られた記憶がある。もしあの時、足が止まっていなかったら――—今思うとゾッとする。もしかしたら即死していたかもしれない位であった。
また別の日にも、似たような不思議な出来事を経験した。些細なことで弟とケンカになった。少年時代にはよくあることだ。ただし、その時も場所が悪かった。
その時、幸助は切り立った崖の縁に立ち、下が気になって覗いていた。落ちても命に関わるほどではないが、確実にケガをするであろう高さだった。弟がふざけ半分で幸助の背中を押した。もちろん、弟もまだ分別のつかない子供だったから、事の重大さなど微塵も考えていなかったのだろう。「あっ」と思った時には、幸助はすでに崖から落下していた。
「このままだとやばい」――そう思った瞬間、目には見えない何かが幸助の右手首をつかみ、壁に沿って伸びていたツタを「ガシッ」と握らせた。今でも、その感覚をはっきりと覚えている。
その後、助けを呼び、父親に引っ張り上げてもらって事なきを得た。もちろん、その後はたっぷり絞られた。
このような経験から、幸助は科学では説明できない「何か」の存在を信じるようになったのかもしれない。そして、あの「おみくじ」の出来事も含めて、神様のお告げのようなものを、藁にもすがる思いで信じるようになった。
だからこそ、幸助は「小説」を書こうと決めた。
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