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第一章 幸助の話-15

※本作は 文芸社より2026年3月に書籍化 されます。

応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。


30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。

母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。

どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。


それでも――

毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。


この作品は、

人生のどん底に落ちた男が、

どうやってもう一度立ち上がったのかという、

“再生の記録” です。


読んでくださるあなたの人生が、

少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。



そんな折、母・純子の介護生活は突然終わりを迎えた。ある日の仕事中、父から一本の電話がかかってきた。

「母を施設に入れようと思う」

その言葉に、すぐには返答できなかった。

「母さんのことは大事だが、それ以上に、お前たち息子や娘の未来の方がもっと大切なんだ」と父は言った。

家族が介護に疲弊している中で、人生を変えた大きな決断だった。


 父が母に施設への入所を勧めたところ、意外にも素直に了承したという。にわかには信じられなかった。もしかすると、母自身も実家での生活に居心地の悪さを感じ始めていたのかもしれない。毎日、疲れ切った家族の顔を目にし、イライラした父の怒声が飛び交うことも少なくなかった。迷惑をかけているという実感も多少はあったのだろう。


 終わりの見えなかった介護生活は、四年で突然幕を閉じた。


もちろん、母親が老人ホームに入所しても、週末を利用して施設に面会に行くことは続けていたため、介護が完全に終わったとは言えなかった。しかし、父と姉、そして幸助は、介護からようやく解放されたと言ってもよかった。


久しぶりに、母親抜きで自由にドライブに出かけることもできるようになった。気兼ねなく外出できる時間が戻ってきたのだ。


とはいえ、母親が実家からいなくなったことを、手放しで喜んでいたわけではない。それだけははっきりと言っておきたい。幸助は、人知れずその事実を悔やんでいたし、ふとした瞬間に母のことを思い出してひっそり枕を涙で濡らすことも少なくなかった。寂しさは確かに存在していた。


会社に復職してから約一年が経った年末、幸助は実家へ帰省した。しかし、風邪をこじらせてしまい、ほとんど年末年始を布団の中で過ごすこととなってしまった。さらに、弟の啓介もインフルエンザにかかってしまい、実家に戻ることができず、せっかくの休みを棒に振る形となった。まるで不運が重なったような年末だった。


(まあ、こんな年末もある。仕方ないよな)


幸助はそう思いながら、静かにその時間を受け入れていた。


そんな中、父・勝彦からふと投げかけられた言葉が、幸助の胸に深く突き刺さった。幸助が日々の仕事に対して感じていたことを見透かしたかのような一言だった。


「俺を安心させてくれ」


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