#2 父親のキャラ崩壊が酷い
二話目からなんだこのタイトルは…(?)
あれから、私たちは学んだ。
色々と……凄かった。前世で真面目に学校に行っとけば良かったかもと、一般常識を家庭教師から教わっている時に思ったことを、再度思ってしまうくらいには。
と言っても、”私”の方は、貴族の娘は婚姻相手に任せることが普通だってことで、具体的な行為の知識や、実技的なことは学ばなかったんだけど、どうやら”俺”の方は違ったようで……⸺。
「暫く、スタイルがいい人の肌は見続けたくない……」
と、”私”とのティータイムの時に撃沈していた。
どうして見続けたくないのか聞いてみたら、「前世よりもナイスバデェで沈んでるので三割……それ以上は聞かないで」と言われたので、大人しく引き下がることにした。
……そりゃあ、前世の私たちの身体は、甘くみて普通、正直に言って太っていた。いや、デブだった。
えだって、全部位の肉つまめるたんだよ? デブで正解だろーが! そうだよ私は不摂生のデブだったよバーカ!
………失礼。前世が出てきました。
たまーに、前世の私が出てきちゃうんですよね。多分、癖になっているんでしょう。常に頭の中に”二人”でいることが。だから、前世の私を”もう一人”として、認識してしまっているんでしょうね。
「ミジェ…何か怒っているのか?」
「いいえハジェ、少々考え事をしていただけですわ」
全く、死んでも面倒くさい女ですわね……前世の私は。正確には死んでる訳じゃない……いや、肉体死んでるから死んでて。いやでも”私たち”はどうなるんだ……???
「⸺そうだミジェ、好きなタイプは考えついたか?」
「っ! そうね……取り敢えず、私の話を聞いてくれる人がいい、とは考えついたわ。ハジェは?」
「俺を支えてくれる女性、かな。補佐官とかもいるんだけど、俺だけで公爵をやっていく自信がな……正直、今のスペックに助けられてる」
「それは私もよ…」
流石は公爵家パワーとも言うべきか……へっぽこな中身でも、意志さえ持てばある程度完璧にこなせるとは。
とまぁ、そんな軽いボケで、今日のティータイムはお開きとなった。
*
俺たちが慌てて知識を詰め込み始めてから数日。
ある日の昼食後に、父上から俺たちで執務室に来るようにと言われたので、俺たちで父上の執務室に訪れた。
そうしたら、こう言われた。
「ハジェート、ミジェール。お前たちはあと一月もすれば、学園へと入学となる。そして、コレは命令だ。二人には学園の卒業までに、婚約者を見つけることを命じる。家の利益に繋がる相手より、恋に落ちた相手を選べ。ただし、未婚約者であることは当然だ。ティアース家は、真に思い合う者と婚姻を結ぶことが、約束なのだ」
正直、驚いた。
一般的な貴族とした考え方だと思っていた父上が、まさか恋愛結婚を推奨するなんて。なるべく包んでそう言うと、父が”私”を見ながらこう言う。
「ハジェールは兎も角、ミジェールは公爵令嬢らしく見えるよう、多少厳しく接したからな」
……あぁ、なるほど。
”私”は昔、”俺”の剣術や馬術の訓練に参加したり、覗き見ては実行し、そしていつか騎士になると言って、領地に行く度に、屋敷を抜け出し、領民の困りごとを解決していく幼少期だった。
多分、前世の私の行動力の大部分は、”私”に分かれたのだろう。持っていってくれてありがとうと、持っていき過ぎだ馬鹿という、二つの感情をその辺に置いておき、父に質問をする。
「では父上。姉上の婚約については、どうお考えでしょうか?」
「その件か。昔は、アリステア自身が、殿下を好きになったと言っていたが……今はどうなのだろうな」
そう言いながら、目を瞑り、目頭を押さえながら天を見上げる……はい?
「どうって……父上、それはご自分でお聞きになってくださいよ」
「それで、それで……「お父様なんて嫌い」なんて言われたら、悲しいだろうっ!」
「えぇ………」
【速報】父、親バカだった【ツンデレか?】
……って違う、そうじゃない。隣の”私”から、”俺”と父、双方に対しての呆れの感情を感じ、冷静になる。
「⸺はぁ……お父様、質問がありますの」
「あぁ、ミジェール! 一体、なんだ? 何でも聞こうじゃないか!」
俺たちにバレたことで吹っ切れたのか、父はでろでろに甘い声音でミジェに返事をする……親バカだ、これは紛う事なき親バカだ。
「そうですね。先ずは、卒業までに、とのことですが、こちらはまぁいいです。私とお兄様の性格を考慮した期限でしょうから。そして……⸺今の流行りに合わせますが、運命の相手との婚姻が約束とは、どういう意味なのでしょうか?」
えっ何? 今って某台詞が出てくる系の本が流行ってるのか? ……後でミジェに貸してもらえないか聞いておこう。
⸺じゃなくてそう、それ。聞きそびれるとこだった。
「卒業までに、という期限はミジェールの言うとおりだ。お前たち二人は、期限を設けないと考えることすらしないからな。そして、約束については……悪いがそれは、成人まで言えない。それも、約束の範囲なのだ」
約束、なぁ……少なくとも、この真剣な表情に相応する内容なのだろう。わざわざ踏み込まずとも、成人すれば知れるのだ。
今は流しておこう。
「そうですか。では、私の方から、お姉様が今も殿下をお慕いしておられるのかをお聞きしましょうか?」
「ミジェールっ! 君はなんていい子なんだ!! 頼もう!!!」
父のめんどくさ……んん”っ、初めて見た面に引きながら、俺たちは父の書斎を後にした。
初めは、一般貴族の予定だったんですよお父様。でもいざ文面でお父様を出力したら、親バカになっちゃったんですよね。
……あれかな。作者が、気に入った子の父親は親バカにしたいんかな(?)




