第三十八話 ギルマス連合会議
新設されたディスコードチャンネル
「#32ギルマス連合」
初めての会議は、開始前から張りつめた空気に満たされていた。
各ギルドのギルマス、指揮官、副リーダーが順々に入室し、ついにはサーバー最上位の男まで現れる。
【ランスロット】「……なるほど。状況は理解した」
王国騎士団ギルドマスター、ランスロット。
ダークキングのカノン・黒王・椿に次ぐ戦力を持つ男は、静かな声で口を開いた。
【ランスロット】「ダークキングの偏重は、すでにゲームバランスの崩壊に近い。中央金に固定されているとはいえ、王国騎士団でさえ対抗は難しい」
誰も反論できなかった。
そのとき、サンドウォールのギルドマスター・すなっちが手を挙げる。
【すなっち】「一つだけ。……一つの区画に攻められるギルドは、一つだけだよね?具体的にどうするつもりなの?」
視線が集まる。
その中心で、ブルーアーチのギルマス・Mileyが深呼吸し、言葉を紡いだ。
【Miley】「“上位ランカー連合チーム”を作ります。
各ギルドのトップ層だけを抜いて、一つの精鋭部隊にする。ダークキングを倒せる唯一の方法は……これしかない」
会議の空気が揺れた。
続いて、フローライトのギルマス・ココアが不安げに尋ねる。
【ココア】「えっと……上位が抜けている間、うちはどうなるの? 区画、防衛できなくなるよ?」
その質問に、斬々抜断の指揮官・シャインが淡々と答える。
【シャイン】「どのみち、上位だけでどうこうできる相手じゃない。一度銅区画を落とされても、すぐ上がってくるだろう。“倒すまでは”同じことが繰り返されるだけだ」
その言葉に、ココアは黙るしかなかった。
そこで、牙が口を開く。
【牙】「……正直に言うわ。銅区画から上がるなら、戦力は嫌でも分断される。布告場所を固定させちまえば尚更だ。だから俺たち三ギルドは、“裏連盟”を組んで相互布告をしている」
一瞬で空気が凍った。
ウィンドクローバー、ブルーアーチ、ブラッドハウンド――3ギルドの裏同盟が露わになる。
焼肉キングダムのギルマス・らいおんがため息をつく。
【らいおん】「……それはいただけないけど、理にかなってるのも事実だな。じゃあ、焼肉キングダムも加えてくれよ、その裏連盟とやらに」
【ペンギン】「うちも分断されるのは辛いしね~。妥当だと思うよ」
そこへ、マルメンが口を挟んだ。
【マルメン】「ちょっと待て。それじゃ銀区画に行けるギルド、かなり限られないか?サーバー全体がぐちゃぐちゃになるぞ」
全員が困惑し始めるその瞬間。
アリスが凛とした声で言った。
【アリス】「だからこそよ。“上位”と言えるギルド――王国騎士団、サンドウォール、フローライト、キリキリバッタ。この四つで、金・銀・北西・北東の銅を奪い合って牽制するの」
静寂。
【アリス】「ダークキングに隙を見せないために、上位同士が常に角を突き合わせておく。その上で、“連合同盟精鋭チーム”がダークキングを叩く。……それが最適解だと思う」
数秒の沈黙のあと。
サンドウォールのすなっちが、大きく息を吐いた。
【すなっち】「……正直、いい気分じゃないね。でも……一時的に手を組むってんなら……仕方ないか。やらないと、結局サーバーごと飲まれるし」
折れた。
その瞬間、チャンネル全体に緊張が走り、同時に何かが動き始めた。
牙が笑い、ランスロットが黙って頷き、
らいおんが拳を鳴らし、マルメンが腕を組む。
ついに、サーバーの上位勢がひとつになった。
沈黙が落ち着いたその瞬間、マルメンが勢いよく立ち上がった。
【マルメン】「よっしゃ! ならさっそく、連合チームのメンバーについて考えようぜ! 上位実力者をどう組むか――」
だが、そこで静かに手があがった。
【White】「……いや、その前に。まずは各ギルドへ持ち帰るべきだと思う」
場がピタリと止まる。
【White】「この規模の動きは、ギルド全体の意思が必要だ。ギルマスだけで決めて、後から“聞いてない”なんて言われたら揉めるだけだしな」
言われてみればと、全員が頷いた。
【アリス】「確かに、それは正論だね。上位陣の抜けるギルドもあるし、ちゃんと話を通さないと」
【らいおん】「ウチもメンバーに通しておきたいしな。急に“明日から連合で戦います”じゃ、誰も納得せん」
【シャイン】「バッタをも同じだ。メンバーの意見は聞くべきだよ」
【牙】「ブルーアーチも人数多いしな。トップダウンで決めるにはデカすぎる話だ」
マルメンも肩をすくめ、苦笑した。
【マルメン】「まあ……言われてみりゃ、その通りだわ。悪い、ちょい先走ったな!」
雰囲気が和らぎ、誰もが同じ結論へたどり着く。
【Miley】「じゃあ、今日は各ギルドに共有して……」
【ランスロット】「明日、改めて正式に話し合おう。32サーバーの未来が関わっている」
【すなっち】「……まぁ、一時的だが協力するんだ。納得した上で進めた方がいい」
全員が深く頷き、会議は一旦解散の方向へまとまった。
【アリス】「じゃ、明日またギルマス連合で集合ね」
【Miley】「うん! 明日、正式に…みんなで決めよう」
こうして、32サーバー史上初の
ギルド横断会議第二ラウンドが、翌日に持ち越されることになった。




