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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第四章 マルメンの物語

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80/90

第二十一話 大連敗

 夜九時。

 マルメンは机に座り、深く息を吐いた。


 個人ランク戦。


 毎週の順位によって報酬が変わる、プレイヤー同士の真剣勝負。先週、奇跡的に全勝し Aランクに昇格した。


(今週は……通用するのか?)


 画面に表示される自分のランクが、まだ信じられない。Bランクだった男が、Aランク。


 けれど、準備は整っている。装備もスキル回しも研究した。


 そして対戦開始の表示が出る。


 相手は、見たことのないギルドタグ。

 名声も、装備も、桁が違った。


 戦闘が始まった瞬間、マルメンはすべてを悟る。


 速い。

 攻撃が見えない。

 HPが、溶けていく。


【マルメン】「……は?」


 何もできず、5秒で決着。


【敗北】


 画面に赤く表示される文字が、心を刺す。


 次の日も、また次の日も……

 結果は同じだった。


 攻撃が通らない。

 回避も間に合わない。 


 3連敗。

 4連敗。


 指が震えていた。


 (強いとかそういう次元じゃねぇ……)


 勝利どころか、抵抗すらできない。

 画面の前で、ただただ圧倒される。


【マルメン】「……これが、Aランクの世界か」


 最後の試合も、一方的に押しつぶされ、敗北で終わった。


【今週の戦績:0勝5敗】

【ランク:降格圏内】


 画面を閉じると、部屋の静寂が重くのしかかった。

 先週の全勝は、ただの幸運だったのかもしれない。

 胸の奥が、じくじくと痛む。


(はぁー、課金したろかな…)


 虚無感だけが残った。そのままアプリを閉じることなく、マルメンはギルドチャットを開いた。


 そこには、いつもの仲間たちの声が流れていた。


【クルス】「誰かー! 沼地手伝って!」

【金糸雀】「回復いるなら行くよ。あと5分で帰る」

【リオン】「お茶入れた、行くわよー」


 ただ、それだけの会話なのに。

 胸の奥の痛みが、少しだけ和らいだ。


 (……まだ、ここにいたい)


 敗北した夜でも。

 惨めな自分でも。


 この場所に、戻ってきたいと思った。


 ギルドホームのチャットが落ち着いてきた頃、

 マルメンは《ギルド管理画面》を開いた。


 明日はギルド戦。


 先週、キリキリバッタは全勢力で金区画を守り、そして負けた。大区画無しからの再スタートとなる。


 モニターの前で腕を組み、マルメンは決断した。


(二枚抜きを狙うなら、フローライトは無いな。リスクがデカすぎる)


 オニッシュがいる今、進行側での負けはほぼ無い。ただし、Rainが加わったフローライトは、中途半端な戦力では勝てない。


 南側のマップを拡大する。


 南西銅:ウィンドクローバー

 南東銅:ブラッドハウンド


 どちらもフローライトよりは 確実に勝てる相手。


【マルメン】「よし、今回は南西と南東の銅大区画を奪う。」


 即座に反応が返ってくる。


【クルス】「了解ッス。安定策だね」

【金糸雀】「賢い判断です、マスター」

【ルミナ】「勝率大事!」


 マルメンは、二手に分ける作戦図を貼った。


【作戦案】

 南西銅 ウィンドクローバー戦→ 本隊(8〜10人)

 南東銅 ブラッドハウンド戦→ 精鋭隊(3〜4人)


 ここで、オニッシュからメッセージが飛んできた。


【オニッシュ】「南東は僕一人でやるよ」


 空気が止まった


【クルス】「は? 無理無理無理!!」

【シャイン】「いくらなんでも舐めすぎよ!」

【ルミナ】「1人とか死ぬ気?」


 だがオニッシュは、淡々と言葉を続けた。


【オニッシュ】「大丈夫。僕一人でやった方が早い」


 まるで決まった事実を言うかのような声。


【たっちゃんパパ】「いやいや、負けたら終わりだろ!?」

【ノイス】「一人はまずいって、いくらオニッシュでも」


 それでも――


【オニッシュ】「一人にしないなら、行かない」


 マルメンは悟った。何かある…と。


【マルメン】「…わかった」


 マルメンは、息を吸って決断する。


【マルメン】「南東はオニッシュに一任する」

【たっちゃんパパ】「マスター!?」

【クルス】「いいの!?」

【ルミナ】「一人だよ!?」


 チャットが揺れる。

 だが、オニッシュは短く打った。


【オニッシュ】「大丈夫、勝つよ」


 信じるかどうかじゃない。

 彼がそう言ったなら、それが答えだ。


(……最強は、口数じゃない。結果だ)


 マルメンは作戦を確定させた。


 南西銅:本隊で確実に勝ちを取る

 南東銅:オニッシュが単独で突破する


 翌朝 七時半。

 キリキリバッタは無事、南西・南東への布告に成功。


 マルメンは、琉韻loveの動向に目を光らせながら、夜に始まる戦いへと頭を切り替えていく。


(昨日のオニッシュの発言、何か知っていた…だが、loveが言わせたわけでもなさそうだった…黒幕でもいんのか?)


 ギルド戦は、今夜。そして、単騎のオニッシュが歴史を変える事になる…良くも悪くも。

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