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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 Geminiの物語

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第十話 はじめての奈落

 その夜、フローライトの拠点は久しぶりに賑やかだった。そるとの再会を喜ぶココアが声をかける。


【ココア】「おぉ、そる!我が息子よ!」

【そる】「いや、何歳の時の息子よw」

【ココア】「さぁ、10歳いく前くらいかな?」


 拠点の空気は、笑いと冗談でさらに和む。


 その後、Geminiが仲間たちに声をかける。


【Gemini】「ねぇ、せっかくだし、奈落の様子をちょっと覗いてみない?」

【White】「うむ、気にはなっていた。この機会に行こう」

【ハルト】「武者震いが止まりませんね!ガクガク」

【烈火】「寒そうだな、火ならあるぜ!」

【ハルト】「あ、待って、やめてぇ!」


 この日ログインしていたのは、ココア、White、そる、リデル、烈火、ハルト、ゆず、そしてGeminiの8人。主力全員が揃ったフローライト最強布陣で、奈落に突入する。


 だが、第一層に入った瞬間、その油断はすぐに崩れた。雑魚敵が次々と襲いかかり、戦場は一瞬で混乱する。


【烈火】「くっ…雑魚にしては手強いな!」

【White】「全員、回復と範囲攻撃で対応!攻撃は俺が防ぐ! 焦るな!」

【リデル】「任せてください、みんな!」

【Gemini】「こっちも支援する!」

【ハルト】「スパイラル・ドライブ!」


 一体一体が、まるでボスクラスの強さ。フローライトの面々は追い詰められていく。


【ゆず】「全力で止める!」

【そる】「回復しつつ支援だ、行くぞ!」

【ココア】「全員、負けんな!」


 それでも敵の数は圧倒的で、回復と攻撃のバランスが崩れる。次々と味方が倒れ、拠点画面には無言の敗北だけが残った。


【烈火】「うわっ…やられた!」

【リデル】「くっ、無念…」

【ゆず】「強すぎるわ」


 全滅の余韻が残る中、ログイン画面に戻ったメンバーたちは、それぞれ息をつきながら感想を口にする。


【そる】「雑魚が手強い、てかあんなのボスやん」

【White】「あぁ、それがあの数では、防げん」

【ココア】「うん、こりゃ〜予想以上だねぇ」

【ハルト】「いやー、久々に手に汗握りました!」

【リデル】「でも、動きの確認にはなりましたね」

【Gemini】「全員で動くと面白いし、改善点も見えた」

【ゆず】「しかし第一層でこれなら、先が思いやられるなぁ…」

【烈火】「次は絶対勝つ!俺の火力でゴリ押す!」


 全滅という屈辱の後でも、仲間たちは笑顔や冗談を交えつつ、互いの感想を言い合った。

 奈落の恐ろしさを実感しつつも、どこかワクワクした気持ちも混ざる。

 フローライトの結束は、この失敗さえも次への糧としているようだった。


 フローライトの拠点での雑談を終えた後、Geminiは個人ランク戦の準備にログインした。

 今回の相手は30サーバーの戦士、名前はアトム。互いに面識はなく、どんな戦いになるか予測できない。


【Gemini】「よし…風の力、借りるよ…!」


 戦闘開始の合図と共に、Geminiの風魔法が舞う。アトムは盾を構え、距離を詰めながら様子を伺う。


【アトム】「ふむ…お前が相手か。よろしくな」


【Gemini】「こちらこそ…負けない!」


 最初は互角の攻防。Geminiは風の刃を飛ばし、アトムの攻撃を風の障壁で防ぐ。アトムも剣と盾で巧みに攻撃をかわしつつ、反撃を狙う。


【Gemini】「くっ…意外と手ごわい…!」


 風魔法を連続で放つGemini。しかし、アトムは動きを読み、盾で受け流すと隙をついて突進してくる。


【アトム】「ここか!」


 盾と剣の連携攻撃がGeminiに直撃。HPゲージがみるみる減っていく。


【Gemini】「まだ…まだいける…!」


 必死に風の防御魔法を展開するが、アトムの突進攻撃がタイミングよく決まり、Geminiは大きく吹き飛ばされる。


【Gemini】「くっ…!」


 最後の力を振り絞り、遠距離攻撃を放つGemini。しかし、アトムはすばやく間合いを詰め、盾で防御しながら剣で反撃。


【Gemini】「だめ…!」


 風魔法を尽くしたが、HPは0に。画面に「敗北」の文字が浮かぶ。


【アトム】「互角に見えたが、読みが勝ったな」


【Gemini】「くっ…くやしい…でも次は…!」


 負けた悔しさを胸に、Geminiは次の戦いへの決意を固める。


(まだ終わらない…次こそ、絶対に)


 探索は失敗、バトルも敗北。悔しさと虚しさが胸を締めつける。


 しかし、Geminiの本題はここからだった。


(この時間なら…オニッシュはいるはず…)


 彼女は深呼吸を一つして、意を決する。

 画面のチャット欄に向かい、手を止めずにメッセージを打ち込む。


【Gemini】「オニッシュ、元気?あなたと話がしたいのだけど…」


(お願い…返事を、して…)


 指先に緊張が走る中、送信ボタンを押す。

 送信から数分。画面が震えるように通知が届く。


【オニッシュ】「……わかった」


 Geminiはすぐに画面の前で息をのんだ。返事は短いが、確かにオニッシュからだった。


【Gemini】「ありがとう……!ディスコで話そう。文字じゃなくて、声で話したい」


 数秒の間があり、オニッシュから返信が来る。少し間を置いた後だった。


【オニッシュ】「……わかった。でも、一つ言っておく。何があっても驚かないでほしい」


 その言葉に、Geminiは胸の奥がざわつく。

 これから話される内容は、きっと自分の予想を超えるものになる。


(……驚かないで、か)


 小さく息をつき、Geminiは覚悟を固める。

 今夜、オニッシュの声を聞くことで、フローライトの仲間として、そして友として、知るべき真実に一歩近づくのだった。


ーーー 第二章 Geminiの物語 完 ーーー

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