表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 Geminiの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/102

第八話 物理僧侶そる、帰還

 レイド戦を終えた夜、フローライトの拠点には久々の安堵が漂っていた。

 星4クリアという結果は、失ったものの大きさに比べれば些細かもしれない。

 だが、それでも確かな一歩だった。


【スカイ】「ふぅー……今夜はよく眠れそう」

【リデル】「いい戦いでしたね。みんな息ぴったりで」

【タイガー】「来週は星5だな。燃えてきたぜ」


 笑い声が交じるチャット欄に、一つの新しい通知が表示される。


【システム】《そるさんがギルドに参加しました》


【Gemini】「……え、そるさん?」

【White】「……そる?まさか」


 次の瞬間、拠点の扉が開き、陽気な声が響いた。


【そる】「おうおうおうっ! お前ら、元気にしてたかーっ!」


 長旅を終えた冒険者のように、背中には分厚いメイス、肩には小型の旅袋。

 物理特化の僧侶として知られた、元フローライトのムードメーカー・そるが、満面の笑みで立っていた。


【スカイ】「そるさん!? ほんとに帰ってきたの!?」

【Gemini】「わ、わぁ……! 久しぶりっ!」

【タイガー】「おおっ、物理ヒーラーの伝説じゃねぇか!」


 チャットが一気に賑わう。

 中でも初対面のメンバーは、噂の本人を前に少し緊張していた。


【リデル】「はじめまして。ヒーラーのリデルです」

【烈火】「烈火っす! よろしくっす!」

【マルロ】「夜勤勢のマルロです。初期メンのそるさん、噂は聞いてましたよ」


 そるは笑いながら、彼らに親指を立てた。


【そる】「おう、よろしくな! いやぁ~留守にしてた間に、ずいぶん賑やかになったもんだ!」


 軽口を叩きながらも、その目はほんの一瞬だけ真剣になる。


【そる】「……オニッシュの件、何があったかはまだ知らねぇ。けどよ、俺が帰ってきたからには任せとけ。フローライトは、まだ終わっちゃいねぇだろ?」


 その言葉に、全員の胸が熱くなる。

 Geminiが小さく笑い、ココアがいない代わりに、Whiteが前に出た。


【White】「ああ。改めてようこそ、そる」

【そる】「おうとも!」


 笑いとスタンプが飛び交うチャット欄。

 失った仲間の影はまだ消えない。けれど、新たな希望が、またひとつ灯った。


 再会の余韻が落ち着いたころ、そるが手を打って口を開いた。


【そる】「で、もうひとつ。吉報がある」


 その言葉に、場の空気が一瞬静まる。


【スカイ】「吉報?」

【Gemini】「なになに?気になる!」


 そるはにやりと笑い、チャットのログに一文を打ち込む。


【そる】「椿とRainのこと、覚えてるよな?」


【White】「……まさか」

【タイガー】「あの二人がどうした!?」

【そる】「ふふっ、実はな。あの二人、今はダークキングにいる。俺もついさっきまで一緒にいたんだ」

【Gemini】「えっ、あのダークキングに!?」

【リデル】「極悪ギルドの……?」


 そるは頷き、少し真面目な声になる。


【そる】「ああ。でも今のダークキングは、昔みたいなギスギスした連中じゃない。上位勢らしい緊張感はあるけど、空気は前よりずっといい。……まあ、中には相変わらず変わってるやつもいたけどな」


 そして、そるは笑顔を浮かべたまま、最後の一文を打つ。


【そる】「で、本題だ。椿とRain、来週の中央金戦が終わったら、正式にフローライトに加入してくれるらしい」

【Gemini】「ほんと!? やったぁ!」

【烈火】「マジか!椿旅団のあの2人って、戦力爆上がりじゃん!」

【White】「椿とRainが戻ってくるのか。胸が熱くなるな」

【タイガー】「夢の再集結ってやつだ!」


 拠点チャットが一気に華やぐ。

 失った仲間の影を、それでも前を向いて歩いてきたフローライトに新たな光が差し込む。


【そる】「だからよ。泣き言はもうおしまいだ。来週は笑って迎えようぜ」

【Gemini】「うんっ! 絶対勝とう!」


 その夜、フローライトのギルドチャットは久々に深夜まで賑わった。

 笑いと期待と、少しの不安が入り混じる中、彼らの物語は、また次のステージへ進もうとしていた。


 その夜、フローライトのディスコは久々に深夜まで賑わった。

 笑いと期待と、少しの不安が入り混じる中、彼らの物語は、また次のステージへ進もうとしていた。


 フローライトは、まだまだ終わらない。

 オニッシュを失っても、歩みを止めるつもりなどない。

 仲間の絆がある限り、このギルドは何度でも立ち上がる。


 だが、Geminiは忘れていなかった。


 あの夜の戦い。

 勝利してなお、どこか悲しげだったオニッシュ。その瞳の奥にあった、消えきらない迷い。


(……絶対、何かある)


 彼女の胸の奥に灯ったその疑念は、やがて新たな物語への導火線となる。


 そして次の週、中央金戦。

 新たな仲間の帰還と、再び動き出す運命の歯車を、誰もまだ知らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ