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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 Geminiの物語

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第五話 Gemini vs ぽよぽよ 個人ランク戦開始!

 《個人ランク戦》

 それは、プレイヤー同士が腕を競い合う新たなイベント。

 四つのサーバーがひとつのグループとして編成され、参加者は総合力に応じてランク分けされる。


 今回、Geminiたちは「第8グループ」に属することになった。

 対象となるのは、29サーバーから32サーバーまでのプレイヤーたち。


 総合力ランキングのデータをもとに、各ランクへと自動振り分け。

 今後は、月曜から金曜までの戦績によって昇格や降格が決まる仕組みだという。

 ただし、今回はあくまでテスト版。昇降の判定は行われない。


 ランクは上から順に――

 S、A、B、C、Dの五段階。

 上位ランクを維持するほど、報酬も豪華になる。


 そして、Geminiが振り分けられたのはCランク。

 マッチングの結果、対面に現れたのは、まさかの同じ32サーバーのプレイヤー。


【Gemini】「……サンドウォールの、ぽよぽよ?」

【ぽよぽよ】「あら?あなたはフローライトの!」


 思わず声を上げるGemini。

 前回ギルドバトルで火花を散らした、あのサンドウォールのヒーラーとの再会だった。


 開始のカウントダウンが終わる。

 光のアリーナが展開し、Geminiとぽよぽよの姿が向かい合った。


【システムメッセージ】《個人ランク戦 スタート》


 風が弾ける。

 Geminiは詠唱を最小限に抑え、開幕から《ウィンドショット》を三連射。

 だが、ぽよぽよは軽やかに杖を掲げ、《リジェネ》を展開しつつ回避。

 淡い光が足元に広がり、ダメージを瞬時に相殺していく。


【Gemini】「やっぱり、簡単には削れないか……!」


 風の刃がかすめるたび、ぽよぽよのHPバーがわずかに揺れる。

 しかしすぐに緑のエフェクトが重なり、元通りに戻る。

 彼女は防御も回復も特化した純ヒーラー。

 サンドウォールの中でも屈指の生存力を誇るプレイヤーだ。


【ぽよぽよ】「そっちこそ、前より速くなってるね。詠唱キャンセル、覚えたでしょ?」

【Gemini】「まあね。でも……今回は負けない!」


 Geminiは杖を構え、両手を広げた。

 空気が振動し、アリーナ全体に風の魔力が満ちていく。


(まともにやってたらキリがない……!)


 発動スキル《ディレイ》。

 青いエフェクトがぽよぽよを包み、足場を乱す。杖を構える姿勢がわずかに崩れる。


【システム】《行動速度-20%》


【ぽよぽよ】「……これ、地味にいやなやつ!」


 詠唱が遅れたその一瞬を、Geminiは逃さない。

 再び《ウィンドショット》を叩き込みながら接近――そこから《通常攻撃》へと繋げた。


【ぽよぽよ】「通常攻撃!?そんなの効かないわ!」


 魔導書を装備するGeminiの通常攻撃は、ただの素手による一撃。

 魔法使いの中でも、物理攻撃力は最低クラス。

 本来なら、ダメージ表示すら霞むレベルだ。


 しかし、それは()()()()()でもある。


 風を纏った拳が、ぽよぽよの防御魔法をかすめた瞬間――

 小さく、だが確かにエフェクトが弾けた。


【システム】《詠唱妨害:成功》


【ぽよぽよ】「……なっ!? いまの、キャンセル狙い!?」


 通常攻撃による微ヒット判定を利用し、詠唱を中断させる。

 ほんの〇・三秒のラグを作るためだけの一撃。

 Geminiは、その隙を狙って杖を構えた。


【Gemini】「ウィンドランス!」


 至近距離から放たれた風の槍が、ぽよぽよの防壁を貫く。光の膜が砕け、エフェクトが飛び散った。


【ぽよぽよ】「セイントベール!」


 即座に再詠唱。光の壁が再展開し、ダメージを抑える。

 だが、そのわずかな間にGeminiの攻撃は確実に通っていた。


 単純な火力では届かない。けれど、タイミングと判断なら、誰にも負けない。

 Geminiの戦い方は、無課金ゆえに磨かれた技巧そのものだった。


【Gemini】「ソロでもそんな使い方できるんだ……!」

【ぽよぽよ】「研究熱心なの、無課金勢の宿命でしょ?」


 互いの攻撃と防御が噛み合うたび、火花のようなエフェクトが散る。

 風が吹き荒れ、光が舞う。どちらも致命傷を与えられないまま、時間だけが過ぎていく。


 残り時間30秒。


 Geminiは息を整え、杖を強く握る。

 ラストの一手に賭ける。


【Gemini】「ゲイルストームッ!」


 轟音とともに竜巻が天へと伸び、ぽよぽよを飲み込む。

 視界を奪う強風、渦巻く魔力。

 だが、その中心でぽよぽよの光は消えていなかった。


【ぽよぽよ】「フルリカバー!」


 光柱が吹き荒ぶ風を切り裂くように立ち上がる。

 体力ゲージが一気に満タンへと回復。

 GeminiのMPバーは、残りわずか。


 互いに、もう一撃ぶんの余力しかない。

 沈黙が走る。


【Gemini】「……勝負だね」

【ぽよぽよ】「うん、最後まで全力で!」


 二人の詠唱が重なった。


【Gemini】「ウィンドランス!」

【ぽよぽよ】「ホーリーバースト!」


 風と光が衝突し、アリーナ中央で爆ぜる。

 白い閃光が走り、両者が吹き飛ばされた。


【システムメッセージ】《Draw Game》


 画面に結果が表示された瞬間、Geminiはほっと息をつく。

 ぽよぽよも笑みを浮かべ、軽く手を振った。


【ぽよぽよ】「楽しかった。またやろ?」

【Gemini】「うん。次は……負けないから!」


 アリーナの光が消え、ログアウトカウントが始まる。

 勝敗こそつかなかったが、互いの努力と成長を確かに感じた一戦だった。

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