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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第十章 Whiteの物語

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第五十六話 新たな仲間と星5レイド

 ギルドバトルが終結した。

 長き激戦の果て、勝者と敗者が明確に分かれる。


 中央金を制したのはフローライト。

 さらに誰からも布告されなかった北西銀の維持にも成功し、盤面の中心を完全に掌握した。


 一方、北東銀はダークキングが手に入れる。

 彼らは焼肉キングダムの猛攻を退け、東銅の防衛にも成功。確かな戦力を誇示してみせた。

 対照的に、中央金を失ったサンドウォールは拠点をすべて喪失。かつての栄光は、いまや静寂の中に沈む。


 南銀では、キリキリバッタがブルーアーチを撃退し、領地の維持に成功。

 彼ららしい粘り強い戦いぶりを見せつけた。


 また、北東・北西の銅拠点は王国騎士団が獲得。

 南東・南西の銅はブラッドハウンドが手中に収め、西銅はウィンドクローバーが確保した。


 戦場の喧騒は静まり、マップ上には新たな勢力図が浮かび上がる。

 中央に君臨するのは、初の金拠点制覇を果たした《フローライト》。

 その名は今、サーバー中の全プレイヤーに強く刻まれていた。


 激闘の翌日。

 サーバー全体が、中央金を制した《フローライト》の名で持ちきりだった。

 戦闘ログのリプレイ映像は何度も再生され、特に“Whiteの国崩し”の瞬間は全チャで話題をさらっていた。


 その影響は、早速ギルドにも波及する。


【システム】《ギルド加入申請:5件》


【オニッシュ】「……まじで来てる。5人も?」

【ココア】「うん、昨日の戦い見て来たんじゃない?」

【スカイ】「フローライト入りたいです!って全チャでも言ってた人いた!」

【Gemini】「嬉しいけど、選考ちゃんとしないとね」


 加入希望者の中には、他ギルドで名を上げた実力者も数名混ざっていた。

 戦闘センス、アクティブ率、チームプレイ。どれも上位層に匹敵する。


【White】「ありがたい話だ。けど、入るなら覚悟してもらう。うちは“みんなでフローライト”だからな」

【オニッシュ】「その通り。誰か一人が強いだけじゃ、昨日みたいな勝利はない」


 最終的に、話し合いの末に2名の正式加入が決定。残り3名も調整期間を経て試験的に参加することになった。

 フローライトの戦力は、さらに厚みを増していく。


【ココア】「次の戦い、もっと凄いことになりそうだね」

【White】「あぁ。ここからが本当のフローライトだ」


 勝利の余韻を背に、新たな仲間とともに。

 《フローライト》は、次なる戦場に向けて静かに動き出していた。


 戦いを終えた仲間たちは、拠点チャットで思い思いに感想を交わしていた。

 だがその中で、早くも次の話題が持ち上がる。


【スカイ】「で、今夜のレイド、どうする?」

【Gemini】「行くしかないでしょ。勢いのまま討伐!」

【White】「俺たちの強さなら、もう星5 一択だな」

【ココア】「うん、星5以外は素材にもならないしね」


 士気は高い。ギルドバトルで勝利した勢いのまま、誰もが今夜のレイドを狙っていた。


 その時、ココアが何気なく口を開く。


【ココア】「あ、そういえば来週アップデートあるらしいよ」

【スカイ】「マジ? 内容出てる?」

【ココア】「まだ正式発表じゃないけど、レイドは星6解放らしいよ」

【White】「ふむ、また環境が変わるな」


 レイド前の緊張と、アップデートへの期待が入り混じる夜。

 フローライトの戦いは、まだ終わらない。


 夜九時。

 星5レイド《氷帝竜グラシアル・ロード》の討伐戦が始まろうとしていた。


 白銀の雪原に鎮座する巨大な竜。

 全身を覆う氷の結晶が月光を反射し、静寂の中で不気味な冷気を放っている。


【ココア】「まずは新メンバーの紹介からいこうか」


 ギルドチャットのログが流れる。

 そこには、見慣れぬ名前が三つ並んでいた。


【リデル】「初めまして、リデルです。スパイラルの副団長。解散したため移動しました、回復と支援担当です」

【烈火】「どうも、烈火っす。純火力剣士。氷ボスとか燃やすの大好物なんで!」

【マルロ】「夜勤勢です。基本深夜メイン、よろしくお願いします」


【ココア】「支援・火力・夜勤、完璧すぎるっしょ?」

【Gemini】「そこに夜勤なの笑う」

【オニッシュ】「じゃあ、さっそく本番で手合わせ願おうか」


 挨拶を終えると、緊張の空気が一気に張りつめる。

 Whiteの号令が響いた。


【White】「今回の敵は氷属性。全員、氷耐性の符を装備。凍結ギミックは詠唱で解除できる。支援陣、解除優先」

【リデル】「了解。バリアと浄化を交互に回す」

【烈火】「開幕、俺がタゲ取る」

【スカイ】「了解!」


 氷の地面がひび割れ、白銀の巨竜が咆哮を上げる。

 凍てつく風が吹き荒れ、画面全体が一瞬で氷の結晶に包まれた。


【White】「開幕ブレス来る! 前衛、盾構えろ!」

【Gemini】「バフ発動、攻撃20アップ!」

【リデル】「バリア展開、リジェネ入れる!」

【烈火】「燃やせッファイアスラッシュッ!」


 炎と氷が激しくぶつかり合う。

 烈火の攻撃が氷結の鎧を溶かし、スカイとココアの連撃がそこへ叩き込まれる。

 だが、グラシアル・ロードは凍結の吐息で反撃。全員の動きが一瞬止まる。


【リデル】「凍結解除っ!」

【White】「助かった、反撃行くぞ!」

【オニッシュ】「背面入った、今!」

【Gemini】「クリ率バフ、再付与完了!」


 ギルドの動きはまるで一つの機械のように噛み合っていた。

 誰も無駄に動かず、誰も孤立しない。

 新メンバーも完全に溶け込んでいた。


 討伐時間:13分57秒。

 星5レイド《氷帝竜グラシアル・ロード 討伐》


【スカイ】「勝った!てか13分台とかヤバい!」

【Gemini】「これ、ランキング入り確実だよ!」

【烈火】「初戦でこれっすよ!?入って正解でしたわ!」

【リデル】「支援回しきれたの、久しぶりです。気持ちよかった」

【White】「全員、よくやった。これでレイドでもフローライトを証明できたな」


 ギルドチャットには歓声と感想が溢れ、新メンバーの活躍も称えられる。

 画面の向こうでは、フローライトの面々が誇らしげに立ち並んでいた。


 その様子を、圭吾は自室の机でスマホを握りしめながら見つめていた。

 勝利のリプレイを何度も再生し、チャットのやり取りを追う。現実の彼は画面越しの戦いに興奮しながらも、静かな笑みを浮かべる。


 画面の向こうにいる仲間たち、新たなメンバーも加わったフローライトの連携と勢い。


 圭吾はゆっくりと息を吐き、心の中でつぶやいた。


「……楽しみだな」


 画面の光が部屋を淡く照らし、夜は静かに更けていった。


ーーー 第十章 Whiteの物語 完 ーーー

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