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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第一章 スカイの物語

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第四話 はじめてのパーティ!仲間との冒険は楽しい!

【ココア】「ウチのギルドから区画に入れるようになったよー!」

【そる】「スカイくんも見においで!」


「区画? なんだそれ」


 とりあえずメニューを開き、“ギルド”タブをタップ。表示されたのは、フローライト専用の区画。 ギルドメンバーだけが出入りできる、いわば拠点のような場所だった。


 転送ゲートから移動すると、そこには小さな村のような空間が広がっていた。木製の柵に囲まれ、中央には噴水と掲示板。まだ何も建っていないが、どこか温かみのある場所だ。


「おお、なんかそれっぽい!」


 スカイが感嘆していると、チャットから声が飛ぶ。


【そる】「フローライトの区画は、この前うちのマスターが“主”になって確保したんだよ」

【スカイ】「主? ギルドバトルに勝ったんですか?」

【そる】「あー、違う違う。このサーバー、できてまだ2日しか経ってないから、バトル機能はまだ解放されてないんだ」

【スカイ】「あ、そうか!ギルドバトルは土曜の午後九時ってチュートリアルで言ってた」

【そる】「そうそう。んで無人の区画は、先に誰かが“主”になれば、そのギルドのものになるんだ。だから今は早い者勝ち状態」


「なるほど……。じゃあ、今は土地争奪戦みたいなもんか」


 スカイは辺りを見渡し、思い出す。遠くに見える大区画には、黒い旗がいくつも翻っていた。

 その名は【DARK KING】。


【スカイ】「そるさん。あのダークキングってギルド、なんであんなに区画持ってるんだ?」


 ギルドチャットが一瞬だけ静かになる。

 そして、やや間を置いてココアが返した。


【ココア】「あー、それね。あそこ、ほとんど“転生者”なんだよ」

【スカイ】「……転生者?」

【ココア】「前のサーバーでガチ勢だった人たちが、このサーバーにキャラ作り直して最初からやってるって意味。装備の位置や効率的なルート、ギルド運営のノウハウを知ってる人達なの」


「なるほど……そりゃ強いわ」


 スカイは思わずうなった。

 生まれたばかりの世界で、すでに経験者たちが有利を取っている。公平なスタートラインなんて、どこの世界にも存在しないのかもしれない。


【ココア】「でもフローライトはまったり勢だからね。焦らずいこう!」

【そる】「うんうん。戦うより、拠点育てるのも楽しいし」

【ココア】「とはいえ、強くならないと話にならないし、練習はしたほうがいいよ」


 ココアの言葉に、スカイは少し背筋を伸ばした。


【ココア】「スカイ、今暇? 一緒に冒険行こうよ」

【スカイ】「え、いいの!?」

【ココア】「うん、洞窟ダンジョンまだでしょ? 手伝うよ」

【そる】「俺も行く。サポートは任せて」


「おおっ、初パーティか……!」


 スカイは胸が高鳴るのを感じた。

 ソロで挑んだ時は心細かったダンジョンも、今度は仲間がいる。ワープゲートを抜けると、あの青白く光る洞窟が再び姿を現した。


「洞窟ダンジョン…さっきよりずっと気が楽だ!」


【ココア】「じゃ、行こっか。スカイくん、後衛ね!」

【そる】「俺が回復する。無理しないで」

【スカイ】「了解っす!」


 三人は息を合わせ、闇の奥へと進んでいく。

 ゴブリンが現れるたび、ココアの短剣が閃き、そるのヒールが光を放つ。

 そるは課金していない純粋プレイヤーで、スカイと実力はほぼ同じ。

  一方ココアは、盗賊ながら攻撃力は戦士並み。課金装備の恩恵もあり、サーバー総合力ランキングは56位。上位の実力者だ。

 スカイも負けじと杖を構え、初めて詠唱ウィンドウを開いた。


「……ファイア!」


 放たれた炎の球が、ゴブリンを焼き払う。

 その威力に自分でも驚き、スカイは思わず笑みを浮かべた。


【ココア】「いいじゃん!ちゃんと魔法使えてる!」

【スカイ】「へへっ、魔法使い…いいかも!」


 パーティは順調に奥へ進む。

 先ほど苦戦した死人剣士も、難なく撃破できた。

 息を合わせて戦う快感に、スカイは初めて仲間と冒険する楽しさを知った。


 洞窟を抜けたあと、夜空の下で三人はログアウト前の雑談をした。


【そる】「俺たち、バランスいいよね」

【ココア】「そうだね!盗賊、僧侶、魔法使い…欲を言えば戦士か騎士もほしいかな!」

【スカイ】「新しい仲間入るといいっすね!」

【そる】「だね。さて、また明日あおう、俺は寝るよ」

【ココア】「私も明日、息子の野球の試合行くから落ちるね!」

【スカイ】「わかりました!また明日!」


 光の粒となってログアウトする直前、スカイは思った。昨日まで無名の孤独な新人だった自分が、いま少しだけこの世界に居場所を得たのだと。


 そして、その居場所を守るために強くなりたいと、心の奥で静かに願った。


 部屋の時計を見ると、時刻はすでに0時を回っていた。


「……教えてくれた大地に、感謝だな」


 ぽつりと呟き、ベッドに身を沈める。

 初めて“仲間”と呼べる存在と出会えた夜。

 穏やかな余韻に包まれながら、空也は静かに眠りについた。

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