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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第九章 Rainの物語

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第四十七話 昨日の友は今日の敵

 駅を出ると、夜風が頬を刺した。

 玲は肩をすくめながら、足早に家へ向かう。

 スマホでもログインはできる。けれど、移動中では集中できない。


 フローライトは片手間で勝てる相手じゃない。椿旅団のメンバーは皆、それを充分理解している。


 あの世界で本領を発揮するには、モニターの前で、両手が自由でなければならない。


 玄関の鍵を回し、靴を脱ぐ間も惜しんで電源を入れた。PCが唸りを上げ、モニターが光を放つ。

 数秒後、Rainが、戦場へと転送された。


 北西銅区画。

 雪原のように白く輝く大地の中央で、《焼肉キングダム》と《フローライト》が激突していた。

 フローライト側は、本日不在のタイガーが、誰も攻めてこない北西銀の主として自動配置しているのみで、他はフルメンバーという脅威のイン率をみせる。


 爆炎。雷光。崩れゆく防壁。

 その中心に、巨大な戦鎚を振るう影があった。


 《フローライト》のエース・オニッシュ。

 サーバー総合力ランキング4位。


【オニッシュ】「僕がいる限り、誰も通さないよ」


 その必殺のハンマーが地を打つたび、焼肉キングダムのメンバーが吹き飛ばされていく。


【ペンギン】「くっそ……一撃が重すぎる!」

【椿】「ちょ、回復!そる、回復!」

【そる】「無理!詠唱間に合わんって!」


 らいおんが盾を構え、オニッシュの攻撃を受け止めようとする。

 しかし、ハンマーの衝撃で地面が抉れ、盾ごと吹き飛ばされた。


【らいおん】「ぐっ……クソ、やっぱつえぇな!」


 戦況は、明らかにフローライトが優勢。

 その瞬間、氷の粒が空から降り始めた。


【Rain】「フロスト・ジェイル!」


 冷気が広がり、戦場の空気が凍てつく。

 オニッシュの動きが止まった。

 鎖のように絡みつく氷の結晶が、巨体を包み込む。


【ペンギン】「Rainさん来たッ!!」

【椿】「ナイスタイミングだ、今日だけは主人公の座を譲ろう!」


 上級水魔法使いのRain。

 その到着は、まるで冬の嵐の訪れだった。


【らいおん】「ナイス凍結! 一気に畳みかけ――」


 しかし、その声をかき消すように、炎が爆ぜた。


【スカイ】「バーン・エンチャント!」


 フローライトの魔法使い・スカイが杖を掲げる。

 紅蓮の魔力がオニッシュを包み、凍結を焼き払った。


【オニッシュ】「スカイ君、ありがとう!」


 砕け散る氷片。再び動き出す巨躯。スカイの動きはこれだけで終わらない。


【スカイ】「Gemini、アレ行こう!」

【Gemini】「オッケー相棒!」


 風魔法使いのGeminiが、スカイと連携魔法を放つ。


【Gemini】【スカイ】「ブレイズ・テンペスト!」


 攻撃を受けながらも、彼らを知る2人は感心する。


【そる】「くそ、やるじゃねーか2人とも!!」

【椿】「スカイとGemini、成長してるじゃない!!」


 オニッシュが雄叫びを上げ、再び戦鎚を振りかぶる。玲の手が、マウスを強く握りしめた。


 ここからが本当の勝負だ。


 オニッシュの雄叫びが轟く中、戦場の一角で閃光が走った。

 機動力のある槍使い、ハルトが地を蹴ったのだ。

 その突進は疾風のごとく、らいおんの懐を一瞬で詰める。


 両者、元ダークキング。だが、お互い面識はない。

 火花が散るように槍と剣が交錯した。


【らいおん】「甘い!」

【ハルト】「どうかなッ!」


 連撃をかわしながら、ハルトは後方へ跳んだ。そこへ、影が差す。

 《フローライト》のギルドマスター、ココア。

 その手には光速で閃く二本のナイフ。


【ココア】「援護するね、ハルト」

【らいおん】「チッ、来やがったか!」


 次の瞬間、ナイフが四方から飛来した。

 反応しきれない。

 ココアの神速の手捌きが、らいおんの防御を切り裂く。そこへ、ハルトの槍が稲妻のように突き抜けた。


【ハルト】「貫け!スパイラル・ドライブ!!」


 剣が砕け、盾が弾け飛ぶ。

 らいおんの身体が宙を舞い、雪原へ叩きつけられた。


【システム】《らいおん 撃破》


【らいおん】「ちくしょー…みんな、後は任せた」


 戦況が、さらにフローライト優勢へと傾く。


 別の戦場では、椿が剣士ゆずと激しく剣を交えていた。華奢な体から放たれる、愛刀・魂穿の鋭い斬撃。その一太刀一太刀が、椿の髪を掠める。


【ゆず】「ここだ…一文字!」

【椿】「見切っている!」


 剣が火花を散らし、両者が同時に跳ぶ。

 一瞬の沈黙、そしてゆずが膝をついた。


【システム】《ゆず 撃破》


 息を整える暇もなく、巨大な影が立ちはだかった。

 全身を重装鎧で覆い、大槍と大盾を携えた男。


【White】「さて、リベンジといかせてもらおうか」

【椿】「私の連勝記録は止まらない」


 盾が地を叩き、砂雪が舞う。

 再戦の火蓋が切って落とされた。


 一方その頃、Rainの前に立ちふさがったのは、二人の魔導士。


 炎のスカイ。

 風のGemini。


 かつて、Rainがたった一撃でまとめ撃破した二人。

 だが今、その目には怯えではなく、決意が宿っていた。


【スカイ】「もうあの時の俺たちじゃねぇ」

【Gemini】「練習してきた風と火の連携、見せてやる!」


 Rainは息を整え、静かに呟いた。


【Rain】「……そう。なら、見せてもらおうか。成長の証を」


 氷、炎、風。三つの属性が交錯し、戦場が爆ぜる。


 戦場の北端。

 氷と炎が入り乱れる混沌の中で、《焼肉キングダム》の残党たちは必死に抗っていた。

 だがその中心で暴れ回る巨影・オニッシュ。

 そして、その背後から援護射撃を繰り出す弓使い、むー。


 この二人の連携は、もはや暴力そのものだった。


【むー】「オニッシュさん、右から二人!後ろは射抜きます!」

【オニッシュ】「了解ッ!」


 矢が放たれるたび、空気が唸る。

 オニッシュが地を叩き割り、吹き飛ばされた仲間の頭上に、むーの矢が正確に突き刺さる。

 誰も近づけない。誰も止められない。


【ペンギン】「……チッ、こりゃマズいぞ」


 前線で立ち尽くすペンギンの目に、仲間のネームプレートが次々と灰色に変わっていくのが映る。


【システム】《みぃ子 撃破》

【システム】《料理長 撃破》

【システム】《REBORN 撃破》


【ペンギン】「ふざけんなよ、このまま終わるかってんだ!」


 血のような夕日が雪原を照らす。

 ペンギンは盾を捨て、槍を逆手に構えた。

 狙うは巨人ではない。

 その巨人を支える影…弓使いむー。


【ペンギン】「せめて、あのアーチャーだけでも……!」


 足元の氷を蹴り砕き、一直線に突進する。

 矢が飛ぶ。頬をかすめる。それでも止まらない。


【むー】「これは厄介な相手ですね…」


 叫びと同時に、ペンギンの槍が、一直線にむーへと迫る。


【システム】《むー 撃破》

【ペンギン】「……やった、のか!?」

【オニッシュ】「ダーク・インパクト」

【システム】《ペンギン 撃破》

【ペンギン】「は!? へ!!?」


 迫っていたオニッシュの容赦ない一撃は、ペンギンのHPを一瞬にしてゼロにした。

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