表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第七章 ランスロットの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/90

第三十七話 もう、戻れない

 双剣イビル・イン・ライト。

 片刃は闇を、片刃は光を宿す、相反する力の象徴。

 その刃を構える男、ペイン。


 彼の前に立つのは、かつての仲間。

 ジェイとマーリン。

 今は別のギルドに属していても、その絆はかつて《エターナル》で共に過ごした日々に結ばれていた。


【ジェイ】「どうしてだ、ペイン。あのとき何も言わずに、突然ギルドを解散して、よりによって敵だったダークキングに入るなんて」


 その声には、怒りと悲しみが入り混じっていた。

 マーリンが杖を握り締めながらも、どこか震えるような声で続ける。


【マーリン】「ももさんと何があったって、私達は気にしない、するわけないのに!」


 ペインの瞳がかすかに揺れる。

 だが次の瞬間、双剣が抜かれた。

 闇と光が交差し、空気がざらつく。


【ペイン】「笑わせるな。ももが暴露した途端、誰も俺の言葉を信じなかった。お前たちも軽蔑してたろ」


【ジェイ】「違う!確かに驚いたけど、そんなこと関係ねぇよ!」

【ペイン】「黙れ!!」


 轟音。イビル・イン・ライトが唸りを上げ、ジェイの槍と衝突する。閃光と衝撃が交差し、床が砕けた。


【マーリン】「ペイン! あなたは前にこう言った!ギルドは仲間の信頼で成り立つって!」

【ペイン】「信頼なんて壊れるのは一瞬だった!」


 ペインが地を蹴る。

 闇と光の残光を引きながら、左右の斬撃が連続して襲いかかる。ジェイは防御で受け流し、マーリンは距離を取りながら詠唱を開始。


【マーリン】「ディバイン・シェルター!」


 光の盾が展開し、攻撃を受け止める。

 しかし〈イビル〉がそれを裂き、〈ライト〉が閃く。

 その斬撃は、まるで自分の理想を斬り捨てるかのようだった。


【ジェイ】「お前、まだ信じてるんだろ? 本当は!」

【ペイン】「信じるものなんてない!」

【ジェイ】「あるさ!だから戦ってるんだろ!」


 その言葉に、ペインの手が一瞬止まる。

 双剣の切っ先が、ジェイの喉元で止まっていた。


【マーリン】「あなたがギルドを壊したのは裏切りなんかじゃない。傷つく仲間を、守りたかっただけでしょ。ももさんの暴露でギルドが壊れるくらいなら、自分の手で終わらせた方がマシだって、そう思ったんじゃない?」


 静寂。

 炎のようだったペインの瞳が、少しずつ揺らぐ。

 マーリンの言葉が、過去の映像を呼び起こす。

 ギルドチャットで飛び交う罵声。

 去っていく仲間たち。

 そして、自分の手で解散の告知を打った夜。


【ペイン】「あの日、何を守ったんだろうな。

 俺は、何を信じてたんだ」

【ジェイ】「もう一度、信じればいい。エターナルは無くなったけど、俺たちが残ってる!」


 ジェイが槍を下げる。

 戦意ではなく、再び仲間として語りかけるように。

 マーリンも杖を下ろし、静かに頷いた。


【マーリン】「あなたのせいで終わったわけじゃない。あなたがいたから、私たちはここまで来れたの。

 だから、戻ってきて……ペイン。」


 しかしペインは、自らの感情を押し殺す。

 もう、戻れない。

 そう思い込んでいる人間に、言葉は届かない。


【ペイン】「うるせぇ!!もうほっといてくれ!!」


 咆哮とともに双剣が舞う。

 闇と光が交差し、〈天魔双乱〉が発動する。

 猛烈な斬撃が、ジェイとマーリンを襲う。

 二人は防ぐ間もなく地面に倒れる。

 攻撃は容赦なく、しかし決して憎しみだけではなく、まるでペイン自身の迷いや怒りを切り裂くための刃のようだった。


【システム】《ジェイ 撃破》

【システム】《マーリン 撃破》


 戦いが終わると、ペインは双剣を胸の前で構えたまま立ち尽くす。振り向くこともなく、追うこともせず、ただそこにいる。

 汗と血で光る床を見つめながら、長い沈黙が訪れる。


【ペイン】「……もう誰も、俺に関わるな」


 それだけ告げると、ペインはその場に佇み、動かない。ジェイとマーリンが倒れている間も、彼の心は自らの決断の重みを噛み締めていた。

 裏切りでも救済でもなく、ただ自分自身の存在を貫くための選択。


 その姿は、もはや過去のギルドマスターではなく、

 誰にも縛られない独立した戦士・ペインそのものだった。


 一方、主の間扉前。


 ギルドチャットに《ジェイ 撃破》《マーリン 撃破》の通知が流れると、まろんは頬を吊り上げて高笑いした。


【まろん】「ははは!元エターナルの二人、もう終わりかよ!」

【琉韻love】「ちょっと、まろんさん、笑いすぎ……」


 まろんは楽しげに剣を回転させ、ジェイとマーリンの撃破をバカにするように言葉を重ねた。


【まろん】「いやー、でもペインの奴も時間かけすぎだよな!俺が本気出したら、もっと早いけどw」

【たっちゃんパパ】「この調子で、侵入者もまとめて蹴散らすか」


 敵も味方も笑いながらバカにするその態度に、扉前で対峙するガウェインの顔がみるみる紅くなる。


【ガウェイン】「ふざけるなあああ!!!俺たちはお前みたいなクズに、泣き寝入りするためにここに立ってるんじゃねぇ!!!」


 怒りに震える剣士の声が、扉前の戦場に轟く。


【まろん】「あ?俺に偉そうな事言っていいのは、俺より強い黒王様とカノンさんだけだぞ?雑魚がイキってんじゃねぇ!!」


 戦いはまだ始まったばかり。

 まろん達とガウェイン達の戦いは、確実に火花を散らすことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ