第三十六話 王国騎士団vs DARK KING
夜九時前、南銀大区画。
王国騎士団とダークキング、二つのギルドの総力戦が始まろうとしていた。
互いに他の拠点は捨て、この場所にすべてを注ぐ。まさに全力戦だ。
表向き、有利に見えるのは侵攻側の王国騎士団。戦力・ランクの平均値は圧倒的で、サーバー内でも唯一、ダークキングに対抗可能と呼ばれるだけの布陣だ。
だが、防衛側の主席には、サーバー最強のカノンが鎮座している。
カノンを討伐できれば勝利。
条件は単純だが、現実には極めて高難度の試練となる。
ダークキングの戦力も凄まじい。
ギルドマスターでサーバー3位の黒王。
サーバー5位のまろん。
さらに元エターナルギルドマスターでサーバー6位のペイン。
その他のメンバーも軒並み50位以内のランカーが揃い、数値上でも王国騎士団に匹敵する布陣だ。
静かな緊張が、南銀大区画の空気を満たしていた。
勝利も敗北も、この一戦にかかっている。
夜九時。戦いの火蓋が、南銀大区画で切って落とされた。
ダークキングがサーバー立ち上げから守り、育て続けたこの拠点は、防御性能が極めて高い。
入り組んだ地形を熟知しているダークキング陣営には、明らかに地の利があった。
だが、侵攻側の王国騎士団も負けてはいない。
個々の実力はもちろんだが、それ以上に連携が冴え渡る。
互いに攻撃を補い合い、迎撃を受けながら着実に進軍していく。
その瞬間、マーリンが鋭く反応した。
【マーリン】「そこ!いる!」
素早い判断で奇襲を阻止する。
続けてジェイが、敵の斬撃を槍で受け流す。
視界の先にいたのはペイン。
元エターナル・ギルドマスターと、元エターナルのジェイとマーリンが向き合う。
【ジェイ】「ここは俺たちが引き受ける」
短く言い、二人は動きを固める。
他のメンバーはそのまま前線を進め、戦局を崩さない。
主の間へ続く扉の前。
そこに立ちはだかるのは、まろん。
その両脇には、大槍を構えたたっちゃんパパ、そして魔法陣を展開する琉韻loveの姿。
どちらもサーバー上位ランカーで、王国騎士団の進軍を止めるには十分すぎる戦力だった。
扉の前の空気は、重く、張りつめている。
【まろん】「ここは通さない。黒王様とカノンちゃんのところには、誰も行かせない」
【ガウェイン】「悪いが、通らせてもらう」
前に出たのは、王国騎士団の中でも屈指の剣士・ガウェイン。
その背後には盾役のレオネル、そして補助魔法担当のトリスタンが続く。
【たっちゃんパパ】「こっちも本気でいくぜ!」
【琉韻love】「まろんさん、援護する!」
次の瞬間、戦闘が始まった。
ガウェインとまろんの剣がぶつかり、火花が散る。
互いに上位ランカー同士、攻撃も防御も一瞬の判断が命取りになる。
【ガウェイン】「やるな……!」
【まろん】「そっちこそ!」
両者の動きは凄まじく速く、地形に映る影が幾重にも重なる。
一方、たっちゃんパパの槍がレオネルの盾を貫かんと突き出される。
【レオネル】「ぐっ!」
衝撃で体勢を崩しかけたレオネルを、トリスタンの支援魔法が即座に補う。
【トリスタン】「ガーディアン・フィールド展開! 防御上昇!」
【レオネル】「助かった!」
だが琉韻loveも負けてはいない。
詠唱を終えた彼女の魔法陣から、紅蓮の魔弾が放たれる。
【琉韻love】「ルビーフレア!」
炎が地を舐め、王国騎士団の足元を包み込む。
【トリスタン】「くっ……これ、威力高い!」
【ガウェイン】「トリスタン、防御は任せろ! 前衛突破する!」
ガウェインが剣を構え直すと同時に、まろんが一歩下がり、仲間の動きに合わせて反撃体勢を取る。
まさに拮抗、一歩も譲らない激戦。
背後では、主の間の扉が重々しく光を帯びていた。
その向こうに、主・カノンが待つ。
激戦の中、ランスロットは一瞬の隙を見て、仲間たちに指示を飛ばした。
【ランスロット】「ガウェイン、ここは任せた。主の間へ行く」
【ガウェイン】「了解。こっちは俺たちで押さえる!」
ガウェインたちが扉前の守りを引き受けるのを確認し、ランスロットはガラハッドを含む数名の精鋭を率いて、主の間へと突入する。
重厚な扉を押し開けた瞬間、冷たい空気が肌を刺した。最奥の玉座の前に、四つの影が立ちはだかる。
カノン。
黒王。
シン。
鬼朱雀。
そのいずれもが、サーバー上位を独占する猛者たち。ただの一歩すら、命を賭けるに等しい距離だった。
【黒王】「ようやく来たか、ランスロット」
黒王の声が低く響く。
その瞬間、黒王が地を蹴り、凄まじい速度で間合いを詰めた。
黒王の剣とランスロットの槍がぶつかる。
ランスロットの体が後方に弾かれるが、すぐに受け身を取り、黒王の追撃を受け止める。
【ランスロット】「速いな……だが、読める!」
黒王の連撃を見切り、最後の一撃を受け流すと、反撃の一閃。鋼と鋼がぶつかる音が、主の間に鳴り響いた。
一方で、ガラハッドはすでに前へと駆け出していた。狙うはサーバー最強にして、ダークキングの最高戦力・カノン。
【ガラハッド】「今ここで仕留める!」
剣が閃く。しかし、カノンは一歩も引かない。
【カノン】「その程度でこの私に挑むのか?」
軽やかに受け流し、反撃の剣が走る。
その軌跡は正確無比、まるで戦場を支配するかのような鋭さ。
【ガラハッド】「くっ……化け物め!」
両者の武器が幾度もぶつかり、閃光が散る。
そして後方では、王国騎士団の精鋭部隊がシンと鬼朱雀と交戦していた。
シンはダブルナイフを操り、俊敏な動きで敵を翻弄する。
鬼朱雀は炎属性の魔導士。詠唱と同時に、爆ぜるような紅炎が広間を包んだ。
【鬼朱雀】「燃え尽きろ、イラプト・インフェルノ!」
結界が張られ、炎と光がせめぎ合う。
爆風が吹き抜け、床石が砕け散る。
戦場の中心で、ランスロットと黒王、
その背後で、ガラハッドとカノン、
そして左右で精鋭たちとシン&鬼朱雀。
王国騎士団とダークキング、
南銀大区画を懸けた32サーバー頂上決戦が、いま幕を開けた。




