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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第七章 ランスロットの物語

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第三十五話 銀大区画への布告

 夜八時を過ぎ、王国騎士団のレイド参加メンバーはすでに集結していた。

 ログイン直後の画面には、ギルドメンバーたちのアイコンがずらりと並ぶ。

 目標は星5。現時点で選べる最強クラスのボスモンスター、深海の海龍・レヴィアトルだ。


 ランスロットは、サーバー総合力ランキング7位の実力者。さらに王国騎士団のメンバーのほとんどが50位以内のランカーで占められており、ジェイとMiraの元エターナルの主力2人もランカーだ。

 平均戦力値は非常に高く、サーバー内でも唯一、ダークキングに対抗しうるギルドと言われていた。


【ランスロット】「皆、準備はいいか。目標はレヴィアトル討伐だ」

【ガウェイン】「了解、団長。構成も完璧、あとは動くだけっすね」

【レオネル】「支援魔法は僕が抑えます。後衛の位置取りも指示通りに」

【ガラハッド】「オッケー、前衛は任せろ。ジェイ、Mira、動きは合わせるぞ」


 ランスロットはチャットで最終確認をしながら、個別に指示を飛ばす。

 攻撃順、回復タイミング、範囲魔法の配置。

 指示は的確で、メンバーたちは迷うことなく準備を整えていく。


 やがて、ギルド全体で討伐開始の合図が出た。


 巨大な影が画面に浮かび上がる。

 深海の海龍、レヴィアトル。


 波のような攻撃モーション、圧倒的なHPバー。

 しかし、王国騎士団の攻撃は一糸乱れぬ連携を見せる。


【ランスロット】「前衛は左右に散開、範囲攻撃は避けつつ、私の合図で一斉攻撃」


 指示通り、前衛は素早く動き、後衛は回復と補助魔法で支援。

 ジェイとMiraも、元エターナルの経験を活かし、隙のない索敵と範囲攻撃の調整を行う。


 そして、数分の攻防の後。


【ランスロット】「今だ、一斉撃! 全員、集中!」


 画面いっぱいに魔法と剣光が閃き、レヴィアトルのHPバーが一気に減少する。


 討伐完了の通知が全員の画面に表示された。

 勝利の瞬間、ギルドチャットは歓喜に沸く。


【ガウェイン】「やった! 星5討伐、成功だ!」

【レオネル】「完璧な動きでしたね、ランスロットさん!」

【ジェイ】「さすが大手ギルマス、指示ひとつでここまで変わるとは…誰かさんとは大違いだ」

【Mira】「これで銀大区画への準備もバッチリね」


 ランスロットは、少しだけ微笑み、画面の向こうで仲間たちの声を聞いていた。

 彼の指示で、最強クラスのボスを討伐する

 王国騎士団の力を、また一段と証明した瞬間だった。


 討伐完了の余韻も冷めやらぬまま、各ギルドの星ランク結果が表示される。


 星1:多数のギルド

 星2:ウィンドクローバー

 星3:キリキリバッタ・焼肉キングダム

 星4:サンドウォール

 星5:ダークキング・王国騎士団


 ブルーアーチは星3に挑むも敗北。

 フローライトも星4に挑むが、惜しくも討伐ならず。

 その中で、ダークキングと王国騎士団が、最高難度の星5討伐に成功したことがひときわ目立つ。


【ジェイ】「そういえば、円卓騎士の名前多いっすね、うち」

【ランスロット】「ああ、俺が最初に“ランスロット”を名乗った影響だな。みんなそれに倣って名前を変えた」

【Mira】「じゃ私はマーリンにするわ」

【ジェイ】「俺もどうしようか迷うけど…まあ、いっか」

【ランスロット】「無理に真似する必要はない。個性は大事だ」

【ジェイ】「わかりました、そのままでいきます」


 ギルドチャットは少し笑いに包まれ、同時に緊張感の中で生まれる連帯感が感じられた。

 ジェイもMiraも、ランスロットの冷静で的確な指示だけでなく、仲間を尊重する姿勢に自然と惹かれていく。


【マーリン】「ランスロットさんの下で動くの、楽しいね」

【ジェイ】「俺もだな…って変えるの早w」


 こうして、王国騎士団の夜は、勝利と称賛、そして仲間たちの信頼で満たされていった。


 翌日夜。

 ランスロットは再び区画マップを前に、じっと盤面を見つめていた。


 …サンドウォールにいた、移動中の三人はどこへ向かったのか。

 そして、キリキリバッタには椿・Rain・そるの文字が残されている。


(次の週あたり、こちらから誘ってみるか…)


 静かな部屋の中で、ランスロットの頭の中はすでに回転していた。銀大区画を抑えた先、金大区画を取るための構想が、鮮明に組み上がっている。


 彼の指示ひとつで、ギルドの動きは大きく変わる。

 そして、次なる戦いの火種は、もうすぐ目の前にあった。


 そして土曜日、朝七時半。

 サーバーの大区画布告合戦が始まる中、王国騎士団は落ち着いた様子を見せていた。


 《斬々抜断》が南東・銅大区画に戦線布告。

 《サンドウォール》が南西・銅大区画に戦線布告。

 《フローライト》が北西・銅大区画に戦線布告。

 《焼肉キングダム》が北東・銅大区画に戦線布告。

 《ブルーアーチ》が東・銅大区画に戦線布告。

 《ウィンドクローバー》が西・銅大区画に戦線布告。


 銀大区画に布告できる権利を持つギルドは、王国騎士団のみ。

 他ギルドの動きをじっくり観察した上で、彼らはゆっくりと南銀大区画に布告した。


 今回、王国騎士団は銅区画は敢えて捨てる。

 もちろん、キリキリバッタとサンドウォールはそれを見越して布告してきたのだ。

 フローライトが北西へ向かうのも、ダークキングが南銀大区画に戦力を集中されることを予測した結果である。


 ランスロットの読みと判断は、静かに、しかし確実に盤面を支配していた。


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