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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第一章 スカイの物語

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第二話 新規ボーナス!UR装備ガチャ10連!?

 新規ボーナスでもらったUR装備ガチャ10連を回すため、空也は部屋に向かった。

 宿題も終わらせ、洗い物も片付け、風呂も済ませた。あとは寝るだけ。そんな状態だ。


 リビングの廊下から、父親が顔を出す。


「ん? 寝るの早くね?」


 空也は肩をすくめて答えた。


「部屋で、大地から教えてもらったゲームやるんだ」


 父親は小さく笑い、含みを持たせて訊ねる。


「……エロ?」


「ちげーよ!」


 空也は即座に否定した。


 自室に戻ると、机の上のノートパソコンを起動する。


「スマホでもできるけど……どうせなら画面が大きいほうがいいよな」


 《サンドボックスウォーズ》はPCとスマホの両方に対応しており、同じアカウントでデータを共有できる。大地は主にスマホ派らしいが、空也は家では断然PC派だった。


 アカウント登録を済ませ、スマホで作ったキャラデータを同期。画面の中に、自分の分身「スカイ」が現れる。


「おお……思ったよりリアルだな」


 軽く興奮しながら、空也はマウスを握りしめた。


 そして、ゲームのメニューを開き、まずは新規プレイヤー特典のUR装備ガチャを回そうとした。だが…


 《ガチャ機能はストーリー3クリア後に解放されます》


 という無情なメッセージが画面に浮かび上がる。


「うわ、そういうやつか……」


 仕方なく、スカイの初期装備を確認する。


 初期装備

 武器:木刀

 盾:なし

 頭:なし

 胴:革の服

 腕:なし

 足:革のズボン

 靴:スニーカー

 装飾:なし


「弱っ……」


 思わず口に出すが、今はチュートリアルだ。まずはストーリーで操作を覚えるしかない。


 ストーリー1:建設素材集め

 ストーリー2:小屋の建設

 ストーリー3:モンスター討伐


 木刀を握り、スカイは最初のフィールドへと駆け出した。


 木々が生い茂る森。陽光が葉の隙間から差し込み、鳥の鳴き声が響く。

 スマホでは味わえないほどの精細なグラフィックに、思わず見入ってしまう。


 画面右下では、ワールドチャットが絶え間なく流れていた。


「ギルド募集! 社会人中心でまったり勢!」

「おい誰だよ、拠点壊したの!」

「今夜のギルドバトル実況やるぞ!」

「ダークキング戦は見ない」

「初見さんいらっしゃーい!」


 ログは一秒ごとに更新され、まるで現実の街の喧騒のように賑やかだ。


「……盛り上がってんなぁ」


 スカイはチャットウィンドウを一度開いたものの、すぐ閉じた。

 まだ右も左もわからない。まずは一人で慣れるのが先だ。


 指示どおり、木を伐採して素材を集める。

 木を叩くたびに、軽快なエフェクト音が鳴る。


 《木材を入手しました ×3》

 《木材を入手しました ×7》


「お、けっこうサクサク集まるな」


 素材を集め終えると、画面にクラフトメニューが表示される。

 小屋の設計図を選び、木材を配置していく。


 十秒後、完成。


「木の枝十個で小屋完成とか、さすがゲームだな。現実なら雨降ったら終わりやん」


 スカイは自分の拠点に入って苦笑した。

 屋根こそあるが、どう見てもただの板小屋だ。


 次のストーリー目標が表示される。


 ストーリー3:モンスター討伐


「よし、いっちょやってみるか」


 木刀を握り、森の奥へ。

 木陰の向こうから、緑色の小さな影が現れる。


 ゴブリン。


「出た出た。どのゲームでも最初の雑魚敵だよな。楽勝っしょ!」


 勢いよく突っ込み、木刀を振り下ろす。しかし…


 ドンッ!


 ゴブリンの棍棒が直撃し、画面の縁が赤く染まる。


 HP 4/10


「はー!? 俺、二確!?」


 焦って距離を取ろうとするが、次の一撃がもう迫っていた。その瞬間。


 ズガァン!


 視界の端から現れた巨大なハンマーが、ゴブリンを粉砕した。衝撃波で木の葉が舞い上がり、残光が消える。


「あの……大丈夫?」


 振り向くと、漆黒の鎧をまとった男のキャラクターが立っていた。手には禍々しい紋様が刻まれた戦鎚。圧倒的な存在感だ。


「あ、ありがとうございます……! 俺はスカイです。今日、始めました」


「僕はオニッシュ。…新規ボーナスのガチャ、回した方がいい。ゴブリンに苦戦することは、なくなるよ。それじゃ」


 そう言い残し、オニッシュは振り返ることなく森の奥へと消えた。

 名前の横に表示されたランクは、金色の“S”。

 さっき大地と見ていたランキングに載っていた、あのプレイヤーだった。


 スカイは呆然と、その背中を見送る。


「マジかよ。いきなり上位プレイヤーに会うとは…」


 画面には《ストーリー3クリア》の文字。

 同時に、封印されていたガチャボタンが光を放った。


 ログインボーナスの案内をスキップし、スカイは待ちに待った“UR確定ガチャ10連”のページを開いた。

 金色の魔法陣が回転し、画面いっぱいに光が走る。


「おおっ……!?」


 眩しい虹色のエフェクトとともに、次々とアイテムが表示されていく。

 見慣れない名前と派手なデザインばかりで、良いのか悪いのか全く分からない。


「……わかんねぇ」


 スカイはPCの画面をスマホで撮って、大地に送信した。


 数分後、既読が付き、返事が届く。


『…サーバー替えれば1からやれるよ』


「え、ハズレってこと??」


 苦笑しながら、スカイは椅子の背もたれに体を預けた。やり直す気にはなれない。


 オニッシュ。


 さっき助けてくれた、あの漆黒の戦士の名が、頭に浮かぶ。名前だけでなく、落ち着いた感じも、短い一言の重みも印象に残っていた。


「あんなかっこいい人と、もう一回会ってみたいな……」


 きっと歳上だろう。

 あの丁寧な口調からして、頭の切れるタイプに違いない。落ち着いたインテリ系…いや、現実でもスーツとか似合いそうだ。


 妄想が広がるほどに、やめる理由がなくなっていった。


「……このサーバーで行くか」


 気合を入れ直し、装備画面を開く。


【スカイの現在装備】

 武器:黒曜石の杖(魔力アップ)

 盾:なし

 頭:青天の鉢巻(速さアップ)

 胴:みかわしガウン(低防御・回避アップ)

 腕:ドラゴングローブ(攻撃アップ・回避ダウン)

 足:岩龍の足鎧+1(高防御・回避ダウン)

 靴:スーパーハイヒール(おしゃれアップ・速さダウン)

 装飾:我慢の宝玉(被ダメージに応じ攻撃力上昇)


「……なんだこのバランス。てか()()()()ってなんだよ」


 軽装なのか重装なのか分からない、ちぐはぐなステータスに頭を抱える。


 さらに引いたアイテムの中には、

 “火炎の杖”と“天雷の魔導書”。どちらも魔法使い向けの装備が入っていた。

 岩龍の足鎧は被ったが、どうやら被った武器は合一化され強くなるらしい。+の数は、合一化数というわけだ。


「俺、近接派なんだけどなぁ……」


 ため息をつきつつ、再びフィールドへと向かう。

 装備の性能はちぐはぐでも、心は不思議と前向きだった。


 あの人に、もう一度会える気がする。


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