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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第五章 そるの物語

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28/90

第二十七話 初の銅大区画、奪取!

 《サンドボックスウォーズ》ーーその名の通り、箱庭要素の強いオンラインゲームだ。

 戦闘だけが全てではなく、素材を集め、建築や装飾を楽しみ、仲間と街を発展させる。戦力や攻略を追い求めなければ、穏やかに“もうひとつの世界”を過ごせる作りになっている。


 32サーバーには、大小さまざまなギルドが存在する。その多くは争いを避け、まったりと日々の街づくりや交流を楽しむプレイヤーたちによって構成されている。


 それが女性ユーザーや、ライト層からの人気の理由でもある。


 だが一方で、戦乱に身を投じ、領地を奪い合う“戦渦ギルド”もまた、確かに存在していた。


 現時点で戦渦に属しているギルドは以下の通り。


 《DARK KING》

 《王国騎士団》

 《斬々抜断(キリキリバッタ)

 《エターナル》

 《サンドウォール》

 《フローライト》

 《ブルーアーチ》


 そして、近々その戦線に加わると噂されているのが、《ウィンドクローバー》と《焼肉キングダム》。


 この日は土曜日。

 朝七時半、布告開始の瞬間はまるで“早押し対決”のような熱気に包まれる。

 そるはもちろん、画面の向こうでは部活前のスカイやGemini、土曜日でも出勤前のWhite、休みのゆずなどが待機している。

 主婦であるココアにとってこの時間は忙しく、布告には参加できない。


 そして、この日の対戦カードが決まった。


 《サンドウォール》が北西・銅大区画に戦線布告。

 《フローライト》が北東・銅大区画に戦線布告。

 《ブルーアーチ》が東・銅大区画に戦線布告。


 申し合わせたかのように、3ギルドは先週と同じ場所へ。


 そして…


 《DARK KING》が西・銅大区画に戦線布告。

 《王国騎士団》が南西・銅大区画に戦線布告。


 相互布告…これはダークキングと、次に強い王国騎士団が正面衝突することを意味する。


 そして…


 《焼肉キングダム》が南東・銅大区画に戦線布告。


 エターナルとキリキリバッタは早押しに負け、新興ギルドの焼肉キングダムが布告に成功した。


 Whiteは画面を凝視しながら、今回の作戦を頭の中で組み立てていた。


【White】「今回はダークキングでも受け切れない。王国騎士団が銀区画に攻めてこないように、そちらの対応で消耗するはずだ」

【椿】「ふん、この私に恐れをなしたか」


 一方、ゆずもダークキングのメンバーリストに目を通しながら、淡々と報告する。


【ゆず】「人数は変わってないけど、ランカーが抜けて、一般ユーザーが入ったみたいだね」

【スカイ】「捨てるとしたら…銅区画を一つ取られても脅威にならないところ…?」

【そる】「どうだろうな、ウチとサンドウォールを捨てれば、王国騎士団に注力しつつ、他も守れそうだぜ」


 画面の向こう、各ギルドの動きは静かに、しかし確実に次の戦局へと向かっていた。


 夜九時、北東銅大区画。

 フローライトはフルメンバーで整列していた。

 しかし、ダークキングの防衛側は1人だけ。明らかに捨て駒だ。


【White】「どうやらダークキングは、王国騎士団に本隊を向け、この区画は捨てたようだな」


 Geminiとタイガーは、既に前線に飛び出している。


【Gemini】「私たちでいける!」

【タイガー】「任せろ!倒せる相手だ!」


 その瞬間、ココアが声を張り上げた。


【ココア】「待った!」


 フローライトの前にいた捨て駒役のハルトが振り返る。


【ココア】「ねぇ、たのしい?」

【ハルト】「……正直、ここ強いからって入っただけで全然。こんな捨て駒役、つまらないです」

【ココア】「なら、ウチに来ませんか?」


 ハルトは驚き、そして一瞬迷った表情を浮かべる。

 画面上でリタイアのボタンを押すと、拠点は無防備になり、ダークキングからフローライトへと所属を変えた。


【ハルト】「分かりました。よろしくお願いします!」

【ココア】「うん、歓迎するよ!」


 そるは画面越しに、感心していた。


(さすがだぜココア姐さん…倒すどころか、仲間にしやがった!)


 ともあれ、フローライトはこうして初の銅大区画を取得した。

 北西銅大区画はサンドウォール、東銅大区画はブルーアーチが制圧。

 焼肉キングダムは残念ながら、拠点制圧とはいかなかったようだ。


 ダークキングはこの時点で、今回三つの拠点を失った。裏を返せば、ダークキングはそれだけ王国騎士団を警戒していると言うことだ。


 ダークキングvs王国騎士団。

 西・南西ではまさに大決戦が火花を散らしていた。


 王国騎士団もダークキングに劣らず、ランキング50位以内のユーザーが半数以上を占めていた。

 しかし、西区画を制圧したのはダークキング。ランキング3位の黒王、5位のまろんを筆頭に、圧倒的な戦力で押さえ込む。

 さらに南西では、カノンの桁外れの力により、侵攻してきた王国騎士団の部隊はことごとく壊滅した。


 王国騎士団ギルドマスター、ランスロットは呟く。


【ランスロット】「ダークキングの最高戦力・カノン…あの強さは、もはやゲームバランスを壊している」


 結果として、王国騎士団は大区画を失い、今回の戦況はダークキング側の圧勝に終わった。

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