第二十七話 初の銅大区画、奪取!
サンドボックスウォーズーーその名の通り、箱庭要素の強いオンラインゲームだ。
戦闘だけが全てではなく、素材を集め、建築や装飾を楽しみ、仲間と街を発展させる。戦力や攻略を追い求めなければ、穏やかに“もうひとつの世界”を過ごせる作りになっている。
32サーバーには、大小さまざまなギルドが存在する。その多くは争いを避け、まったりと日々の街づくりや交流を楽しむプレイヤーたちによって構成されている。
それが女性ユーザーや、ライト層からの人気の理由でもある。
だが一方で、戦乱に身を投じ、領地を奪い合う“戦渦ギルド”もまた、確かに存在していた。
現時点で戦渦に属しているギルドは以下の通り。
《DARK KING》
《王国騎士団》
《斬々抜断》
《エターナル》
《サンドウォール》
《フローライト》
《ブルーアーチ》
そして、近々その戦線に加わると噂されているのが、《ウィンドクローバー》と《焼肉キングダム》。
この日は土曜日。
朝七時半、布告開始の瞬間はまるで“早押し対決”のような熱気に包まれる。
そるはもちろん、画面の向こうでは部活前のスカイやGemini、土曜日でも出勤前のWhite、休みのゆずなどが待機している。
主婦であるココアにとってこの時間は忙しく、布告には参加できない。
そして、この日の対戦カードが決まった。
《サンドウォール》が北西・銅大区画に戦線布告。
《フローライト》が北東・銅大区画に戦線布告。
《ブルーアーチ》が東・銅大区画に戦線布告。
申し合わせたかのように、3ギルドは先週と同じ場所へ。
そして…
《DARK KING》が西・銅大区画に戦線布告。
《王国騎士団》が南西・銅大区画に戦線布告。
相互布告…これはダークキングと、次に強い王国騎士団が正面衝突することを意味する。
そして…
《焼肉キングダム》が南東・銅大区画に戦線布告。
エターナルと斬々抜断は早押しに負け、新興ギルドの焼肉キングダムが布告に成功した。
Whiteは画面を凝視しながら、今回の作戦を頭の中で組み立てていた。
【White】「今回はDARK KINGでも受け切れない。王国騎士団が銀区画に攻めてこないように、そちらの対応で消耗するはずだ」
【椿】「ふん、この私に恐れをなしたか」
一方、ゆずもDARK KINGのメンバーリストに目を通しながら、淡々と報告する。
【ゆず】「人数は変わってないけど、ランカーが抜けて、一般ユーザーが入ったみたいだね」
【スカイ】「捨てるとしたら…銅区画を一つ取られても脅威にならないところ…?」
【そる】「どうだろうな、ウチとサンドウォールを捨てれば、王国騎士団に注力しつつ、他も守れそうだぜ」
画面の向こう、各ギルドの動きは静かに、しかし確実に次の戦局へと向かっていた。
夜九時、北東銅大区画。
フローライトはフルメンバーで整列していた。
しかし、DARK KINGの防衛側は1人だけ。明らかに捨て駒だ。
【White】「どうやらDARK KINGは、王国騎士団に本隊を向け、この区画は捨てたようだな」
Geminiとタイガーは、既に前線に飛び出している。
【Gemini】「私たちでいける!」
【タイガー】「任せろ!倒せる相手だ!」
その瞬間、ココアが声を張り上げた。
【ココア】「待った!」
フローライトの前にいた捨て駒役のハルトが振り返る。
【ココア】「ねぇ、たのしい?」
【ハルト】「……正直、ここ強いからって入っただけで全然。こんな捨て駒役、つまらないです」
【ココア】「なら、ウチに来ませんか?」
ハルトは驚き、そして一瞬迷った表情を浮かべる。
画面上でリタイアのボタンを押すと、拠点は無防備になり、DARK KINGからフローライトへと所属を変えた。
【ハルト】「分かりました。よろしくお願いします!」
【ココア】「うん、歓迎するよ!」
そるは画面越しに、感心していた。
(さすがだぜココア姐さん…倒すどころか、仲間にしやがった!)
ともあれ、フローライトはこうして初の銅大区画を取得した。
北西銅大区画はサンドウォール、東銅大区画はブルーアーチが制圧。
焼肉キングダムは残念ながら、拠点制圧とはいかなかったようだ。
DARK KINGはこの時点で、今回三つの拠点を失った。裏を返せば、DARK KINGはそれだけ王国騎士団を警戒していると言うことだ。
DARK KING vs王国騎士団。
西・南西ではまさに大決戦が火花を散らしていた。
王国騎士団もDARK KINGに劣らず、ランキング50位以内のユーザーが半数以上を占めていた。
しかし、西区画を制圧したのはDARK KING。ランキング3位の黒王、5位のまろんを筆頭に、圧倒的な戦力で押さえ込む。
さらに南西では、カノンの桁外れの力により、侵攻してきた王国騎士団の部隊はことごとく壊滅した。
王国騎士団ギルドマスター、ランスロットは呟く。
【ランスロット】「DARK KINGの最高戦力・カノン…あの強さは、もはやゲームバランスを壊している」
結果として、王国騎士団は大区画を失い、今回の戦況はダークキング側の圧勝に終わった。




