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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第一章 スカイの物語

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第一話 物語の始まり

 放課後の教室。

 机の上でスマホをいじっていた大地が、顔を上げて言った。


「なぁ空也、“サンドボックスウォーズ”って知ってる?」


「ん? あー、あの最近CMやってるやつ? なんか自由に建てたり壊したりするやつだろ?」


「そうそう! めっちゃ流行ってんだよ今! 俺もやってるし、お前もやろうぜ!」


 高校一年の春。

 特に部活も決めず、家ではなんとなく動画ばかり見ていた空也にとって、それはちょっとだけ心が動く誘いだった。


「PCでもスマホでもできるし、データも共通。しかも、今なら新規ボーナスでUR装備ガチャ10連引ける!」


「……そういう言い方なんかずるいな。まぁ、やってみるか」


 空也は笑いながらアプリをダウンロードした。

 起動画面には、金属光沢のロゴと、炎に包まれた戦場が映る。


 タイトル【サンドボックスウォーズ】


 サービス開始からまだ二か月。

 だがすでにSNSでは話題になり、学生から社会人まで幅広くユーザーが増えているらしい。


「じゃあサーバー29で! うちのギルド、まだ枠空いてるからさ」


「……あれ? なんかエラー出た。サーバー満員だって」


「マジかよ! 最近人増えすぎてるからな……。じゃあ他のサーバーで始めるしかないな」


 結局、空也は“サーバー32”にキャラを作成することになった。

 大地とは別の世界。同じゲームなのに、交わることのないサーバー。


「ま、いいや。俺は“スカイ”で行くわ。俺の名前の空也の空で」


「ネーミングいいやんw」


 そう言いながらも、大地は笑った。

 空也はキャラクターメイクを済ませ、男のアバターを作成。

 画面の「ゲームスタート」をタップする前に、大地が興味津々で覗き込む。


「おっ、ちょっとランキング見せてみ?」


 空也のサーバー情報を開くと、開始2日目にして上位プレイヤーがすでに固定されていた。


 サーバー総合力ランキング

 1位:おじサムライ

 2位:カノン

 3位:黒王

 4位:オニッシュ

 5位:まろん


「おいおい、もうこんな差ついてんのかよ。しかも2位と3位と5位、同じギルドじゃん。ダークキングってギルド。他のメンバーも強いな…一強じゃね?」


 大地は苦笑いしながら言った。


「ハズレサーバーやんw」


「別にいいよ。どうせ課金できないし、楽しめればそれで」


 空也は肩をすくめて笑う。

 彼にとって、ゲームは勝ち負けよりも未知の世界を楽しむものだった。


「よっしゃ、じゃあいってみるか」


 タップと同時に、画面が光に包まれる。

 それは、空也が“もうひとつの世界”に足を踏み入れた瞬間だった。


 画面が光に包まれ、しばらくのロードのあと、視界が開けた。


 青い空

 風に揺れる草原

 遠くにそびえる石造りの塔。


 まるで本当にその場に立っているようなリアルさに、空也は思わず息をのむ。


「……これ、スマホでできるレベルじゃねぇな」


 チュートリアルのガイド妖精が現れ、可愛らしい声で説明を始めた。


『ようこそ、《サンドボックスウォーズ》の世界へ! あなたは今、自分専用の“安全地帯”にいます!』


 空也の足元に広がる円形の土地。

 ここが自分の拠点、つまりホームらしい。


『安全地帯の中では、あなたと許可した仲間以外は入ることができません。建物の建築や破壊も、あなた専用です!』


 ガイドの言葉に合わせて、空也は指を動かす。

 ブロック状の素材を置くと、あっという間に木の家が形を成していく。

 屋根を付けたり、窓を開けたり。自由自在だ。


「なるほど、クラフト要素ってこういうことか」


 しかし、そこから先の説明で、空也の目が少しだけ輝いた。


『安全地帯の外には、広大なフィールドがあります。森や洞窟、廃墟など、さまざまな場所で素材を集め、自分だけの箱庭を作りましょう!』


 まさに「創造と冒険の融合」だ。

 だが、さらに画面の右上に新しい項目が点滅する。


『……ただし、この世界の真の醍醐味は“ギルドバトル”です!』


 ガイド妖精の声が一段階テンションを上げた。


『サーバー全体は120の区画に分かれており、そのうち10か所の“大区画”は特別です。安全地帯の100倍の広さを誇り、街を築くことも可能!』


「街……作れるのかよ、すげぇな」


『ギルドでその区画を統治すると、内部での建築・破壊がギルドメンバー専用になります。まさに“領地”です!』


 空也は唖然とした。

 ただのサンドボックスじゃない“領土戦ゲーム”でもあるらしい。


『区画を手に入れる方法は二つ。一つは、誰もいない区画にギルドの旗を立てること。もう一つは、毎週土曜、午後九時から始まる“ギルドバトル”で他のギルドから奪うこと!』


「なるほど、戦争ね」


 その時、大地が首を挟む。


「サーバーによっちゃあ話し合って、バトル無しで街づくりに注力してるとこもあるみたいだぜ」


『ギルドバトルでは、侵攻側が防衛ギルドのメンバーを全滅させれば勝利! 戦略とチームワークがすべてを決めます!』


 ガイド妖精がウインクし、画面が暗転した。

 次に映ったのは、壮大な草原と中央に立つ巨大な石の塔。その塔の頂に、ひときわ目立つ“黒い旗”が翻っている。


 表示された文字は《DARK KING》。


「……ダークキング?」


「あの最強ギルドじゃねーか。…ひでえな、大区画のうち九箇所がダークキングの領土だぞ」


 その時、下校を告げるチャイムがなった。


「もうこんな時間か…空也、わかんねーことあったら連絡くれよ」


「わかった、寝る前にまたやってみるわ」


 こうして空也のサンドボックスウォーズでの物語が始まった。

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