第十四話 波乱の32サーバー
全体チャットは依然としてざわついていた。黒王の怒号に応えるように、エターナルのギルドマスターが口を開く。
【ペイン】「何言ってんの? 重課金者が集まって一強やってんだから、俺たちが徒党組んでもいいじゃん。ルールの範疇だし!」
瞬間、全体チャットはさらに騒然とする。
【マルメン】「ダークキングさんよ、独占せずにみんなで楽しもうぜ? あんたら以外いなくなっちゃうよ?」
【黒王】「ふざけるな! 俺たちが頂点だ! 入ってくる奴らは蹴散らす!」
【ペイン】「蹴散らす? こっちは普通にルール内でやってるだけだろ。なんで文句言われなきゃならないんだよ」
【マルメン】「そうだよ、楽しむのは皆だろ? 独占なんてつまらねぇぜ」
【黒王】「黙れ! このサーバーは俺たちのものだ! 誰も俺の前に出るな!」
【ペイン】「はぁ? 独占とか何様のつもりだよ。お前らが強いのは分かったからって、ルール無視すんなよ」
【マルメン】「そうそう、俺たちもやりたいんだよ。ダークキング、独り占めやめろって!」
一方、王国騎士団のギルマス・ランスロットは沈黙を貫いていた。
彼の冷静な態度は、口論の熱気の中で逆に存在感を放つ。誰もがランスロットの一言を待っているが、彼はコメントを控え、事態の行方を見守っていた。
チャットの文字が飛び交うたびに、サーバー内は怒号と罵声であふれる。口論は収まる気配を見せず、むしろ熱を帯び始めていた。
【黒王】「ふん、口で言うだけなら誰でもできる! じゃあ、俺とお前ら、来週サシで勝負だ!」
【ペイン】「いいぜ。ルールの範囲で全力でぶつかってやる」
【マルメン】「お、面白くなってきたな!じゃあ俺らは手薄になったとこ狙うわ」
【黒王】「ふざけんな!!」
こうして、言葉の応酬は自然と小競り合いの予感を帯びる。ランスロットは静かにその様子を見据え、32サーバーの夜は新たな波乱の幕開けを告げていた。
翌日。
ココアたちはレイドに向けて作戦会議を開いていた。
メンバーは8人に増え、スカイやタイガーは「これなら星2も行けるんじゃないか」と意気込む。
しかし、Whiteとココアは冷静に首を振る。
【ココア】「いや、まだ無理ね。星2は挑戦するにはリスクが高すぎる」
【White】「8人になったとはいえ、連携や火力の安定を考えれば、今回は星1で確実に攻略した方がいい」
結局、フローライトは星1のレイドに挑戦することに。
戦闘中、ココアの指示に合わせ、各メンバーが完璧な連係を見せる。そるの回復、Whiteとゆずの前衛による牽制、オニッシュやタイガーの重い攻撃、スカイやGeminiの後方サポート。
すべてが噛み合い、レイドボスを圧倒する。
討伐後、メンバーたちは喜びを分かち合い、フローライトの絆はさらに深まった。
ちなみに今回の討伐成功ギルドは以下の通り。
星1:フローライト・ブルーアーチ・ウィンドクローバー
星2:王国騎士団・エターナル・サンドフォール
星3:ダークキング
キリキリバッタは星3に挑戦するも敗北を喫し、力の差を痛感する結果となった。
レイド討伐を終え、フローライトの面々は互いを称え合い、喜びを分かち合っていた。
【ココア】「みんな、ナイス連携!完璧だったわ」
【そる】「いやー、俺も回復に専念できて助かったっす」
【スカイ】「支援も上手く決まったし、次はもっと星2に挑戦できそうですね!」
【ゆず】「うんうん!私たち最高のギルドだよね!」
【オニッシュ】「前衛として頼もしいメンバーが増えて嬉しいです」
【タイガー】「がははは!そうだろうそうだろう!」
【Gemini】「タイガーさん、社交辞令だーよ(笑)」
【タイガー】「なんだとじぇみ子!」
【Gemini】「なによトラお!」
【White】「あ、この2人いつもこんな感じなんで、気にしないでねw」
笑顔が拠点に広がる。
「ふふ、より一層楽しいギルドになっちゃった」
ココアが画面の向こうでつぶやいた、その時だった。全体チャットに不穏なメッセージが流れる。
【黒王】「はは、キリキリバッタ、星3挑んでボコボコにされたなww 笑える」
全体チャットは依然としてざわついていた。黒王の挑発に応えるかのように、キリキリバッタの指揮役・シャインが口を開く。
【シャイン】「ちょっと待てよ、黒王。あんたの言い方はひどすぎ。うちだって頑張ったんだ」
すると、ダークキングのエース・カノンが負け惜しみを言うなと挑発する。
【カノン】「負け犬の遠吠え?ダサ。文句があるなら実力で示せ」
【マルメン】「何だその態度!ふざけんな、あんたらのせいで俺たちのやる気削がれるんだぞ!」
【黒王】「俺たちは頂点を守るだけだ。あんたらがどう思おうと関係ない」
こうしてキリキリバッタとダークキングの対立が明確になり、32サーバーの空気はさらに緊張感を帯びる。
口論は文字だけでなく、サーバー全体に波紋を広げていた。新たな戦いの兆しが、静かに、しかし確実に近づいていた。
ーーー 第二章 ココアの物語 完 ーーー




