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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第六章 メリッサの物語

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第三十話 グダグダ出発準備

 日曜日の朝。

 スカーレットの面々は、ギルド拠点・紅の庭園に集まっていた。


 赤い花が咲き誇る庭園の中央広場。噴水の水音が静かに響き、澄んだ空気が流れている。


 アメリア。

 メリッサ。

 cat。

 さつき。

 ミロク。

 ゆり。


 メンバーは揃っていた。

 ……ももを除いて。


【ミロク】「あ、ももさん来てないね」

【cat】「まあ……今日はこのままでいいんじゃない?」


 誰も慌てない。むしろ、どこか空気が落ち着いている。


 ももは仕事はきっちりこなす。素材集めも、作業効率も申し分ない。だが同時に、余計な一言や不用意な発言で、場の空気を乱すことも多い。


 今日は大事な遠征の日。緊張感のある山エリアに向かうなら、なおさらだ。


【アメリア】「今回はこのメンバーで行きましょう」


 静かだが、はっきりした判断だった。

 紅の庭園には、穏やかな空気が流れている。誰かがピリつくこともなく、雑談も自然に続いていた。


【ゆり】「なんだか、落ち着きますね……」

【さつき】「うん。準備に集中できる」


 メリッサは、その様子を静かに見つめていた。

 不安がないわけじゃない。自分たちにとって、山エリアは危険だ。それでも。


(この空気なら、大丈夫)


 余計な衝突も、無駄な緊張もない。今のスカーレットは、目的にまっすぐ向かえる状態だった。


 噴水の水音だけが、静かに響く。


 今日は、素材集めのための遠征。

 そして、スカーレットにとっての挑戦の始まり。


 穏やかな空気のまま、彼女たちは山エリアへ向かう準備を整えていった。


 メリッサは装備画面を確認する。


【メリッサの現在装備】


 武器:白百合のロッド(おしゃれ度アップ・魔力微増)

 盾:なし

 頭:リボン付き花冠(おしゃれ度アップ・防御ダウン)

 胴:シルクフレアドレス(おしゃれ度大アップ・防御低)

 腕:クリスタルブレス(おしゃれ度アップ・魔防微増)

 足:白鳥のレーススカート(おしゃれ度アップ・移動速度ダウン)

 靴:エレガントヒール(おしゃれ度アップ・回避ダウン)

 装飾: 煌めきのティアラチャーム(おしゃれ度特化・戦闘効果なし)


 メリッサは装備画面を閉じ、ギルドチャットを開いた。


【メリッサ】「みんな、聞いて。山エリアは思った以上に危険よ!おしゃれ装備のままだと、さすがにリスクが高すぎるわ」

【アメリア】「確かに……みんな、今までのガチャや探索で手に入れた中で、一番マシな戦闘装備に変更して!」


 すぐに反応が返ってきた。


【cat】「えー、せっかく可愛い装備にしたのに」

【さつき】「でも、確かに山は怖いですね」

【ミロク】「まぁ、生きて帰れないと素材集めどころじゃないしな」

【ゆり】「了解しました!」


 こうして、スカーレットの面々は妥協の戦闘装備へと切り替えていく。


 各メンバーの「微妙に戦える」装備


【メリッサの装備】

 武器: 白銀のロッド(魔力アップ・おしゃれ少し)

 頭: 風除けのカチューシャ(防御微増)

 胴: 魔繊ローブ(中防御)

 腕: 魔力補助ブレス

 足: 軽量スカート

 靴: ローヒールブーツ

 装飾: 小さな護符


【アメリアの装備】

 武器: 精霊のワンド

 頭: 知恵のベレー帽

 胴: バトルドレス

 腕: 強化布グローブ

 足: 軽装スカート

 靴: フラットシューズ


【catの装備】

 武器: 銀の短剣

 頭: 獣革のキャップ

 胴: 軽装ジャケット

 腕: レザーグローブ

 足: ショートパンツ

 靴: ホワイトブーツ


【さつきの装備】

 武器: 聖木の杖

 頭: 白いヘッドドレス

 胴: 僧侶のローブ

 腕: 癒しの腕輪

 足: ロングスカート

 靴: 布製ブーツ


【ミロクの装備】

 武器: 鋼の大剣

 頭: アイアンヘルム

 胴: 鉄の鎧

 腕: 鉄の手甲

 足: レザーガード

 靴: ヘビーブーツ


【ゆりの装備】

 武器: クロスボウ

 頭: 防護フード

 胴: 革鎧

 腕: 皮手袋

 足: 動きやすいスカート

 靴: 軽量ブーツ


 一番マシな戦闘力をもつ、ミロクでも中難度には心細い。全員が装備を切り替え終えた頃、ギルド拠点の空気が少しだけ引き締まった。華やかさは大幅に減った。だが、これで最低限戦える。


【アメリア】「……完璧とは程遠いわね」

【メリッサ】「ええ。でも、残念ながらこれが今の私たちの最善みたいね……」


 戦闘ギルドのような装備ではない。

 それでも、作品のためなら、彼女たちは危険な場所へ踏み出す。


 おしゃれも、芸術も、そして生存も。

 すべてを両立させるために。


【ミロク】「あ、そうだ」


 ふと思い出したように、ミロクが言った。


【ミロク】「ゲームといえば、道具も大事だよな。みんな、回復アイテムとか食料、ちゃんと持った?」


 一瞬の沈黙。


【cat】「……え?」

【さつき】「あ……」

【ゆり】「そ、そういえば……」


 それぞれが慌ててアイテムポーチを開く。


 空。


 包帯も、回復薬も、保存食も、何も入っていない。


【cat】「あー…あははは……」

【さつき】「そいえば素材整理で全部売っちゃいました……」

【ゆり】「私、装備で頭いっぱいで……」


 ミロクはゆっくりと天を仰いだ。


【ミロク】「……マジか」


 唯一、アメリアとメリッサだけが、最低限の回復薬と食料を持っていた。


【アメリア】「これは、想像以上に大冒険ね」

【メリッサ】「ええ。装備より、こっちの方が問題かもしれないわ」


 戦闘力は心許ない。

 物資もほぼゼロ。


 それでも、彼女たちは山エリアへ向かう。

 無謀かもしれない。だが、それがスカーレットだった。


 先が思いやられる遠征の幕が、静かに上がった。

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