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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第五章 リデルの物語

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第二十六話 誰かが支えてくれている

 フローライト拠点。


 転移ゲートが光を放ち、最初に姿を現したのは火山組だった。


【ハルト】「ただいま戻りました」

【みぃ子】「全員、無事です!」


 装備は煤と灰で汚れているが、誰一人欠けていない。


 少し遅れて、奈落組のゲートも開いた。

 だが、こちらは様子が違った。


 Rain、White、リデル、ココア、そる、烈火。そして途中脱落していた、らいおんとリュートの姿もある。


【らいおん】「……いやぁ、奈落はやばい」

【リュート】「二層でレイド級は反則だろ」


 全員、無事ではある。

 だが、その表情には疲労と悔しさが滲んでいた。


 まず口を開いたのは、ハルトだった。


【ハルト】「岩魔人、レッドリザード、オークを討伐。耐熱鉱石、溶岩苔、火山樹脂、オーク肉を確保しました」

【White】「十分すぎる成果だな」

【ココア】「温かい冬に使える素材ばっかりじゃん」


 みぃ子が嬉しそうに補足する。


【みぃ子】「暖炉用の演出素材、結構いいのが揃いました!」

【むー】「火山の熱を“優しい暖かさ”に変えられそうです」

【ペンギン】「……料理長がいれば、肉も活かせたんですけどね」


 その一言に、少しだけ笑いが起きた。


 次に、Rainが静かに話し始める。


【Rain】「第一層のボス、シャスエティは討伐しました。状態異常特化の厄介な相手でしたが……」


【烈火】「リデルがいなきゃ詰んでた」

【そる】「マジで命の恩人」


 リデルは少し照れながら頷く。


【リデル】「皆さんの連携があったからです」


 だが、表情はすぐに曇る。


【Rain】「第二層。砂漠エリアでタイラントワームと交戦。その後、層ボス、嫉妬の獣姫・ジェラシアに全滅しました」


 場の空気が静まる。


【White】「……第二形態か」

【烈火】「せっかく最初は俺好みのモンスターだったのに、第二形態は筋肉ムキムキの魔獣な。完全に別モンスターだった」


 それでも、ココアが少しだけ明るい声を出す。


【ココア】「でもさ、これ」


 彼女が取り出したのは、淡く光る温熱結晶の枝。


【ココア】「温かい冬に使えそうな素材、ゲットできたよ」

【White】「……それだけでも、奈落に行った意味はあるな」


 フローライトの結果は明確だった。


 火山組:安定した成果

 奈落組:ボス討伐失敗、だが貴重な経験と素材あり


 それでも、誰一人として下を向いてはいなかった。


【Rain】「今回の目的は最高の庭を作ることです」

【White】「全滅はしたが、得たものは多い」

【ハルト】「素材は十分揃ってる」

【リデル】「皆で作れば、きっといい箱庭になります」


 その言葉に、全員が頷いた。


【ココア】「よし、制作フェーズだね」

【そる】「次は戦闘じゃなく、創作の本気だ」

【ペンギン】「温かい冬、作りましょう」


 奈落の地獄も、火山の灼熱も。

 すべては、この一つの箱庭のために。


 フローライトは、本戦用の庭作りという次の戦場へと向かっていく。


 翌朝。


 スマホのアラームが鳴るより少し早く、琴葉は目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む光はやわらかく、12月とは思えないほど穏やかだった。


「……今日も、あったかいな」


 着替えを済ませ、簡単に髪を整える。

 鏡の中の自分は、昨日より少しだけ表情が明るく見えた。


 パンをかじりながら天気予報を確認し、バッグを肩にかける。


「行ってきます」


 誰もいない部屋にそう呟いて、琴葉は家を出た。

 通勤路の空気は冷たいはずなのに、どこか心地よく感じられた。


 フローライトのみんな、今日も頑張ってるかな。

 そんなことを考えながら、職場へ向かう。


 仕事が始まる。レジの前に、次のお客さんが立つ。


「ありがとうございました。またお越しください」


 自然に口から出る言葉。

 手の動きも、視線も、もう迷いはない。


 以前の琴葉なら、混雑する時間帯は苦手だった。

 焦って、間違えて、落ち込んで。


 でも今は違う。隣のレーンでは徳永が手際よく対応していて、バックヤードでは同僚が補充作業をしている。


 誰かが支えてくれている。

 だから、安心して自分の役目に集中できる。


 ふと、そんなことに気づいた。


 仕事も、ゲームも、どちらもひとりじゃ成り立たない。箱庭を作るのも、戦うのも、立て直すのも。


 仲間がいるから、前に進める。


 休憩室の窓から差し込む、やわらかな冬の光を見ながら、琴葉は小さく息をついた。


「……私、一人で頑張ってるつもりだったんだ」


 でも違う。支えてくれる人がいて、頼ってくれる仲間がいて、その中で自分の居場所がある。


 それが、嬉しかった。


 ポケットの中のスマホが、微かに震える。


 フローライトの通知。


 また、誰かが頑張っている。

 また、誰かが前に進んでいる。


「……私も、ちゃんと頑張ろう」


 現実でも、ゲームでも。

 仲間と一緒に。琴葉はエプロンの紐を結び直し、次の仕事へと向かっていった。 


ーーー 第五章 リデルの物語 完 ーーー

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