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オンラインゲーム:サンドボックスウォーズ ―画面の向こうの絆―  作者: 黒瀬雷牙
第二章 ココアの物語

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第十三話 フローライトVSホワイトキャット

 土曜日、夜九時。

 ついに〈フローライト〉初のギルドバトルが始まる。この時間帯、サーバー内は異様な熱気に包まれていた。

 〈ダークキング〉が支配する十ヶ所の大区画に、

〈キリキリバッタ〉〈王国騎士団〉〈エターナル〉。

 名だたる上位ギルドが、三ヶ所同時に進攻を開始していたのだ。


 サーバー全体が沸き立つ中で、プレイヤーたちの注目は当然そちらに集中している。

 

 だが、ココアたちにとっては関係のない話だった。

 今はただ、目の前の戦いに集中するのみ。


【そる】「ココア姐さん、回復は任せて!」

【スカイ】「可能な限りの支援バフ、全部かけました。あとはタイミングを見て攻撃魔法を撃ちます」

【オニッシュ】「前衛は僕が引き受ける。敵の突進は通さない」


 フローライトの防衛陣形が整う。

 中央にココア、その両脇にそるとスカイ。

 やや前方には、巨大なハンマーを構えたオニッシュが仁王立ちする。


 対するホワイトキャットの陣形も、画面の向こうに映し出されていた。

 〈騎士〉で槍と大盾を構えるWhiteを先頭に、〈剣士〉ゆずと、斧を装備した〈戦士〉タイガーが両脇を固める。

 後方には〈風魔法使い〉Geminiが、杖を掲げながら待機していた。


【White】「こちらホワイトキャット、準備完了。行くぞ」

【ココア】「フローライト、迎撃体制オッケー!」


 カウントが始まる。

 ――3、2、1。


 システムボイスが告げた。


【システム】《ギルドバトル、開始します》


 次の瞬間、画面いっぱいに閃光が走り、両ギルドの戦いが火蓋を切った。


 フローライトの最終兵器・オニッシュ。

 巨大なハンマーを振り回す戦士の圧倒的破壊力。しかし、その動きは武器からは想像できないほどの素早さを誇る。


 Whiteはそれを見越して戦略を練っていた。


【White】「速攻だ!はじめから全開で行くぞ!!」


 開幕と同時、Whiteは大盾でオニッシュの突進を受け止める。


【Gemini】「りょーかい!リーダー!!」

 

 同時に後方のGeminiが突風魔法を全力で放ち、オニッシュを吹き飛ばす。


【オニッシュ】「お見事…上手いですね」


 Whiteはオニッシュの一撃を受け止めた反動で動けなくなる。

 だが、侵略側はこの区画の主・ココアを仕留めれば勝利。全てをこの一瞬に賭けた戦術だった。


 ゆずとタイガーが一直線にココアへ迫る。


【スカイ】「くそ、ファイア!」


 スカイがファイアで足止めを試みるが、二人の足は止まらない。


 剣士のゆず、斧使いのタイガー、2人の攻撃がココアに迫る。


【タイガー】「もぉらったぁぁあ!兜割り!!」


 しかしココアは盗賊。高い回避率を誇り、敵の攻撃を軽やかにかわし、回り込みながら反撃の体勢に入る。


 狙いはタイガー。背後に回ったココアはスキル《バックスタブ》を発動。


【システム】《タイガー 撃破》


 盗賊の背後攻撃時、通常の三倍ダメージ。その一撃でタイガーは画面外に吹き飛び、ノックアウト。


【White】「さすがフローライトのギルマス、強いな」


 侵略側の作戦は、序盤にして早くも崩れ始めていた。

 そして立て直したオニッシュが再び前線に立つ。

 巨大ハンマーを手にしながらも、その身軽な動きは依然として脅威的だ。


【オニッシュ】「さて、少し本気を出すか」


【Gemini】「やば」


 WhiteとGeminiは開幕から全力を出し尽くし、魔力も体力も消耗しきっていた。


【システム】《White 撃破》《Gemini 撃破》


 オニッシュはWhiteとGeminiを一瞬で粉砕!


 残るはゆずとココアの一騎打ち。

 剣士の鋭い突きが飛び、ココアは瞬時に回避。


【ゆず】「あなたを倒す!」

【ココア】「そうはいかないわ!」


 幾度も攻防を重ね、互いのスキルが火花を散らす。

 ココアは盗賊の特性を生かし、攻撃をかわしつつチャンスを待つ。


 そして、決定の瞬間!


【ココア】「行くわよ、ラストステップ!」


 背後に回り込み、《バックスタブ》を発動。


【ゆず】「しまッ…!」


 ゆずは防御する間もなく、画面外に吹き飛び、ノックアウト。


【システム】《ゆず 撃破》


【そる】「……俺、出番なかったな」

【スカイ】「俺もっす。でもこれからですよそるさん。一緒にもっと強くなりましょう!」


 戦場に勝利の表示が浮かぶ。フローライトの完勝。

 画面の向こう、4人の笑顔が弾けた。


【ココア】「よし、これで初戦完了! みんな、お疲れさま!」

【オニッシュ】「流石です。ギルドバトルは面白いですね」

【そる】「次は俺も目立ちたいな」

【スカイ】「次こそは支援もバッチリで行きます!」


 フローライトの防衛は成功した。だが、戦いはまだ始まったばかり。

 仲間と共に戦う楽しさ、そして成長の予感が、夜の画面を明るく照らしていた。


 戦闘終了の表示が画面に浮かぶと、フローライトとホワイトキャットの緊張は一気にほどけた。

 勝利を収めたフローライト。健闘したホワイトキャット。互いに互いの健闘を称え合う。


【White】「いやー、フローライトの防衛力、想像以上だった。特にココアさん、すごかったよ」

【ココア】「ありがとうございます! みんなの支えがあったからです」

【Gemini】「開幕の連携は練習通りでしたが、オニッシュさんのスピードにはびっくりしました」

【オニッシュ】「お褒めいただき光栄です。WhiteさんとGeminiさんの連係も完璧でしたよ」


 互いに笑顔を交わし、戦場の緊張は和らいだ。


【スカイ】「いやー、面白かったっす! またやりたいですね」

【そる】「次はもっと手ごわくなるぞ!」


 その後、Whiteが口を開いた。


【White】「もしよろしければ、さっそくフローライトにホワイトキャットを正式に加入させてもらえませんか?」


 画面の向こう、ココアは仲間たちに目配せした。


【ココア】「みんな、どう思う?」

【そる】「もちろん賛成っす!」

【スカイ】「いいじゃないですか、一緒に強くなりましょう」

【オニッシュ】「問題ありません。戦力としても頼もしいですし」


 全員の同意を得て、White、ゆず、タイガー、Geminiは正式に〈フローライト〉の仲間となった。


【White】「ありがとう! これからよろしく頼む」

【ココア】「こちらこそ! 一緒に最高のギルドにしましょう!」


 戦闘の熱気はそのまま、フローライトと新たな仲間たちの結束を強めた。

 模擬戦は大成功に終わり、戦いの中で生まれた信頼と笑い声が、拠点に温かく響き渡った。


 こうして、フローライトは人数と戦力を増し、次なる戦いに向けた一歩を踏み出したのだった。


 笑い声と雑談が広がる中、ふと全体チャットに視線が集まる。


 全体チャットに不穏な気配が流れた。


【黒王】「てめぇら!卑怯だぞ!!」


 キリキリバッタ・王国騎士団・エターナルの三大上位ギルドから攻撃を受けていた、ダークキングのギルドマスター・黒王が咆哮をあげたのだ。


 戦いの余韻に浸る間もなく、32サーバーには新たな波乱の兆しが迫っていた。

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