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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第五章 リデルの物語

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第二十四話 懸念の蜘蛛

 遺跡エリア最奥。


 崩れた神殿の中央に、異様な存在が佇んでいた。


 懸念の蜘蛛・シャスエティ。


 その姿は、巨大な蜘蛛ではなかった。


 細身の魔人。


 成人男性ほどの大きさの身体。青白く、病的な顔色。虚ろな目の奥に、濁った知性が宿っている。

 だが、背中から伸びる六本の腕が、すべてを物語っていた。


【烈火】「……蜘蛛要素、腕だけかよ」

【White】「いや、嫌な感じはそのままだな」


 シャスエティはゆっくりと六本の腕を広げ、指先から紫色の霧を漂わせた。


【Rain】「来るよ!」


 戦闘開始。

 最初に飛び出したのは、物理僧侶のそるだった。


【そる】「殴って浄化だ!」


 大天使のメイスを振りかざし、正面から突っ込む。光属性の衝撃が、シャスエティの胴体を捉えた。


 だが、シャスエティの六本の腕が、不規則な動きで空間を裂く。


【システム】混乱・麻痺・魔封 付与


 次の瞬間。


【らいおん】「操作が効かねえ!!」


 混乱状態のらいおんが、味方へ向かって剣を振り下ろした。


【White】「混乱をくらったか!」


 Whiteが大盾で受ける、だが止まらない。


【烈火】「くそっ、避けろ!」


 その烈火も、直後に麻痺を受けて動きを止める。


【烈火】「っ……動かねぇ……!」


 さらに、Rainの詠唱が途中で止まった。


【Rain】「やられた、魔法が使えない」


 魔封。魔法職にとって、致命的な状態異常。


【Rain】「まずい、サポートができない!」


 戦場は、一気に崩れかけた。その中で、静かに動いていたのがトリックスターのリュート。


【リュート】「分身、展開」


 彼の身体が、三つに増える。同時に、シャスエティの視線が分散した。


【リュート】「今度はこっちが錯乱してやるよ」


 幻影が、ボスの周囲を跳ね回る。シャスエティの六本の腕が、幻影を殴りつける。

 ――当たらない。


 敵の攻撃は、味方ではなく幻影へ向かっていた。


【White】「さすがプロだな……」

【ココア】「これがDARK KING式……」


 だが、状態異常はまだ解除されていない。

 そこで前線に出たのが、純ヒーラーのリデル。


【リデル】「解除、入れます」


 穏やかな声とともに、柔らかな光が広がる。


《混乱解除》《麻痺解除》《魔封解除》


【らいおん】「……あ、操作きく!」

【烈火】「っはぁ……動く……!」

【Rain】「詠唱、再開できる!」


 戦場の流れが、一気に戻る。


【そる】「よし、今だ!」


 物理僧侶・そるが再び前へ出る。


 六本の腕の隙間を縫うように接近し、渾身の一撃。光属性の衝撃が、シャスエティの胸部を貫いた。シャスエティは、歪んだ笑みを浮かべながら後退する。


【シャスエティ】「……愚カ……癒シハ、無意味……」


 だが、その言葉とは裏腹に。ヒーラーの存在が、戦場を支配していた。


【Rain】「次は一気に削る!」

【White】「バフ入れる!」

【リュート】「幻影、継続」


 連携が噛み合い始める。シャスエティの体力ゲージが、目に見えて減っていった。


【らいおん】「今度は、ちゃんと殴る!」


 混乱を抜けたらいおんの剣が、敵を捉える。


【烈火】「遅れた分、倍返しだ!」


 麻痺を振り払った烈火の攻撃が続く。

 そして最後に――


【そる】「成仏しやがれ!」


 聖なる一撃が、シャスエティを貫いた。六本の腕が力なく垂れ下がり、細身の魔人は静かに崩れ落ちる。


【システム】《懸念の蜘蛛・シャスエティ 討伐成功》


 戦場に、静寂が戻った。


【らいおん】「……奈落、怖い」

【烈火】「状態異常ゲーじゃねぇか」

【Rain】「でも、リデルがいれば何とかなるな」


 その視線が、自然とリデルへ向かう。


【ココア】「さすが純ヒーラー」

【White】「支え方が安定してる」

【リュート】「……いいヒーラーだ」


 リデルは少しだけ照れたように微笑んだ。


【リデル】「皆さんが強いからですよ」


 だが、全員が分かっていた。


 この戦いを立て直したのは、間違いなく彼女の回復と解除だった。


 崩れた石柱の間に戦利品が転がっていた。


【White】「……この層、特に目ぼしいアイテムは無かったな」


 ドロップ品は、奈落用の装備強化素材ばかり。

 箱庭に直接使えるような“映える素材”は、ほとんど見当たらなかった。


【烈火】「まあ、第一層だしな」

【らいおん】「雰囲気素材も、遺跡系ばっかだし」


 そんな中、Rainが情報ウィンドウを確認しながら口を開く。


【Rain】「層ボス討伐の約2%で、奈落ボス装備の素材が出るみたいですよ」


 一瞬、期待の視線が集まる。


【Rain】「……箱庭には、関係ありませんけどね」

【ココア】「現実は非情」

【そる】「夢がねぇ……」


 目的は温かい冬の箱庭。

 奈落装備の超レア素材が出ても、今回の本戦では使い道がない。


【リュート】「次、行くぞ」


 転移ゲートが開き、景色が歪む。


 第二層・砂漠エリア。


 視界いっぱいに広がる、果てしない砂の海。

 灼熱の風が吹き荒れ、空気が肌を刺すように熱い。


【らいおん】「うわ……いきなり暑すぎだろ」

【烈火】「温かい冬の素材集めに来て、灼熱地獄とはな」


 だが、奈落の第二層はそんな生易しい場所ではなかった。砂丘の向こうから、異形の影が次々と現れる。


 彷徨く雑魚敵。砂の獣、骸骨兵、砂嵐の精霊。

 そして、その中に。


【White】「……おい、あれ」


 砂を割って現れた、巨大な影。


 長い胴体。鋭い顎。

 地面を震わせる質量。


【そる】「まさか……」

【リュート】「タイラントワームだな」


 全員が息を呑む。


 タイラントワーム。

 下位個体とはいえ、レイド級モンスター。


【ココア】「ここ、第二層よね……?」

【烈火】「二層でレイドの奴かよ……」


 砂を巻き上げながら、巨大なワームが咆哮する。


【らいおん】「深いとこ、どうなってんだよ……」


 奈落は、想像以上に過酷だった。


 だが同時に、この深さこそが、他の箱庭ギルドでは辿り着けない素材の領域。


 フローライトの挑戦は、さらに危険な領域へ踏み込んでいく。


 第二層・砂漠エリア。そして、目の前にはレイド級の怪物。


 奈落は、まだ本気を出していなかった。

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