第二十三話 高難度ダンジョンで素材集め
フローライトの面々も、ケルベロスの時と同じように、ギルド一丸となってリデルへの協力を始めていた。
本戦という大舞台。
テーマは「温かい冬」。
そして、相手はアメリアとメリッサ。
中途半端な箱庭では、到底太刀打ちできない。
【ココア】「今回は勝ちに行く庭だね」
【みぃ子】「全員で支えましょ!」
【ゆず】「素材集めから本気で!」
その空気は、かつてケルベロスに挑んだ時とよく似ていた。
そして、同じ頃。
オニッシュが所属するDARK KINGでも、似たような光景が広がっていた。
【BROS】「オニッシュ、今回はガチで支援するぞ」
【ザン・シャオ】「アメリアとメリッサだけじゃない、一蓮托生のケルベロスや、フローライトにも油断するな」
【オニッシュ】「……うん。全力で行く」
ライバルであり、仲間でもある。
それぞれのギルドが、それぞれの出場者を支えるために動き出していた。
フローライトの作戦会議で、真っ先に口を開いたのはギルドのエース、Rainだった。
【Rain】「スカーレットとの差別化を考えるなら、普通の箱庭素材じゃ足りない」
チャットが一瞬、静まる。
【Rain】「箱庭ギルドじゃ行けない難易度のダンジョンで素材を集めよう」
【White】「……つまり」
【Rain】「奈落と、火山です」
その言葉に、数人が息を呑んだ。
火山と奈落。
いずれも高難易度エリアで、一般的な箱庭ギルドではまず挑まない場所だ。
【そる】「スカーレットのメンバー的に……」
【烈火】「火山も奈落も、自殺行為だな」
【らいおん】「あそこは戦闘特化向けだし」
スカーレットは、美麗な箱庭と演出に特化したギルド。戦闘難易度の高いダンジョンは、そもそも主戦場ではない。
【Rain】「だからこそ、ここで差をつける。素材の質で、世界観の深みを作る」
その提案に、フローライトの空気が一気に引き締まった。
【ココア】「いいね、やろう」
【White】「リデルの庭のためなら」
【リュート】「無茶する価値はある」
【らいおん】「火山でも奈落でも行くぜ」
こうして、フローライトは二手に分かれることになった。
奈落組。選抜メンバーは、戦闘力重視。
Rain
White
ココア
そる
烈火
らいおん
リュート
そして、リデル。
【烈火】「よし、地獄観光だな!」
【そる】「観光で済めばいいけどね」
深淵の底でしか手に入らない素材。温かい冬というテーマに、あえて過酷な場所の素材を組み込むための挑戦だ。
他のメンバーは火山組。リーダーはハルト。
【ハルト】「無理はしない。生きて帰るのが最優先だ」
【みぃ子】「了解です!」
【ゆず】「溶岩落下だけは勘弁……」
高温地帯でしか採取できない鉱石や植物。
冬の温かさを演出するための、重要な素材になるはずだった。
こうしてフローライトは、本戦に向けた本気の素材集めを開始する。
すべては、リデルの箱庭のために。
奈落組は、順調に第一層・遺跡エリアを進んでいた。
崩れかけた石柱。
ひび割れた床。
天井から垂れ下がる黒い蔦。
かつては、この時点ですでに全滅していた場所だ。
【そる】「……前より、楽じゃね?」
【White】「敵の動きが見えるようになったな」
【ココア】「昔は雑魚にやられたもんね」
モンスターを次々と倒しながら、メンバーは確かな手応えを感じていた。
成長している。
以前は、第一層の序盤ですら危険だった。
それが今では、安定した連携で進めている。
【烈火】「俺たち、強くなったよな」
その中で、少し緊張した様子を見せていたのが、らいおんだった。
【らいおん】「奈落、初めてなんだよな……」
【そる】「まあ、誰でも最初はそんなもん」
一方、落ち着いた様子で周囲を見渡しているのが、リュート。彼とRainはかつて、DARK KINGに所属していた時に、第三層まで到達した経験者だ。
【リュート】「第一層の最後に出てくるのは、懸念の蜘蛛・シャスエティ」
その名を聞いた瞬間、数人の表情が引き締まる。
【White】「聞いたことあるな」
【ココア】「状態異常の塊、だったっけ?」
リュートは小さく頷いた。
【リュート】「ああ。毒、麻痺、混乱、呪い……あらゆる状態異常で翻弄してくる、嫌なタイプのボスだ」
シャスエティを見たことのない面々は、巨大な蜘蛛の姿を思い浮かべる。
糸で拘束し、毒牙で削り、混乱で仲間割れを誘う。単純な火力勝負では通じない相手。
【烈火】「面倒くさいやつだな」
【Rain】「ヒーラーの腕が試されます」
その視線が、自然とリデルに向く。
【リデル】「……任せてください」
静かだが、芯のある声。
仲間を支え、立て直すのが自分の役目。
それは、現実でも、ゲームでも変わらない。
【らいおん】「よし……初奈落、やってやる!」
遺跡エリアの奥。
不気味な蜘蛛の巣が張り巡らされた広間が、ゆっくりと近づいてくる。
第一層ボス 懸念の蜘蛛・シャスエティ。
奈落の本当の試練は、ここからだった。




