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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第四章 アリスの物語

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第十九話 予選出場者

 11月30日。


 この日、ついに箱庭コンテスト予選が開催された。


 これまでのコンテストは、サーバー内限定の自動評価。言ってしまえば、ただのランキング表示に近いものだった。


 しかし今回は違う。


 4サーバー合同。

 予選 → 本戦の本格形式。

 オンタイム集計&リアルタイム順位発表。


 ギルドバトルや大規模レイドと同じ、

 生の空気が流れるイベントだ。


 32サーバーの広場は、朝から異様な熱気に包まれていた。


【システム】「箱庭コンテスト予選、エントリー作品を順次公開します」


 システムアナウンスと同時に、巨大スクリーンのようなUIが展開される。参加者の庭が、ひとつずつ表示されていった。


 ・アメリア【スカーレット ギルマス】


 白と金を基調にした、王宮庭園。

 左右対称の設計。噴水、彫像、花壇、すべてが完璧に整っている。

 視線誘導すら計算された、まさに作品。


「うわ、芸術点えぐい」

「これは強い……」


 32サーバーの全チャに、声が飛び交う。


 ・メリッサ【スカーレット 所属】


 幻想的な森の庭。


 発光植物、浮遊する光の粒子、霧のエフェクト。

 まるで絵本の中の世界だ。


「世界観の作り込みが異常」

「これ、住みたい」


 ・ オニッシュ【DARK KING 所属】


 画面に映し出されたのは、

 白とピンクで統一された、ふわふわの庭。


 ハート型の花壇。

 丸みのある噴水。

 リボン付きのベンチと、柔らかな光のランタン。


 甘い色合いに包まれた、まるでお菓子の国のような空間だった。


 漆黒の防具に巨大ハンマーを振るう、あの戦場の怪物の姿からは、まったく想像できない。


「……え、オニッシュ?」

「可愛いんだが」

「さすが琉韻の妹」

「ギャップえぐい」


 戦場では破壊の象徴。

 箱庭では、癒しの塊。


 その落差に、会場は一瞬で和んだ。


 ・ ベディビア【王国騎士団 所属】


 騎士団の訓練場を模した、実用重視の庭。

 模擬戦エリア、旗、武具ラック。

 「暮らせる庭」という独自路線。


「コンセプト勝ちだな」

「箱庭ってこういうのもアリなんだ」


 ・ココア【フローライト ギルマス】


 木造カフェを中心にした、森の休憩庭園。

 テラス席、暖色のランタン、香り立つ花々。

 ログインした瞬間、コーヒーの匂いがしそうな空間。


「ここ、ずっと居たい」

「リアルでおしゃれな庭だな」


 ・リデル【フローライト 所属】


 白い花と水路を組み合わせた、静謐な水辺の庭。

 音も光も控えめで、心を落ち着かせる設計。


「癒し性能高すぎ」

「精神回復できそう」


 ・ みぃ子【フローライト 所属】


 ぬいぐるみや小物が並ぶ、可愛い系ファンタジー庭園。

 パステル調の色合い。小さな家と動物オブジェが並ぶ、童話の世界。


「可愛い!」

「これは人気出る」


 ・ゆず【フローライト 所属】


 柑橘の木と小川が流れる、爽やかな自然庭園。

 風が通る設計で、見ているだけで涼しくなる。


「夏に見たい庭」

「名前にぴったりだな」


 ・琉韻love【斬々抜断 所属】


 紅葉と石灯籠、静かな池を配した和風庭園。


「和の美だ」

「落ち着く……」


 ・金糸雀【斬々抜断 所属】


 極彩色の幻想庭園。

 派手。とにかく派手。色の暴力。


「目がチカチカする」

「でもインパクトは最強」


 ・ミロク【スカーレット 所属】


 地下遺跡風のダークガーデン。

 炎のエフェクトと重厚な石造建築。


「トップ10にいないけど普通に強くね?」

「雰囲気作りうまいな」


 ・ゆり【スカーレット 所属】


 小さな街並みを再現した、生活感のある庭。

 洗濯物、路地、ベンチ。

 派手じゃない。でも、温かい。


「こういうの好き」

「人が住んでそう」

「てか住めそう」


 ・らん【ケルベロス 所属】


 合理的で無駄のない設計。

 バフオブジェ、視界の抜け、動線。

 実用美の塊。

 

 アリス同様、ケルベロス総出のバックアップを受けている。


「効率の鬼」

「てかレベル高いな」

「ケルベロスの本気が見える」


【黒鉄】「らんやアリスの庭じゃない、どちらも俺たちケルベロスの庭だ!」

【ピノキオ】「ドキドキする」

【Miley】「うん、緊張してきた」


 ・アリス【ケルベロス 所属】


 画面いっぱいに広がったのは、四季が同時に存在する庭。


 春の花畑。

 夏の水辺。

 秋の紅葉。

 冬の静寂。


 中央には、柔らかな光を放つ大樹。

 すべてが自然につながり、無理がない。


「……綺麗」

「世界観、完成してる」

「これはガチ」


 派手な演出はない。

 でも、心が落ち着く。

 住みたい庭だった。


【牙】「優勝だろ」

【黒鉄】「……すごい」

【らん】「構成、完成度高いです」

【伯爵】「誇らしい」

【Miley】「泣きそう」


 画面の向こう。

 愛花は、そっと息を吐いた。


(……みんなの素材、ちゃんと活きてる)


 まだ結果は出ていない。

 でも、この瞬間だけは、確かに最高の庭がそこにあった。


 次に映し出された名前に、全チャがざわつく。


 ・すなっち【サンドウォール ギルマス】


 砂漠をテーマにした、巨大な城塞庭園。

 砂丘、城壁、見張り塔。

 防衛戦を想定した、堅牢な構造。


「これは要塞だろ」

「戦闘ギルド感すごい」


 ・ カノン【DARK KING 所属】


 漆黒の空に浮かぶ、破壊と美の庭。

 崩れた神殿、赤い雷、浮遊する瓦礫。

 厄災と呼ぶにふさわしい存在感。


「禍々しい……」

「芸術点も高いのが腹立つ」


【黒王】「……お前たちは、戦闘以外もこなすのか」

【すなっち】「戦闘じゃ、俺は一度もあんたに勝てたことはねぇ。だがな、箱庭ならこちらに軍配だろ?」


「言った!」

「挑発だこれ」


【すなっち】「少なくとも、ここではカノンには勝つ」

【カノン】「……はは、臨むところだ」


 短い一言。だが、その裏にある自信と余裕は、誰の目にも明らかだった。



 すべての作品が出揃い、予選の舞台は整った。


 戦闘最強クラスの面々。

 癒し系職人たち。

 伏兵のダークホース。

 そして、箱庭に本気になった戦闘ギルド。


【牙】「なぁ、これ……普通に勝てるだろ」

【黒鉄】「……ああ」

【Miley】「みんなで作った庭だもんね」


 画面の向こうで、愛花は小さく笑った。


(……負けたくない)


 戦争でもない。

 殺し合いでもない。


 ただ、好きを形にした勝負。


 その戦いが、今、静かに始まろうとしていた。


ーーー 第四章 アリスの物語 完 ーーー

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