第六話 それぞれの持ち味
烈火とリデルを失い、前衛は White ただ一人。
らいおんの剣が重く唸り、リュートの幻術が視界を惑わせる。二人の猛攻を、White は 大盾を前に出して受け止め続けた。
【White】「この程度で倒れる俺ではない」
【らいおん】「これを受けきるか」
らいおんが感嘆する。
【リュート】「噂通りだね。フローライトの壁・White」
リュートも笑みを浮かべた。White は答えず、ただ一歩も引かずに盾を押し返す。
だが、限界は近かった。
盾の縁が割れ、足元がわずかに沈む。
その瞬間、風が走った。
【Gemini】「待たせたね、Whiteさん!」
【ゆず】「ここからは、私たちもいくよ!」
ゆずとGeminiが戦線に飛び込み、White の前に風の盾を作るように展開する。
Geminiが杖を構え、風が渦を巻く。
【Gemini】「吹き散らせ、アストラル・ゲイル!」
リュートの幻影が一気に吹き飛び、残ったのは本物の一人だけ。
【リュート】「僕の幻術をここまで正確に……」
White が大盾を地面に突き立て、その影から 大槍を抜き放つ。らいおんが叫ぶ。
【らいおん】「来いッ!」
風を切る音が、戦場を裂いた。
White の渾身の一撃——
弧を描いたランスが、らいおんの胸を正確に貫く。
ドガァンッ!
【らいおん】「……見事。これが……フローライト……」
【システム】《らいおん 撃破》
らいおんは微笑んだまま光となり、霧散した。
残るはリュート一人。
ゆずが愛刀・魂穿をゆっくり構えた。
【ゆず】「あなたの幻術、強かったよ」
風に乗るように踏み込む。
【ゆず】「これで終わり!」
刀が一閃する。
その軌跡は、ただ一条の光。
【ゆず】「月華一輪」
斜めに走る白光が、リュートの胸を横切った。
【リュート】「……きれいな技ですね。負けたよ」
静かに崩れ落ちるリュート。
【システム】《リュート 撃破》
そして、北西銅区画もフローライトの勝利で決着した。
ココアの統合宣言が終わった瞬間、戦場を包んでいた緊張がふっとほどけた。
さっきまで斬り合っていたはずの 焼肉キングダムの六人は、今は肩を並べてフローライトの拠点へ向かって歩いている。
先頭を歩くらいおんが、軽く頭を下げた。
【らいおん】「改めて、今日からよろしく。俺たち焼肉キングダムは、フローライトに正式加入する」
隣のリュートが口元だけで笑う。
【リュート】「元々ぶつかる理由なんて薄かったしね。これからは味方として、幻術で助けるよ」
REBORNが肩を回しながら前に出た。
【REBORN】「いや〜、ボロ負けしたけど、強いギルドに入れるなら悪くねぇ。……みぃ子、ほら挨拶しろ」
【みぃ子】「み、みぃ子ですっ! ヒール担当! よろしくお願いしますっ!」
ペンギンは元気よく手を挙げた。
【ペンギン】「ペンギン! 槍使い! さっきの試合のことは忘れてーッ!」
そして最後に、料理長がやたら丁寧に一礼。
【料理長】「わたくし料理長でございます。回復と、腹が減った時はぜひ。矢で射抜かれた件は、ええ、まったく気にしておりません」
【むー】「なんだか、逆に気にしてるとしか聞こえませんよ……」
笑いが起き、場の空気が一気にやわらぐ。
フローライト側も前へ出て、それぞれ簡単に挨拶を返す。
Whiteが静かに一礼した。
【White】「守りの要です。皆さんが後悔しないよう、必ず守り抜きます」
ゆずは魂穿を軽く掲げる。
【ゆず】「ゆず。剣士。……仲間が増えるのは、嬉しいです」
Geminiは風を纏わせた手をひらひらと振る。
【Gemini】「風魔法担当っ。連携は得意だから、いっぱい合わせていこ?」
そして最後に、ココアが皆の前に出て明るく宣言した。
【ココア】「というわけでっ! 今日から同じチーム! フローライトをもっと強く、もっと楽しくしていこう!」
拠点に拍手と歓声が広がる。
先程まで戦っていた六人と、フローライトの仲間たちが、初めて同じ円の中に立った瞬間だった。
ここから、新しいフローライトが始まる。
翌日、日曜日。
夜九時。フローライトは、新しい仲間としての初陣に挑んでいた。
巨大な海底洞窟に響く、耳を裂く咆哮。
「グォオオオオオオ!!」
星5レイドボス——
海竜レヴィアトル。
波しぶきのような魔力が吹き荒れ、広範囲の水圧攻撃が降り注ぐ。
【ココア】「みんな、一気に押すよ! 料理長、バフお願い!」
【料理長】「任せてくださいませ。潮騒の晩餐!」
料理長が鍋を掲げると、蒸気が広がり、まるで香りそのものが光になったような料理のエフェクトがチーム全体を包む。
【システム】《攻撃力↑》《魔力↑》《行動速度↑》《再生効果付与》
【むー】「料理で強くなるって面白いですよね……うまいけど!」
波が押し寄せる中、そるが仲間を支えながら突き進む。
【そる】「回復回復……からのッ!」
そるはメイスを構え、光を纏わせた。
【そる】「メイス・オブ・ジャッジメント!」
神聖な衝撃波が海竜の鱗を砕き、強烈な物理ダメージが叩き込まれる。
【ペンギン】「こっちは足止め、任せろ! ランサー・トライデント!」
【REBORN】「魔剣モードで援護入る!」
【Gemini】「風纏って〜……アストラル・ショット!」
【ハルト】「いけっ、スパイラル・ドライブ!」
【らいおん】「押し切るぞ!」
それぞれが自分の持ち味を最大限に発揮し、
海竜の体力は一気に削られていく。
そして最後のフェーズ、レヴィアトルが頭上に魔力の渦を溜め、超広範囲の海嘯攻撃を解き放とうとする。
【ココア】「ラスト! とどめは任せた!」
リデルが杖を構え、聖なる光を宿す。
【リデル】「行くよ、サンライト・ブレス!」
放たれた光が、海底洞窟を白く照らす。
直後、烈火が跳躍。
【烈火】「燃え尽きろ!焔牙ッ!!」
紅蓮の斬撃と光が交差し、海竜レヴィアトルの胸部へと深く突き刺さる。
「グギャアアアアアア——ッ!!」
巨体が揺れ、轟音とともに崩れ落ちた。
【システム】《海竜レヴィアトル 討伐完了》
【Rain】「星5、勝ちましたね!」
【ココア】「うん!みんな、お疲れ!」
新しい仲間としての最初の大仕事は、最高の形で幕を閉じた。




