第十一話 突撃!個人拠点訪問!
素材集めを終えたフローライトの面々は、街へ帰還した。
倉庫に集めた素材をギルド用と個人用に分けると、建設モードに切り替わる。
【スカイ】「よし、じゃあまず壁からいこう。前回の襲撃対策にもなるし」
【ココア】「うん、拠点っぽくしていこう!」
木材を組み、石を積み上げ、罠の設置位置を相談しながら少しずつ形にしていく。
簡易の宿舎も立ち、焚き火の光が夜の街にゆらめいた。
まだ戦うには心許ない。けれど、確かに一歩、前へ進んでいた。
【そる】「よっしゃー! これでギルド拠点完成だな!」
【ココア】「うん、みんなありがと!」
【スカイ】「とはいえ、もうちょっと設備充実させたいな。防御系のバフがあと一段欲しい」
作業が一段落したところで、そるが提案した。
【そる】「ねぇねぇ、みんなの個人拠点見せてよ!」
【ココア】「え、いいけど恥ずかしいなぁ」
【スカイ】「まぁ、俺のは大したことないすよ?」
転送ポータルを使い、それぞれの拠点を巡ることに。
最初に訪れたのは、スカイの拠点。
木の柵と簡易小屋がポツンと立つだけの、質素な場所だった。
【そる】「スカスカじゃん!」
【スカイ】「素材も時間も全部ギルド優先に回してるんですよ!」
【オニッシュ】「でもここ、バフ効果が弱い。生産効率にも影響出てる」
【ココア】「うん、スカイ君の拠点が強くなれば、ギルド全体のボーナスも上がるし。もう少し頑張ろ?」
【スカイ】「……はい(汗)」
次に訪れたのは、ココアの拠点。
整然とした柵に花が並び、設備もバランス良く配置されていた。
中央にはカフェのようなテーブルセットが置かれており、全員が思わず感嘆する。
【そる】「うわぁ……女子力高っ!」
【スカイ】「センスあるなぁ。俺のと交換してほしい」
【オニッシュ】「機能面も整ってる。バランスがいい」
【ココア】「ありがとう。生活感も欲しくて、ちょっと工夫してみたんだ」
三つ目はそるの拠点。
転送された瞬間、全員が言葉を失った。
【スカイ】「……カオス」
【ココア】「なにこれ……迷路?」
【オニッシュ】「処理落ちするレベルだな」
建物が無秩序に積み重なり、地面には素材が散乱。
機能性より勢いで建てたような、まさにそるそのものの世界だった。
【そる】「バフさえかかれば良くね? 見た目とかどうでもいいし!」
【スカイ】「いや限度があるだろ!」
【ココア】「片付け手伝おうか……?」
最後に訪れたのはオニッシュの拠点。
外観は黒を基調としたシックな造り――だが、扉を開けた瞬間、全員の動きが止まった。
【そる】「……えっ」
【スカイ】「なにこの……フワフワした部屋……」
【ココア】「かわいい……!」
室内はピンクと白の小物で統一され、家具のデザインもどこかメルヘン。
まるで少女の部屋のようだった。
【オニッシュ】「……デザインパック課金した」
【スカイ】「めっちゃ課金してんじゃん!」
【そる】「ギャップえぐい!」
【ココア】「似合ってますよ、オニッシュさん」
珍しくオニッシュが照れたように視線を逸らす。
【オニッシュ】「落ち着くんだ、こういうの」
笑いが弾け、穏やかな空気が広がった。
それぞれ違う拠点、違う個性。
(どんな形でも、仲間でいるってこういうことなんだな)
ココアは静かにそう思った。
笑い声が落ち着き、フローライトのメンバーは再び中央チャットに集まっていた。
それぞれの拠点を巡り終え、雑談モードに切り替わる。
【スカイ】「そういえばさ、このギルドの他のメンバーって、俺見たことないんだけど……」
【そる】「言われてみりゃそうだな。いつもこの4人で動いてるし」
ココアが小さく頷いた。
【ココア】「うん。うちのギルドって、自由参加型なんだ」
【スカイ】「あー確かに、俺も自由参加だったから入ったんだった」
自由参加型のギルドは承認制と違い、誰でも申請さえすれば加入できる。
【ココア】「うん。だから、無言プレイヤーとか、リセマラして別サーバーに行った人がそのまま残ってるんだと思う」
【そる】「なるほどなー。でも、それにしても少ないよな」
【ココア】「アクティブなのは、今は私たちだけみたい」
少しの沈黙後、そるがコメントする。
【そる】「まぁ、ダークキング一強のせいだろな」
【スカイ】「あのランキングトップのギルド?」
【そる】「うん。PvPでもレイドでも常に上位。しかも重課金勢に声をかけて引き抜きもしてる。このサーバー、SBWの掲示板で、ハズレサーバー一覧に載ってたし」
【オニッシュ】「僕も勧誘されたことがある。断ったけどね……掲示板なんてあったのか」
【そる】「そうなんよ、初心者が伸びにくいサーバーとか、独占率高すぎとか書かれててさ」
ココアは少し笑った。
【ココア】「でも、私はこのサーバー、好きだよ」
【スカイ】「うん。ハズレでもいいじゃん。俺たちが楽しいなら、それで」
【そる】「お、スカイ名言きた!」
【オニッシュ】「同感です」
焚き火の光が、ゆらりと揺れる。
静かなサーバーの片隅で、彼らの時間だけが確かに動いていた。




