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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第一章 スカイの成長

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第三話 スカイとオニッシュ

 日曜日でも、空也のスケジュールはぎっしりだ。


 午前中は部活。

 午後からはまたスターダストホテルでバイト。

 夜にはレイドボス。


 星6・崩壊のグランデ。


 バイト終わり、制服のまま駅へ向かい、電車に飛び乗る。揺れる車内でスマホを取り出すと、ギルチャがすでに騒がしい。


【カノン】「まもなく突入する」

【ザン・シャオ】「星6相手にこの人数はキツいね……」


 スカイは軽く息を整えてアプリを起動した。


【スカイ】「今入りました!」


 敵の体力ゲージは、まるで壁。

 通常なら十数人以上必要なクラス。


【カノン】「短期決戦で畳み掛けるぞ」

【オニッシュ】「後衛、僕の後ろに。押し切る」

【ケリー】「うん、援護は任せて」


 カノンの魔黒斬波が遠距離から削り、オニッシュのダーク・インパクトが体力ゲージを大きく削る。


(やっぱこの二人、おかしい強さしてんな……!)


 スカイは火力よりもデバフや回復の支援に徹し、

 ギルド全体の被ダメージを抑える。


 そしてーー


【システム】《崩壊のグランデ 討伐成功》


 6人とは思えない速度で撃破。

 レイド報酬が続々とチャットに流れる。


【カノン】「お疲れ、みんな」

【BROS】「カノンとオニッシュ、やっぱやばいな」

【オニッシュ】「い、いや……みんなの補助がなかったら崩れてたよ」


 その後、解散の流れになり、

 スカイはふっと手元の通知に気づく。


【オニッシュから個人チャットが届きました】


 タップすると、

 オニッシュから短いメッセージが送られていた。


【オニッシュ】「今日もありがとね。電車の中で大変だったでしょ」

【スカイ】「いえいえ! オニッシュさんこそお疲れ様です!」


 少し間が空く。


 やがて、スカイは前から気になっていたことを切り出した。


【スカイ】「……そういえば、オニッシュさん。そろそろ()()されそうなんですか?」


 返ってきたメッセージは、意外なほど重かった。


 やがて、小さな文字が表示された。


【オニッシュ】「返したよ。全部。だけど…終わったと思ってるの?って言われた」

【スカイ】「え?」

【オニッシュ】「今日までの生活費、全部返してから出ていけだって。金額もよく分かんない。もう、数字のない借金みたいなものだよ」


 言葉の端々に、ギルドでの冷静さとは違う 年相応の疲れと弱さ が滲んでいた。


 スカイとの個チャでは、オニッシュは「私」を使う。ギルドでの中性的な「僕」ではなく、素の彼女のままの言葉が出てくる。


【オニッシュ】「スカイくんにだけ言うけど……私、たぶん当分あの家から逃げられない。お金じゃどうにもならないやつだから」


 スカイは胸が締めつけられた。

 しかし、彼女を重くさせたくなくて話題を変える。


【スカイ】「そういえば拠点コンテストって……オニッシュさん、めちゃ強いって聞きました」

【オニッシュ】「ああ、あれ?」


 返ってきた声は、少しだけ柔らかい。


【オニッシュ】「興味ないよ。ただ好きに置きたいもの置いてただけ。そしたら勝手にランクインしてただけ」


 やっぱり、とスカイは思う。この人は無自覚で強い。


【スカイ】「でも、好きにやって上位って普通じゃないです」

【オニッシュ】「……スカイくんが言うなら、悪くないかな」


 その一言が、少し照れてるようにも見えた。


 電車のアナウンスが流れる。


【スカイ】「そろそろ降りるので、一旦落ちます!」

【オニッシュ】「うん。気をつけて帰ってね。……また後で」


 スマホ画面を閉じながら、スカイは思った。


 オニッシュはギルドで見せる顔と違う、本当の女の子の部分を自分にだけ見せてくれている。



 翌日。

 空也が昼食を取り終えた頃、大地がやってきて勢いよく椅子に座った。


「空也! 昨日の運営のお知らせ見たか!?」


「え? まだ見てない。なにかあったの?」


 大地はスマホを開きながらニヤニヤしている。


「ついに “サーバー統合の第一弾” が来たぞ!」


「え、もう?」


「まあ今回統合されるのは、《1〜4》《5〜8》《9〜12》《13〜16》の四つのグループだけだけどな。人口減ってるサーバーの救済だと」


 空也はそれを聞いて、胸の奥がざわついた。


「でもさ、運営の書き方だと、いずれ全グループ化進めるっぽくね?たぶん《29〜32》も、いつか同じグループになるぞ!」


 大地は続ける。


「いや〜俺ワクワクしてんだわ。空也のいる32サバって あの篝火紫苑がいるだろ? あの有名配信者!」


 空也の胸がギュッと縮む。

 大地は興奮気味だ。


「統合されたらさ、空也が案内してくれよ?紫苑と話してみてぇ! 絶対いい子だろ、てかプレイヤー名隠してるけど、お前知ってたりする!?」


 空也は笑うしかなかった。


「ははっ…いやー、わかんねぇな」


 本当のところを言えるはずがない。

 篝火紫苑──それは、ギルドの仲間 オニッシュ のプレイヤー。


 誰にも言えない姉の束縛。軽い気持ちで近づいていい存在じゃない。


 だがそれを説明できるわけもなく、大地は無邪気なまま続ける。


「いや〜マジで楽しみだよな!29〜32の統合したら、とりあえずお前んとこに突撃してやるわ!」


「……あはは。優しくしてくれよ?」


 笑って答えながらも、

 胸の奥のざらつきは消えなかった。


(……大地。篝火紫苑は…いや、オニッシュさんは、そんな軽く追いかけていい相手じゃないんだ)


 空也はただ、誤魔化すように笑うしかなかった。


ーーー 第一章 スカイの成長 完 ーーー

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