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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第一章 スカイの成長

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第二話 箱庭勢の存在

 スターダストホテルを出ると、夜風が火照った体を冷ましてくれた。

 駅へ向かいながらスマホを見ると、すでにギルバト開始から五分以上経過している。


(やべ……! 急がねぇと)


 改札を抜け、電車へ滑り込む。

 揺れる車内でイヤホンをつけ、アプリを起動。すぐにギルドチャットへ指を走らせた。


【スカイ】「すみません! 今入りました!」


 その瞬間、イヤホンからVCの声がいっせいに明るくなる。

 もちろんスカイは電車内なので、手打ち参加だ。


【カノン】「お疲れ様、スカイ」

【スカイ】「お疲れ様です! カノンさん、みなさんも!」

【オニッシュ】「待ってたよ、スカイくん」

【BROS】「おー、お疲れ! よし、さっそく援護頼むわ!」

【ザン・シャオ】「お疲れ。間に合っただけで十分! 後衛側に回ってくれ」

【ケリー】「電車で参戦は助かるけど、また乗り過ごさないでよ、スカイくん」


 三回乗り過ごしの“前科”は、永遠に語り継がれそうだった。


【スカイ】「あ、今日は気をつけます!」

【カノン】「乗り過ごしても補導されないようにだけ頼むぞ」

【スカイ】「そ、そこは大丈夫ですって!」


 VCの空気が、軽く、あたたかく揺れる。


 かつてのダークキングは“強者の王国”。

 張りつめた空気が常に漂い、近寄りがたい最強集団だった。


 だが今の彼らは違う。


 BROSはスカイ到着に合わせて戦線を調整し、

 ザン・シャオは丁寧に役割説明をし、

 ケリーは母みたいに心配し、

 カノンは落ち着いた声で場を整え、

 オニッシュにいたっては、どこか柔らかな雰囲気すら出ている。


(……俺が入ってから、少し変わったのか?)


 自惚れるつもりはない。だが、高校生プレイヤー・スカイの存在が、重かった空気に風穴を開けたのは事実だった。


 電車は次の駅へ近づく。

 だがスカイの指は止まらない。


【スカイ】「BROSさん、そっちの射線カバー入ります!」

【BROS】「おう! 助かる!」


(よし……間に合った)


 日常と戦場が混ざり合う、忙しくも充実した夜。

 三ヶ月の努力が、確かな形となりつつあった。


 この日、カノンとオニッシュという二大アタッカーの活躍もあり、ダークキングは“斬々抜断”から南銀区画を奪取。


 金区画ではRebellionが王国騎士団を撃破。

 いまサーバーは珍しく均衡しており、勢力図が目まぐるしく変わっていた。


【ザン・シャオ】「来週こそ、Rebellionにリベンジだな」

【BROS】「あぁ、今度は負けねぇ」


 電車が停車し、スカイは画面を眺めながら小さく息を吸う。


(ここが……今の俺の居場所だ)


 帰宅後、遅い夕食と風呂を済ませ、布団へ潜り込むと、VCの向こうでふっと柔らかい声がした。


【ケリー】「それにしても、スカイくん強くなったよね」

【スカイ】「え? いや、まだまだですよ!」


 返事は謙遜。だが胸の奥は少しあたたかかった。

 ついに完全無課金を卒業したのだ。


 とはいえ大量課金できるわけではない。

 それでもコツコツ揃えた装備は、魔導士として形になってきていた。


【スカイの現在装備】


武器:黒曜石の杖+1

 初期から使う相棒。魔力UP+一段突破。


盾:ミラーシールド

 低確率で魔法反射するロマン枠。お気に入り。


頭:青天の鉢巻(速さUP)

胴:賢者の聖衣(魔力UP)

腕:魔導士の手袋(魔力UP)

足:火龍の足鎧(火耐性・火属性強化)

靴:青天の靴(速さUP)

装飾:賢者の勾玉(魔力UP+回復&バフの性能向上)


 最適装備とは言えないが、立ち回りと補助能力は着実に伸びていた。


 戦闘が落ちついたタイミングで、スカイはふと思い出す。


【スカイ】「あ、そういえば……“おしゃれ度アップ”って何なんですか? あれ何に効くんすか?」

【BROS】「あぁ? 飾りだろ。魅了耐性とかじゃね? 知らんけど」

【スカイ】「適当すぎる……」


 そこへ、低く落ち着いた声が割り込む。


【黒王】「おしゃれ度は“拠点コンテスト”に影響する。魅了耐性ではない」


【BROS】「げっ、黒王さんいたんすか!」

【黒王】「今帰った。おしゃれ度は、拠点の家具・設備・テーマ評価に加算される。地味だが重要だ」

【スカイ】「へぇぇ……マジで知らなかった」


 ダークキングの多くはバトル勢。

 拠点コンテストなんて興味すらなかったのだ。


 スカイはランキングを初めて開く。


【32サーバー拠点評価ランキング】


1位 アメリア(スカーレット)

2位 メリッサ(スカーレット)

3位 オニッシュ(ダークキング)

4位 アリス(ケルベロス)

5位 ベディビア(王国騎士団)

6位 ココア(フローライト)

7位 リデル(フローライト)

8位 みぃ子(焼肉キングダム)

9位 琉韻love(斬々抜断)

10位 らん(ケルベロス)


 スカイは398位。

 一応家具を置いているのでゼロではないが、サーバー下位であることは否定できない。


【スカイ】「そいやぁココア姐さんとリデルさんとゆずさん、よく建設素材集め行ってたな……って、オニッシュさん3位じゃん!? マジすか!」

【オニッシュ】「ん、まぁ……趣味かな」


 淡々と答える横で、BROSが爆笑する。


【BROS】「戦闘はバケモンなのに、拠点は可愛い家具だらけなんだよな〜」

【オニッシュ】「い…いいじゃない、可愛いもの好きなんだから」


 ランキングを眺めながら、スカイは4位・アリスと10位・らんのギルド名に目をとめる。


(ケルベロス……確か、ブラッドハウンドとかウィンドクローバー、ブルーアーチの裏同盟が合併したギルドだっけ。リーダーは牙さんで、メンバー数はサーバー唯一の30満員。数の暴力って聞いたな……)


 今ではダークキング・王国騎士団・Rebellionの三強と並ぶ勢力と言われるほどに膨れ上がっていた。


 ランキングを見終えたスカイは、あることに気づき首を傾げた。


【スカイ】「てか……“スカーレット”ってギルド、初めて見たんすけど。そんなに強いんですか?」

【オニッシュ】「彼女たちは“箱庭勢”。バトルにはほぼ無関心だからギルドバトルでは見ない」

【スカイ】「へぇ、そんなギルドもあるんだ……」

【オニッシュ】「でも拠点コンテストではサーバー最強。アメリアもメリッサも、デザインセンスと素材集めが桁違いだよ。トップ2は固定だね」

【BROS】「バトル勢からすると未知の生物だよな。遭遇しても敵か味方かわかんねぇ」

【スカイ】「なんか……世界が広いっすね、このゲーム」


 戦い、奪い合う世界だと思っていた場所に、“箱庭の女王たち”という別の強者が存在していた。

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