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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第九章 カノンの物語

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第五十三話 別れ、そして新たな一歩

 星8レイド・アマテラス討伐の熱気がまだ冷めやらぬ中、ダークキングの面々は、それぞれ自分の進むべき道を見つめ始めていた。


【カノン】「……やっぱ、ダークキングは最高だったな」


 カノンの呟きに、静かだが深い同意の笑みが仲間たちから返る。戦場で共に生き抜いた者同士の、言葉にせずとも通じる信頼がそこにはあった。


 黒王は静かに、しかし確固たる声で告げる。


【黒王】「また会おう、友よ。どんな場所でも、俺たちは戦える」


 その言葉に、残った仲間たちは小さく頷き、胸の奥に熱い感情が込み上げるのを感じた。


 ペインは離脱からわずか24時間後、新たなギルド「Rebellion」を立ち上げた。

 鬼朱雀、シン、アークライン、nocturneも、燃え上がる闘志を胸に加わる。

 椿は、斬々抜断への移籍を表明し、フローライトとは別の道を選んだ。

 狼牙はブルーアーチへ、ヴァルターはブラッドハウンドへ、Dr.D=eathはウィンドクローバーへ、ドラテはサンドウォールへ、リュートは焼肉キングダムへと、それぞれの新たな戦場へと散っていく。


 残された面々は、少し寂しげな表情で互いを見渡す。


【ケリー】「……急に、随分減っちゃいましたね……」

【ザン・シャオ】「ま、でもさ。黒王とカノンがいる限り、俺たちは負けないさ」

【BROS】「そうだな。それにオニッシュも残ってくれた。三人がいる限り、ダークキングの魂は消えはしない」


 笑みが交わされる。しかし、笑顔の奥には、仲間と別れる寂しさと、それでも前に進む覚悟が混じっていた。


【黒王】「何言ってんだ、お前らも含めた六人で最強だ。これからも気合い入れていくぞ」


 六人は静かに頷き、胸の奥で熱く燃えるものを抱えたまま、それぞれの新しい戦場へ歩き出す。


 新たな挑戦が待つ世界で、ダークキングの伝説は静かに、しかし確実に刻まれていく。

 その魂と絆は、どこにいても、誰といても、消えることはないのだ。


 カノンの画面の向こう。レイド討伐の興奮がまだ残る中、藍沢流星はふと呟いた。


(怜王のやつ……いい仲間に恵まれやがって)


 笑みを零しながら、流星は過去のことを思い返す。


 あの頃、二人は中学生だった。

 怜王も流星も、成績は学年でも下の下。目立つのは、喧嘩や問題行動ばかり。教師や周囲からは手を焼かれる不良だった。


 中学2年のときの担任の言葉が、今でも心に残っている。


「お前ら、見返してやれよ。自分の可能性を信じてやれ」


 その一言で、二人は奮起した。

 “不良”として目立つだけの毎日を変え、自分の持てる力を全て発揮してみせる。


 勉強に打ち込み、少しずつ成果を出していく二人。

 しかし、順風満帆ではなかった。

 元々彼らを嫌っていた連中は、当然好意的には見なかった。

 さらに、これまでの不良仲間からも距離を置かれ、学校生活では二人以外の“仲間”はいなかった。


 けれど今、ゲームの世界で、確かな絆を築いた。

 お互いを信じ、支え合い、最強の仲間と共に戦う日々。

 流星は自然と、微笑みを浮かべた。


(お前は、やっぱり強ぇな。怜王。俺たち、ちゃんと成り上がったんだな)


 画面の向こうのカノンの姿を見つめながら、過去の自分たちと重ね、静かに感動を噛みしめる流星。

 仲間と共に戦う今、この瞬間に至るまでの全ての経験が、確かな意味を持っていると感じていた。


 ゲームの世界で交わした汗と努力、信頼と友情。それは、学生時代には想像もできなかった、二人の新たな絆だった。


 ――アマテラス討伐から数日後。


 仲間たちが旅立ち、それぞれの戦場へ散っていった世界で、六人になったダークキングは静かに歩みを進めていた。


 黒王、カノン、オニッシュ、ケリー、ザン・シャオ、そしてBROS。


 たった六つ。

 しかし、その歩みは確固たる自信と覚悟に満ちていた。


【黒王】「……行くか。奈落へ」

【カノン】「ああ」


 穏やかな笑顔で返すカノンに、皆が自然と頬を緩めた。その直前、BROSがぽつりと呟いた言葉が胸に残っている。


【BROS】「……奈落も、フルメンバーで最後に行きたかったな」


 寂しげなその声。

 だが、カノンはしっかりと、前を見据えた瞳で返した。


【カノン】「全部クリアしたら楽しみがなくなるだろ?」

【ザン・シャオ】「確かに」


 そして、奈落攻略が始まった。


 第四層・淫魔の古城。

 少し前、総出で挑んで瞬殺された第三層を突破した彼らは、未知の領域に踏み込んでいた。

 石畳には紫煙が漂い、耳元で囁くような魅了の声。精神値を削る罠が次々と襲いかかる。


【ケリー】「くっ、これ魅了ゲージ溜まりますねッ!」

【ザン・シャオ】「だが、六人いれば止められる! 行くぞ!」


 六人は互いを庇い、補い合い、進む。

 数は減っても、連携の鋭さはまったく鈍っていなかった。


 そして層ボス、姦通の妖魔・ゲシュラムダ戦。


 魅了の膜が空間を覆い、攻撃のたびに快楽の幻影が脳を焼く。

 HPも精神値もギリギリ。

 支援は薄れ、攻撃の手も鈍る。


【黒王】「カノンッ! 行け!」

【カノン】「任せろッ!!」


 カノンの斬撃が妖魔の核を貫いた瞬間、淫魔の古城全体が大きく震え、紫煙が晴れた。


 ゲシュラムダ、討伐完了。


 息を切らしながら、六人は石床に腰をつく。


【ケリー】「……倒した……ほんとに六人で……」

【BROS】「俺たち……ホント強いな」


 その言葉に、皆が静かに笑った。


【ザン・シャオ】「人数が減って不安もあったけど、心配いらなかったな」

【黒王】「ああ。六人でも……いや、六人だからこそ強い」


 そして、カノンがゆっくりと立ち上がった。


【カノン】「行こう。私たちはまだまだやれる。伝説は終わらない。六人でも、ちゃんと続いていくんだ」


 奈落の奥へと続く、深い闇へ。


 六人の影が、まるで運命を切り開くように伸びていく。


 どれだけ仲間が散ろうとも。

 どれだけ戦場が変わろうとも。

 魂が同じ方向を向いている限り、ダークキングは決して折れない。


 ――六人は確信した。


 今のダークキングでも、ちゃんと最強だ。

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