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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第二章 ココアの物語

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第十話 斬々抜断からの誘い

 夜。約束の時間に、フローライトのメンバーが次々とログインする。


【そる】「よっしゃー! 今日は素材集めデー!」

【スカイ】「木材いっぱい拾って、倉庫拡張しよ!」

【ココア】「うん、ありがとう! オニッシュさんも来てくれて嬉しい!」


 広場に揃った4人は、ギルド転送装置から“森林エリア第二区”へと向かった。

 夜霧のような靄が立ちこめる森の中。木々の間を縫うように進むと、どこからか鳥の鳴き声が響く。


【ココア】「……やっぱり雰囲気あるなぁ。ここの森」


 ココアが思わずつぶやくと、オニッシュがふと口を開いた。


【オニッシュ】「……ここ、懐かしい」

【ココア】「来たことあるんですか?」

【オニッシュ】「僕がスカイ君と、初めて会った場所です」


 突然の告白に、チャットが静まり返った。


【そる】「え、そうなの!?」

【スカイ】「俺が初めてここに来た時に」

【ココア】「へぇ……! そうだったんだ」


 スカイは少し照れたように笑った。


【スカイ】「まだ俺が始めたばっかで、ゴブリンあいてに死にかけてたら、オニッシュさんが助けてくれて」

【オニッシュ】「運がよかった」


 オニッシュは淡々と答えた。そんな空気のまま、彼らは森の奥へと進んでいく。

 伐採ポイントを見つけるたびにスキルを使い、木材や樹液、たまに出る魔樹の欠片などを拾っていく。


【ココア】「順調だね。あともう少し集めたら帰還しようか」

【そる】「了解っす! ……ん? 誰か来た」


 その時だった。

 視界の奥、霧の向こうから五つの人影が現れた。

 全員が高レベル装備に身を包み、こちらを見てにやりと笑う。


【マルメン】「よう。フローライトの皆さんじゃないか?」


 前に出た男の名前を見た瞬間、ココアの背筋がわずかに強張る。

 斬々抜断…上位に名を連ね、対人戦の強者が集うギルドだ。


【そる】「うわ……マジでキリキリバッタ……」

【スカイ】「なんでここに……」


 ギルドマスターのマルメンが笑う。


【マルメン】「レイドの噂、聞いたぜ? たった4人でクリアしたんだってな。しかも、トッププレイヤーのオニッシュまでいる」


 その声には、敵意というよりも興味がこもっていた。


【マルメン】「もし良けりゃ、うちに来ないか?」


 空気が止まる。

 ココアは思わずチャットを開こうとしたが、言葉が出ない。スカイもそるも、驚いたまま固まっていた。


【マルメン】「オニッシュ、お前ほどの実力なら、すぐ幹部待遇だ。それに、他の3人も悪くない。アクティブ率も高いし、動きも良かった。ウチはどこぞの重課金連合とは違いアクティブ重視だから、伸び代のあるユーザーは歓迎だ!」


 リーダーの視線が一人ひとりをなぞる。その目はまるで、素材を選別する商人のようだった。


【マルメン】「どうだ? 一緒に強くならないか?」


 森の風がざわめく。

 ココアは小さく唇を噛んだ。


(……来た。こうなること、なんとなく予感してた)


 レイドの成功が、嬉しさと同時に新たな波を呼んだ。トップギルドの誘い…

 それは名誉でもあり、分裂の火種でもある。


 オニッシュが、静かに前に出た。

 画面の向こう、彼の瞳がほんのわずかに光る。


【オニッシュ】「悪いが、僕はここに残る」


 短く、しかし確かな言葉だった。オニッシュの言葉に、森の空気が一瞬で静まり返った。

 キリキリバッタの面々が顔を見合わせ、マルメンが小さく笑う。


【マルメン】「そうか、まぁ急だしな。気が向いたらでいい。うちはいつでも歓迎してるぜ、オニッシュ。フローライトのみんなもな」


 軽く手を上げると、彼は踵を返した。

 その背に続いて、他のメンバーたちも森の奥へと歩き去っていく。

 夜霧の向こうに姿が消えるまで、誰も言葉を発せなかった。


【そる】「……な、なんか……すげぇ展開だったな」

【スカイ】「心臓止まるかと思った……」

【ココア】「……でも、断ってくれて、ありがとう。オニッシュさん」

【オニッシュ】「僕は今、こっちの方が居心地いいだけです」


 淡々とした声。だが、ココアはその言葉に少し胸が熱くなった。


 その時、画面右上に通知が表示された。


 〈シャインから個人チャット〉

【シャイン】「突然の勧誘、すいませんでした。マスターは少し強引なところがありますが、悪い人ではないんです。仲間思いが過ぎるだけで」

【ココア】「いえ、気にしてません。こちらこそお気遣いありがとうございます」

【シャイン】「レイドの記録、見ました。あれは本当に見事だった。……もし、いつかギルド同士で共闘する機会があったら、その時はよろしくお願いします」

【ココア】「こちらこそ」


 短いメッセージのやり取り。だがその一文に、ココアは少し救われた気がした。

 マルメンの強引さの裏にも、ちゃんと“熱”がある…それが伝わったから。


 通知が消えると、再び森の音だけが響いた。


【そる】「なぁ、ココア姐さん。素材集め、もうちょい続けようぜ?」

【ココア】「うん。せっかく来たんだもんね」

【スカイ】「俺、木材あと二スタック分ほしい!」

【オニッシュ】「じゃあ、次の伐採ポイントを探そう」


 霧の森を進む4人。

 さっきまでの緊張が、少しずつ熱へと変わっていく。


 強引でも、誠実でも。

 どんな形であれ、彼らは“注目される存在”になっていた。


 そしてココアは思う。

 〈フローライト〉という名が、ただの小さなギルドでは終わらない気がしていた。

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