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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第八章 スペシャルオーダーズの物語

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第四十七話 王の進撃

 戦火の中心で、スカイとオニッシュは向かい合っていた。

 騎士たちの殺気、地響き、血煙。

 そのすべてが一瞬だけ遠ざかる。


【スカイ】「オニッシュさん、もう辞めよう。こんなの、アンタらしくない」


 オニッシュは静かに目を伏せる。

 その声は、どこか震えていた。


【オニッシュ】「ごめん、スカイ君。僕は、今はまだ、戻れないんだ」


 スカイの表情が曇る。


【スカイ】「なんで……」

【オニッシュ】「理由は……言えない。でも」


 血で汚れた巨鎚をぎゅっと握りしめる。


【オニッシュ】「必ず、戻る。フローライトに……みんなのところに。だから、待っててほしい」


 その言葉は、あまりにも弱く、それでも必死だった。


【スカイ】「わかった。信じるよ」


 しかし、その優しい時間は、一瞬で断ち切られる。


【ベディヴィア】「今だッ!!」

【トリスタン】「オニッシュ、覚悟!!」


 隙を見逃すはずがない。

 背後から放たれた二人の渾身の双撃。


 巨鎚を振り返るよりも早く、刃と槍がオニッシュの身体を貫いた。


【オニッシュ】「またね、スカイ君……」

【システム】《オニッシュ 撃破》


 光の粒となってオニッシュが崩れ落ちると、

 スカイは歯を食いしばり、拳を震わせた。


【スカイ】「クソッ……!」


 画面の向こう側。

 紫苑の部屋は、まるで別世界のように静かだった。


 ヘッドセットを外す紫苑に、後ろから冷たい声が落ちる。


「……ど下手くそ。負けたら存在価値ねぇだろ、お前」


 紫苑は息を詰める。

 琉韻は不機嫌そうに部屋を出ていった。


 扉が閉まる音がした瞬間――


「……っ……はぁ……」


 肩の力が抜け、紫苑は小さく安堵の息を漏らす。

 胸の奥の痛みは消えない。だが少なくとも今だけは、静かだった。


 配信画面はまだ点灯している。


「……続けなきゃ。最後まで……みんなの戦いを見届けないと」


 画面には、カノンとスペシャルオーダーズがぶつかり合う凄まじい光景。

 城の外では、ダーキングの精鋭と、因縁を持つ者達の戦い。そして、スカイとシャインたちが隊を立て直し、次の戦いに向かう。


 そのすべてを、紫苑はただ、静かに見つめ続けた。

 心の奥底で一つだけ決めて。


(絶対に……戻る。あの場所に)


 その小さな誓いだけが、紫苑を支えていた。


 カノンの激闘、オニッシュの離脱。

 戦場全体が極限へと傾き始めたその頃。

 もう一つの“頂上決戦”が幕を閉じようとしていた。


【すなっち】「……っ、はぁ……まだ……やれる……!」


 すなっちは限界を越えていた。

 バフ、自己回復、耐性強化、彼が持つすべての支援技術をフル回転させ、黒王の暴風のような攻撃に喰らいつく。


【黒王】「粘るな。だが、そうでなくてはつまらん」


 黒王の漆黒の剣閃は、一撃ごとに地を裂き、風圧だけでも体勢を崩されるほど重い。


 それでも、すなっちは踏みとどまり続けた。


【すなっち】「簡単に折れてたまるかよッ!!」


 バフの光をまとい、渾身のカウンターを叩き込む。

 黒王の胸元に深い傷が走り、黒い血が飛び散った。


【黒王】「良い目だ。だが、ここまでだ」


 黒王の力が、一瞬だけ膨れ上がった。

 世界そのものが沈むような圧。


【すなっち】「…また、俺の負けか」


 次の瞬間、黒王の斬撃がすなっちを薙ぎ払った。


【システム】《すなっち 撃破》


 そのログが流れた瞬間、戦場全体が一瞬で緊張の色に染まる。観戦していたプレイヤー達が騒ぎ始める。


「すなっちが落ちた!?」

「黒王のとこ決着ついたぞ!」

「黒王、次はどこ来るんだよ……」


 だが黒王自身も、さすがにただでは済まなかった。

 肩から黒い血が滴り、地面に落ちるたび煙を上げる。


【黒王】「……見事だった、すなっち。だが、俺はまだ倒れるわけにはいかん」


 黒王はゆっくり大剣を引きずりながら、前線へ向け歩き始める。


 足取りは重い。しかしその存在感は、先ほどよりもむしろ濃く、禍々しく。


 玉座方面で戦うカノンの気配。

 崩れかけの中層ライン。

 乱戦の連続で疲弊した生存者。


 すべてを睥睨するように、黒王は歩みを進める。


 そして、前線へ戻る途中。

 廃墟の瓦礫の影で、数人の気配が目に留まる。


 シャイン、ベディヴィア、トリスタン。

 そして、その中にひときわ異質な緊張をまとって佇むスカイ。


【黒王】「……ほう」


 黒王が足を止めた瞬間、

 空気が凍るように押し潰された。


【シャイン】「…ッ!黒王!!」


 血まみれでなお王者。

 満身創痍でなお絶対。


 黒王は静かに、大剣を肩へ担ぐ。


【黒王】「生き残りか。せめて楽しませてくれよ、英雄たち」


 深い闇が、前線の空気に落ちていく。


 一方、それぞれの因縁を抱えた者たちの戦場でも、決着の刻は迫っていた。


 火柱のような衝撃音。


 鬼朱雀の魔法が深紅の軌跡を描き、とうとう琉韻loveを撃ち抜いた。

 執念、執着、積み重ねた鍛錬。そのすべてを燃やし尽くすような一撃に、琉韻loveは崩れ落ち、光粒となって消えていく。


【琉韻love】「また…届かなかった…」


【システム】《琉韻love 撃破》


【鬼朱雀】「ふぅ、思ったより苦戦しちまったな」


 鬼朱雀は短く吐き捨てると、次の戦場へ足を向けた。


 そして、シンとたっちゃんパパの戦いは、すでに最終局面に突入していた。


 激突するたび剣閃が弾け、互いのHPバーは赤く染まり、もはや風前の灯火。


 だが、どちらも一歩も引かない。


 そこには、勝ち負けだけでは語れない“意地”と“信念”がぶつかり合っていた。


【シン】「これで、終わりだ!!」


 最後の気力を振り絞り、シンが鋭い斬撃を繰り出す。しかしたっちゃんパパは、真正面からそれを受けにいった。


 避けない。防がない。

 ただ一歩踏み込み、己の刃を振り抜く。


【たっちゃんパパ】「玉砕上等ッ!!」


 二つの攻撃が同期するようにぶつかり合い、爆ぜるような衝撃を残して、二人のアバターは同時に四散した。


【システム】《たっちゃんパパ 撃破》

【システム】《シン 撃破》


 ログにその文字が流れた瞬間、戦場全体がざわめきに包まれた。

 互いに一歩も引かず、最後の最後まで、真正面からぶつかり合った結果だった。

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