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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第八章 スペシャルオーダーズの物語

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第四十三話 因縁の渦中

 ヴァルターと狼牙の撃破――

 前線二枚を落とした勢いに、スペシャルオーダーズ全体が一気に沸き立つ。


【ランスロット】「全隊、押し上げっ! この流れで畳み込むぞ!!」


 中央の圧力が増す一方で、

 戦場の裏側では、静かで致命的な殺し合いが始まっていた。


 Dr.D=eath VS マーリン+オルウェン


 黒い霧が、足元からすべり込むように広がる。


【Dr.D=eath】「呼吸、忘れるなよ。最初の一口が、一番キく」


 音もなく、マーリンとオルウェンの背後へ死の霧が伸びた。


【オルウェン】「デバフっ!マーリン、後退して!」

【マーリン】「わかってる!」


 マーリンの杖から青光が走る。

 解除の光が、自身へ付着した黒染みを弾き飛ばした。


【マーリン】「……っ、重い。これ、通常の弱体じゃない……!?」

【オルウェン】「耐性貫通系! 想定してたより危険だぞ!」


 Dr.D=eathの黒霧は、抵抗を無視して侵食する特殊系。王国騎士団クラスの支援でも、完全解除は一瞬遅れる。


【Dr.D=eath】「そう、それでいい。逃げるほど、深く入る」


 黒霧が地面をはね、まるで生き物のようにマーリンの足元へ絡む。


【マーリン】「くっ……ッ!?」

【Dr.D=eath】「一度味わった弱体は抜けない。後でしみるぞ」


 支援のオルウェンが連鎖解除を放ち、

 マーリンは命からがら距離を取る。


 BROS VS アリス


 裏路地の影が揺れた。


【BROS】「後衛一人……優先排除。行く」


 風が裂ける音すら生じない。

 BROSのダガーは、アリスの背に吸い込まれるように迫った。しかし――


【アリス】「……読んでたよ」


 アリスが一歩すべる。

 靴底が地面に触れた瞬間、その身が風に乗るように横へ滑った。


 空を切る暗殺刃。


【BROS】「……消えた?」

【アリス】「これでもウィンドクローバーのギルマスなの、甘く見ないでよね」


 背後を取ったつもりが、空振り。

 逆に、アリスの風矢が視界の縁をかすめる。


【BROS】「対応、速すぎる」


 暗闇の刃 vs 風を踏む技巧派。

 静かで速い、“技術だけのぶつかり合い”が続く。


 ザン・シャオ VS 牙+らいおん


【ザン・シャオ】「じゃ、いきますかね。全部斬るよ?」


 双剣が弾ける。

 一秒に十数発の斬撃が織り上がる手数の暴力。


【牙】「速ぇっ!らいおん、正面頼む!!」

【らいおん】「正面は任せろ!お前は回れ!!」


 牙が円を描くように横へ動き、

 ザン・シャオを揺さぶる。


 しかし、彼の双剣は揺さぶりを読んでいる。

 軌道が一瞬だけ牙へ向けられる。


【牙】「読んできやがる……ッ!」


 その一瞬、

 らいおんの大剣が割って入る。


【らいおん】「おらぁ!!意地見せたらぁ!!」


 手数 × 二人の機動。


 双剣の暴風と、牙とらいおんのギルマスコンビ。

 局所戦としては、これ以上ないほど噛み合っていた。


 各所の小規模戦が白熱していた、その瞬間だった。


 空気が裂けた。


 椿の手に握られた天十握剣が、夜空を薙ぎ払うように振り下ろされる。


【椿】「全部……全部消えてよォ!」


 地面から吹き上がる暴風ではない。

 周囲一帯の空気そのものが、彼女の剣を中心にねじ切られ、敵味方問わず飲み込む破壊の竜巻に変じた。


 黒霧の中で戦っていたDr.D=eathも、風矢を構えていたアリスも、牙と斬り結ぶザン・シャオすら、全員が一気に吹き飛ばされる。


【牙】「うわッな、なんだこれッ!」

【BROS】「視界、奪われッ」


 大地が沈み、空気が爆ぜる。

 そしてその暴風に、もう一つの怪物が反応した。

 椿の竜巻を獲物と判断したように、鬼朱雀の瞳が赤く燃え上がる。


【鬼朱雀】「面白ぇじゃねぇか。燃えろ」


 大地が溶ける音。

 空気が一瞬で灼熱へ跳ね上がる。


 鬼朱雀が両腕を広げ、炎の魔紋を叩きつけた。


【鬼朱雀】「イラプト・インフェルノ!!」


 椿の風竜巻へ、燃え上がる火柱が吸い込まれていく。風が火を巻き上げ、火が風を狂わせる。


 地獄の火炎竜巻が形成された。


 世界が赤く染まり、悲鳴が重なり、戦場の中心が炎の渦に変貌する。


【らいおん】「ちょ、待て待て待てッ!!」

【マーリン】「これ……本気で全滅するやつ!!」


 逃げる暇などない。火と風が縦横無尽に暴れ、あらゆるプレイヤーを呑み込もうと迫る。


 その刹那。火炎竜巻の中心へ、水の奔流が逆流するように噴き上がった。


【Rain】「止まれっ!!」


 Rainが両手を掲げ、水の紋章を解放する。

 轟音と共に、水竜巻が炎へ突き刺さる。


 火炎竜巻と水竜巻が互いを削り合い、そして爆音の後に静寂が訪れた。


 炎の渦は、Rainのアクア・テンペストによって完全に押し潰され、消滅した。


 救われた者たちは地面に崩れ落ちる。


【ケリー】「立って!まだ戦場の真ん中だよ! ヒール・リジェネ!!」

【そる】「範囲回復いくぞッ!!」


 ダークキング側はケリーが、スペシャルオーダーズ側はそるが、同時に回復を展開。


 吹き飛ばされた面々が次々と立ち上がり、戦場に色が戻り始める。

 しかし次の瞬間、ケリーは背後に殺気を感じた。


【ケリー】「嘘…いつの間に……?」

【システム】《ケリー 撃破》


 彼女は虎視眈々と、ダークキングの回復役を狙っていた。


【ココア】「これが私の戦い方なんでね」

【そる】「さすがココア姐さん!!」


 フローライトのギルマスにして、暗殺者の異名を持つココア。そのバックスタブは、数多のプレイヤーに恐怖を与えてきた。


【BROS】「暗殺はアンタの専売特許じゃないぜ」


 同時、そるの背後にBROS。

 だが。


【スカイ】「エルフレイム!」

【BROS】「なっ……!? クソガキ!」


 威力は低いが、暗殺阻止には十分だった。


【そる】「助かったぜスカイ!」

【スカイ】「そるさん倒れたら困るっす!」


【BROS】「雑魚が……調子乗んな!!」


 椿は、Rainだけを射抜くようにその瞳を細めた。


【椿】「……裏切った、裏切った裏切った裏切った」


 呟きが、狂気の縄のようにRainへ絡みつく。


【Rain】「……っ、椿」

【椿】「許さなぃ!!」


 椿の姿が霞のように跳び、Rainへ迫る。

 凶刃がRainを切り裂こうとした刹那ーー

 天十握剣は、大盾に防がれた。


【椿】「邪魔をするな!!」


 椿は剣圧を高めるが、男は逆に椿を押し返した。


【Rain】「助かりました…Whiteさん!」

【White】「俺も椿には、勝ちたいからな」


 椿の暴走に反応し、鬼朱雀が加勢しようと足を踏み出す。


【鬼朱雀】「チッ……なら俺が終わらせる」


 だが、その前に紅の魔炎が降り注ぐ。


【琉韻love】「通さないよ。今日の私は……前とは違う」


 琉韻loveのルビーフレイムが鬼朱雀の進路を遮り、火炎がぶつかり合う。

 前回、完全に圧倒された少女の炎とは思えないほどの密度だった。


【鬼朱雀】「……へぇ。やっとマトモな火力になったじゃねぇか」


 同時に、鬼朱雀と共にいたシンの前へ、静かに影が立つ。


【シン】「どけ。今はお前らに構ってる暇はない」

【たっちゃんパパ】「いや、今日は構ってもらう。俺とアイツの“雪辱戦”だ」


 前回、完膚なきまでに叩き伏せられた二人。

 その片割れ、たっちゃんパパが、今度は堂々と剣を構える。


【たっちゃんパパ】「ダークキング?最強?だからなんだ。今日こそ一発、食らわせてやる」


 背後で、琉韻loveの炎がさらに高く燃え上がる。


【琉韻love】「今日は、絶対に負けない」


 戦場の中心で燃え上がる因縁。


 椿 vs Rain&White

 鬼朱雀 vs 琉韻love

 シン vs たっちゃんパパ


 ただ“残すべき戦い”と“清算すべき感情”が、炎と風と水の中で交錯する。


 戦場はついに本当の乱戦へ突入する。

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