プロローグ 底辺冒険者と、ふとしたキッカケ。
新作です(*'▽')
よろしくお願いいたします。
「あー、またパーティーをクビになったなぁ」
もう何度目か分からない追放に、俺は何も感じなくなっていた。
冒険者稼業を始めてどれくらいになるか、もう計算するのも面倒なほどに続けてきたが、クビになった回数を思い出す方が面倒に感じられる。それほどに日常の一部になった出来事を経て、俺はひとまず帰路についていた。
パーティーに所属していれば、一人でやるよりも効率的に稼ぐことはできる。
ただソロでも地道にやっていれば、食費くらいはどうにかなるのだ。
「その程度の才能しかないから、いつまでも底辺なんだろうなー……」
よく継続は力なり、とか言うけれど。
使えるスキルが地味な【伸縮】だけの無才には、どれほどの時間を要するのか。やることもないので仕方なしにそれを強化し続けて、そろそろ三十年ほどになる。とはいえ、物体を伸び縮みさせる程度のものだ。ほとんど趣味のような自己満足にすぎない。
冷静になれば非効率この上ないのだが、考えないことにしていた。
「さて、と……それじゃあ――――ん?」
ボロボロの自宅に着いたので、明日に備えて寝てしまおう。
そう考えて、大きく伸びをしていた時だった。
「泥棒! だ、誰かその人を止めて!」
暗がりの道の中で、女性がそう悲鳴を上げていたのは。
盗人らしい男は俺の脇をすり抜けて、走り去っていってしまう。周囲には他に助けられる者がいないため、自然と俺が犯人を追いかけることになるのだが――。
「うおおお、足速えぇ……!?」
その盗人は何かしらのスキルを使っているのか、常人では考えられない速度だった。これはもう、一介の冒険者である自分にはどうしようもない。
それこそ『時間を縮める』ような芸当でもできない限りは――。
「え、お……おお?」
そう思った瞬間だった。
俺の中から何かいままでにない、不思議な感覚が湧き上がったのは。
世界の景色が、歪んで見えるような錯覚。いいや、これは周りの動きが緩慢になっているのか。わけが分からないが、これであれば盗人にも追いつけそうだった。
俺は全速力で駆けて、そして――。
「うおりゃああああああああああああああああああ!?」
「ぐへええ!?」
不格好極まりないが、力任せにタックルをかましてやった。
すると盗人は潰れたような声を上げて、その場に倒れ込んで気絶する。俺はそいつから、盗品であろう荷物を奪い返した。そして遅れてやってきた女性に、それを手渡す。
いたく感謝されたのだが、しかし俺の頭の中は先ほどの出来事でいっぱいで。
後日お礼が何やら言われたけど、全然内容が入ってこなかった。
「さっきのは、もしかして……?」
一人になって、冷静に考える。
そして、至った結論は――。
「……時間に、干渉できてた?」
地味なスキルに心血を注いで、強化すること三十年。
俺は今さらながら、物凄い力を手にしたかもしれない、ということだった。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もし少しでもそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより★評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!