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こんなダメな王国など滅んだ方がよろしくてよ!鬼畜王女、追放からの覚醒を経て祖国や元身内にコンボを決める〜王宮の建物は次々と破壊され、宴会場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化し妹は静かに朽ち果て〜

作者: リーシャ

王国の宝石と謳われた第一王女、アリスティア。


絹のような黒髪に、吸い込まれるような紫の瞳を持つ彼女。


その美貌と並外れた知性で、周囲を魅了。


その内実は、常に孤独と冷遇に晒されていた。


呪われた子。


それが、アリスティアに対する家族の評価だ。


生まれた時から微弱な魔力しか持たず、不吉な存在として疎まれてきた。両親である国王夫妻の愛情は、全て、才色兼備な妹。


キャスラインへと注がれていた。


アリスティアにとって、唯一の希望の光は、隣国の王子。


エリオットとの政略結婚。


聡明で穏やかなエリオットは、アリスティアの境遇を理解し、優しく接してくれた。


彼女は、いつか彼と共に、この冷たい王宮から抜け出すことを夢見る。


その淡い期待は、妹キャスラインの悪意によって残酷に打ち砕かれることに。


「姉様は、エリオット様の隣に立つ資格などありませんわ」


キャスラインは、満面の笑みでアリスティアに言い放った。


陰湿な策略によってアリスティアはエリオットを陥れたという濡れ衣を着せられる。


婚約は一方的に破棄された。


そして、国王からの冷酷な宣告が下る。


「アリスティア。お前は王家の恥だ。二度とこの地に足を踏み入れるな」


わずかな荷物と共に、アリスティアは王都から追放された。


「結局、こうなるのか」


向かう先は、魔物が跋扈する辺境の森。絶望と疲労の中。


彼女は意識を失い、冷たい地面に倒れ伏した。


死を覚悟したその瞬間。


脳内に、奔流のような記憶が流れ込んできた。


「うっぐ!」


それは、見知らぬ世界の、見知らぬ自分の記憶──現代日本で、やり込み系の鬼畜ゲームに人生を捧げてきた女子大生。


ホナミとしての記憶だった。


高難易度ゲームをクリアするための戦略。


容赦のないプレイスタイル。


理不尽な状況を、打破するための不屈の精神。


前世の記憶は、アリスティアの中に眠っていた強大な力を呼び覚ました。


「……こんな世界で、このまま終わるなんて!」


アリスティアの瞳に、強い光が宿った。


彼女は、もはやただの悲劇の王女ではない。


前世の記憶を持つ、規格外のサバイバー。


意識を取り戻したアリスティアは、周囲の状況を冷静に分析した。


ここは深い森の中。魔物の気配が濃厚だ。


「なに?」


生き延びるためには、まず身を守る必要がある。


その時、茂みの中から鋭い視線がアリスティアを射抜いた。


「だれ?」


現れたのは、漆黒の毛皮を持つ巨大な狼──ではなく、その狼に変身する能力を持つ、一人の剣士。


獣のような鋭い眼光、鍛え上げられた肉体。


「ほんとに、だれ?」


後に彼の名はカイルと知る。


人間を嫌い、孤独に生きる彼は、アリスティアの毅然とした態度と。


奥底に秘めた強さに興味を抱いた。


「貴様……ただの人間ではないな」


カイルの低い声が、森の静寂を破る。


ただの人間ではないのは、そっちなのでは。


警戒しながらも冷静に答えた。


「私はアリスティア。理不尽な理由で、この地に追放された」


カイルは、アリスティアの言葉の中に、強い憎しみと決意を感じ取った。


彼は、自身の過去と重ね合わせるように、アリスティアに手を差し伸る。


「おれと共に生きるか?この森で、力を蓄え、復讐を果たすために」


アリスティアは、カイルの申し出を受け入れる。


「うん」


その後。


カイルは、アリスティアに剣術と森での生きる術を教え。


アリスティアは、前世の知識と持ち前の知略で、二人の生活をより豊かにしていった。


現代のサバイバル知識。


薬草の知識。


ゲームで培った資源管理のスキル。


この異世界でも驚くほどの効果を発揮した。


アリスティアは、効率的に食料を確保し、安全な住処を作り上げる。


カイルと共に着実に力をつけていった。


(うまくいってよかった)


ゲーマー魂が、静かに燃え上がっていた。


「こんな理不尽な目に遭わされたまま終わるなんて、絶対に許さない。妹も、両親も、腐った王国も……徹底的にやり込めてやる」


アリスティアは、カイルと共に、復讐の計画を練り始めた。


国家転覆に等しい。


前世で数々の高難易度ゲームを攻略してきた彼女にとって、この王国を攻略することは、決して不可能ではなかった。


手始めに情報収集から開始。


アリスティアは、森の動物たちと心を通わせるカイルの力を借りる。


王都の情報を探らせた。


すると、キャスラインが王太子妃として権勢を振るう一方で。


国内は腐敗が進み、民は苦しい生活を強いられているという情報が入ってきた。


「やはり、あの妹はロクなことをしていない。はぁ」


アリスティアの紫の瞳が、冷たい光を宿す。


彼女は、前世で得意とした。


敵の弱点を徹底的に突く戦略を実行に移すことに。


カイルと共に森を出て、王都へと向かった。


その姿は、かつての可憐な王女の面影はなく。


冷酷な美しさと、内に秘めた強大な力を感じさせる。


王都に潜入したアリスティアは、前世の知識を活かし、裏社会の人間と接触した。


巧妙な話術と、時に見せる圧倒的な威圧感。


彼女は瞬く間に情報網を構築していった。


(近寄るのはリスクが高かったけど、得られるものはある)


復讐の時が来た。


王宮の祝宴。


キャスラインが王太子との婚約を祝う華やかな宴の裏で、静かに動き出した。


事前に手に入れた情報と、前世のゲーム知識を駆使し。


王宮内の警備の隙を突き、巧妙に潜入していった。


すぐに見つかるが問題なし。


「ね、姉様……まさか、あなたがこんなところに」


キャスラインは、アリスティアの姿を見て、顔から血の気が引いた。


その美しい顔は、恐怖に歪む。


「キャスライン。貴様の悪行、腐敗した王国の罪を、今ここで全て暴く」


声は、冷徹で、一切の感情を欠いていた。


彼女は、事前に集めた証拠を、宴の参加者たちの前で次々と暴露。


陰湿な策略、不正な蓄財、国民を苦しめる悪政の数々。


「これで、終わり」


「嘘です!」


会場は騒然となり、必死に弁解しようとしたが、用意周到な証拠の前には、全く意味をなさなかった。


「ち、違うのです!お姉様の策略です!」


国王夫妻も、娘の悪行に言葉を失い、愕然とした表情を浮かべていた。


「あなたのせいで!」


キャスラインは最後の抵抗を試みる。


彼女は、隠し持っていた短剣をアリスティアに向け、襲い掛かったのだ。


その瞬間、漆黒の影がアリスティアの前に躍り出た。


「させない」


カイルだ。


「きゃあ!?」


彼の研ぎ澄まされた剣が、キャスラインの短剣を弾き飛ばし、その動きを封じる。


「ぐ!?」


「アリスティアに手を出すな」


カイルの低い声には、絶対的な守護の意志が込められていた。


キャスラインの抵抗はあっけなく終わり、彼女は捕らえられる。


しかし、アリスティアの怒りは、まだ収まらない。


「こんな腐った王国など、滅んでしまえ」


前世の記憶が蘇った時から、アリスティアの中に渦巻いていた破壊衝動が、ついに爆発。


許せないのだ。


彼女は、体内の魔力を解放。


前世でやり込んだ、ゲームの必殺技を次々と繰り出す。


大地が隆起し、炎が舞い上がる。


強風が吹き荒れて。


王宮の建物は次々と破壊され、宴会場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。


「きゃあ!」


規格外の魔力と、前世のゲームスキルが合わさった破壊力は、常識を遥かに超えていた。


「ぐはっ!」


「やめろ!」


「いやぁ!?」


カイルは、そんなアリスティアの傍に寄り添い、彼女の暴走を静かに見守っている。


「うわああああ!」


「きゃー!」


「助けてくれー!」


やがて、アリスティアの激しい怒りは鎮火し、破壊された王宮の跡には、呆然とした人々だけが残された。


「そ、そんな」


「こんなことって」


アリスティアは、全てをやり遂げたという達成感と共に、深い疲労を感じていた。


「もう、こんな場所には二度と戻らない。帰ろっか」


「ああ」


アリスティアは、カイルの手を取り、崩壊した王宮を後にした。


数日後。


アリスティアとカイルは、王国を離れ、二人だけの新しい旅に出た。


「どこ行く?」


「どこでも構わない」


背後には、彼女が文字通り、やり込んだ王国が残されていたが、アリスティアの心には、一片の未練もない。




妹キャスラインサイド


王宮の地下牢は、湿っぽく、じめじめとしていた。


光はほとんど届かず。


鉄格子の隙間から、漏れる微かな光だけが、憔悴した姿をぼんやりと照らしていた。


「こんなはずじゃ」


豪華なドレスは泥と血で汚れ、かつての美しいブロンドの髪は、絡まり、艶を失っていた。


「どうしてこんなことを?」


「だから、誤解なのです」


尋問は連日続いた。


「なぜ、姉君を嵌めたのですか?」


「私は嵌めておりません」


王国の重臣たちは、キャスラインの犯した罪を徹底的に洗い出そうとした。


「どうして、あのようなことを?」


「勘違いしております」


隣国との密約、不正な蓄財、そして姉アリスティアを陥れた数々の陰謀。


「違うのです。全て嵌められたのです!」


キャスラインは、当初は抵抗しようとしたが、次々と暴かれる証拠。


冷酷な追求に、次第に口を閉ざしていった。


「キャスラインを処刑しろっ」


民衆の怒りは凄まじい。


「処刑しろ、処刑しろ!」


贅沢三昧を繰り返し、国を私物化してきたキャスラインに対する憎悪は、想像を遥かに超えていた。


「お前のせいでっ」


彼女が護送される際には、怒号と罵声が飛び交い、腐った野菜や石が投げつけられた。


生臭い匂いはなくならず、ずっと異臭を放つ。


羨望の眼差しを一身に集めていたキャスラインにとって、それは耐え難い屈辱。


「刑が決まりました」


彼女に下された判決は──奴隷としての生涯。


「そんなっ、やり直しをっ」


王族としての身分を剥奪され、自由を奪われ、一人の人間としての尊厳さえも踏みにじられる。


「やめて!離して!」


キャスラインは、鎖に繋がれ、見知らぬ土地へと連れて行かれた。


彼女が売られたのは、辺境の過酷な鉱山。


「私を誰だと思っているの?」


陽光がほとんど届かない坑道の中で、キャスラインは他の奴隷たちと共に、一日中。


重い鉱石を運び続けた。


侍女たちに囲まれ、指一本動かすことのなかった彼女にとって。


想像を絶する重労働。


粗末な食事、劣悪な住環境。


容赦のない鞭打ち。


少しでも作業が遅れれば、すぐに屈辱的な罰が与えられた。


心が折れるのは簡単。


高慢な態度で周囲を見下していたキャスラインは、今や誰にも逆らうことができず、ただひたすら耐え忍ぶしかなかった。


夜になると、他の奴隷たちと肩を寄せ合い、冷たい床で眠る。


明日への希望など、どこにもなかった。


あるのは、終わりの見えない絶望だけ。


そんな過酷な日々の中で、キャスラインは初めて、姉アリスティアの気持ちを理解し始めた。


自分が何の疑いもなく享受してきた生活が、どれほど多くの人々の犠牲の上に成り立っていたのか。


「私は……」


自分が陥れた姉のアリスティアが、どれほどの苦痛を味わってきたのか。


「お姉様……ごめんなさい」


暗闇の中で、キャスラインは何度もそう呟いた。


懺悔の声は、誰にも届かない。


今更なのだ。


届くのは、冷たい風の音と、遠くで響く鉱石を砕く音。


美しい宝石や豪華な装飾品に囲まれていた白魚の指は、今や傷だらけで、泥と鉱石の汚れで黒ずんでいる。


鏡を見ることも許されず、自分の容貌がどのように変わってしまったのか。


想像することしかできなかった。


時折、王宮での華やかな日々を思い出すことがあった。


優しい両親の笑顔、侍女たちの献身的な世話。


姉の静かで優しい眼差し。


あの時、なぜもっと姉に優しくできなかったのだろうか。


なぜ、自分の欲望のために、あんな酷いことをしてしまったのだろうかと。


後悔の念が、心を蝕んでいく。


日増しに深く、重くなっていった。


後悔したところで、過去は決して戻らない。


彼女が犯した罪は、あまりにも大きすぎた。


鉱山での生活は、キャスラインの心身を浪費していった。


体力は限界に達し、精神は疲弊しきっていく。


希望の光は見えず、ただ、一日一日を生き延びるだけで精一杯。


新聞で見たときに父王と母王妃も隠居を迫られていて、時間の問題だと皆は見なしている。


ある日。


キャスラインは高熱を出して倒れた。


粗末な治療など受けられるはずもなく、ただ、冷たい床に放置。


意識が朦朧とする中で、彼女は過去の幻を見た。


優しいアリスティアの笑顔、温かい王宮の庭。


もう二度と戻れない幸福な日々。


「お姉様……許してください……許してください」


最後の言葉。


彼女の意識は、二度と戻ることはなかった。


王国の華として咲き誇った女は誰にも看取られることなく鉱山の片隅で、静かに息を引き取ったのだ。


短い生涯は、傲慢と嫉妬に彩られ、最後は深い後悔と絶望の中で幕を閉じた。


断罪された傲慢な華は、二度と陽の光を浴びることなく。


泥濘の中で無残に朽ち果てた。


死は、誰の心にも響くことなく。


過酷な鉱山の歴史の中に、小さな一つの影として消えていった。

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