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元海軍少尉の受付嬢  作者: 影光
一章 転属
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一息

 暴漢から逃げてしばらく、淹れた紅茶をテーブルに置いて、落ち着いた彼女から事情を聴く。

「私はサクラ・ヨガミと言ってハンターとしてこの都市に来たばかりでして、食料品の買い出しに来たところを襲われそうになりまして…」

「それは大変でしたね」

「はい、貴女に助けてもらわなかったらどうなっていたか…」

 ありえたかもしれない未来を想像して体を小さく震わすサクラに、私は気になったことを尋ねる。

「失礼ながら、ハンターである貴女ならば暴漢程度、簡単に蹴散らせたのでは?」

 人間の何倍も背丈のあるモンスターを相手にするハンターであるはずなのに、暴漢に怯んでいたことを追究する。

「モンスターならいざ知らず、人間を相手にするのは苦手なんです」

「対人戦の訓練は積んでいないんですか?」

「ハンターはあくまでもモンスターの相手をするのが仕事なんです。だから訓練も対モンスター用のものばかりで対人戦は全く…

 それに同じ人間を傷つけるのは…嫌です」

 言われてみれば確かにそうだ。

 私は士官学校で対人戦の訓練を積んでいた上に『実績』があるから暴漢を殴るのにためらいはなかったが、対人戦を想定していないハンターでは同じ人間を攻撃することへの抵抗が強いのだろう。

 紅茶を啜って一息つく。

「それにしても、お強いんですね。武術でも習っていたんですか?」

 空になったカップを置いてサクラがそう口にする。

「少し前まで海軍に所属していました」

「そうだったんですね」

 私の話に俄に彼女の目が煌めく。

「海軍について、詳しく教えていただいても?」

「そうですね。まず、私は第一海軍の第三撃龍艦隊、第二水雷戦隊に少尉として所属していました。

 砲術科長の補佐をする仕事です」

「少尉!?そんな方がどうしてここに…」

「いろいろとありまして…」

 目を背けながら、そう答える。

 さすがに初対面の人に「上官を殴り飛ばして軍法会議の末に除隊になりました」なんて言えない。

 気まずくなる空気をさっさと換えようと、話を変える。

「ところで、今夜はどうしますか?よろしければ家まで送りますが」

「えっと…お願いできますか?」

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