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元海軍少尉の受付嬢  作者: 影光
二章 狩場へ
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ローレンス海岸

 陸軍省がミギナ山地の閉鎖を決定してから3日。

 ミギナ山地の依頼の無効化処理を終えた私達は、ハンターと一緒にバルゲ海に接するローレン海岸に来ていた。

 ロウレン支部から20キロメートル離れた場所に位置するこの海岸とその付近の森林地帯は海軍省の管轄下にあり、海岸エリアにはシーラゲーテに代表される海洋モンスターやカニなどの甲殻類をはじめとする生物が生息。

 森林エリアにはミギナ山地から肥沃な川が流れ込んでおり、淡水や森に生息するモンスターが多数暮らしている他、樹木が砂防林として機能している。

 また、海岸エリアは常駐する艦隊の射程範囲にあり、上級モンスターの出現などの緊急時には信号弾を打ち上げることで艦砲射撃による火力支援を要請できる。


「......」

 構えた双眼鏡越しに、海を眺める。

 白波の立つ水平線の彼方には今回の事態を受けて配備された空母イスカを中心とした第三機動艦隊。

 アララガルの行動に合わせていつでも出撃できるように、艦載機を飛行甲板に駐機させている。

「ティレルさん、準備出来ました」

 声に振り向けば、剛弓を背負った若い青年のハンター。

 オオバサミと呼ばれるカニ型の外来種モンスターの狩猟依頼に闘志を宿らせている。

「狩猟を許可します。ご武運を」

「はい!」

 大きく返事すると、青年は浜辺へ続く斜路を駆け下りながら意気揚々と狩場へと向かう。

 ベースキャンプに響き渡る、大海の波濤の音。

 タイプライターを使って書類仕事を一通り終えると、休憩をとるべくテントの中で静かに本を読む。

 大陸戦記と題された物語。

 今から80年前に起きたアルガーノ大陸を舞台にした戦役が描かれており、開戦から終戦までの5年8ヶ月が当時の記録に基づいて詳細に記されている。

 そういえばこの海岸エリアにそれに関する史跡があったな、と本を閉じて外に出る。

「どこへ行くんですか?」

「少し、見回りをと思いまして」

「そうですか、お気をつけて」

 カレンに適当なことを言ってごまかすと、にわかに強くなった海風に私の髪をなびかせながら、ベースキャンプ近くの断崖へと向かう。

『戦没者群霊塔』と書かれた古びた黒い石碑。

 曰く、当時のランデル国軍が捕らえた124名の捕虜をここから海に落としてモンスターの生餌にしたという記録が当時の海軍大将であるランペール・フォレガスの名前とともに刻まれている。

 戦争は、残酷だ。

 人としての尊厳はすべて失われ、国民は男女問わずに国家のための駒としてあらゆる任務に従事させられた。

 偵察に陣地確保に砲弾の製造に負傷兵の救護、そして敵兵の殺害…

 もちろん休日なんてなく、どこからともなく飛んでくる砲弾におびえる毎日。

 兵の中にはいつ来るかわからない死への恐怖と命を奪う罪悪感に苛まれ、自決したものも多く、生き残った者も戦争のストレスや罪悪感に苦しんだ。

 虐殺を命じたランペール大将もその一人であり、この塔を建てた後でここから身を投げたという。

 終戦から70余年、アルガーノ戦役は歴史の一ページになりつつあるが、それでも戦争の傷跡は各地に残ったままだ。

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