緊急事態
「以上が、報告であります」
ベルファスクにある陸軍省。
首都に属するミギナ山地で目撃されたアララガルの調査報告書が陸軍大臣であるスレイマンに提出される。
「『調査の結果、ミギナ山地の山頂にアララガルの巣を確認』か」
一対の髭を揺らしながら、スレイマンは眉間にしわを寄せる。
飛空竜種は空を飛ぶことで地形を無視して広範囲に移動することが可能であり、いつ首都に襲来してもおかしくない。
もしそうなってしまえば、おびただしい人命が失われるだろう
「閣下、これは由々しき事態です。至急、爆撃隊の編成を!」
航空戦力でモンスターを爆撃し、一気に討伐する作戦を提案する部下。
陸軍相の権力であれば、一声で陸軍の保有する爆撃隊を飛び立たせることができる。
しかし、スレイマンはこの提案に難色を示す。
「爆撃を行えば、ミギナ山地の希少な動植物が確実に失われる。
それを行うのは…」
「アララガルを放置すれば、どのみち動植物が死滅します!」
爆撃を躊躇するスレイマンに対して、配下の将官は力強い声で言葉を放つ。
「…分かった。
だが、アララガルを爆撃をするにしても問題がある。
奴の巣は洞窟にあると記されている。
寝込みを襲うにしても、洞窟の天井が邪魔になる。
一応、貫徹爆弾があるが、目標を直視せずに投下しても命中は期待できない」
「であれば、屋外に誘導するのはどうかと。例えば、洞窟からアララガルを追い出して…」
「誰がどうやってやるんだ?」
街を滅ぼす力を持った上級モンスターの追い出し。
洞窟に毒ガスを投げ込むという手もあるが、代償としてミギナ山地を死の山に変えてしまう上に、仮に追い出せたとしても空を飛んで逃げるのは明白。
「…いったん様子を見よう。報告書を読む限り、奴はミギナ山地に来たばかりだ。
奴がここに定着して山地の支配を広げれば、縄張りを荒らす形で奴を誘い出せる」
「ですが、その間は…」
「山地は閉鎖することになる。
また、非常事態に備えて戦闘機を多めに配置するほか、空母を海軍に用意させる。
無論、最終目標はアララガルの討伐だ。
首都の危機だ、目的を果たすためにあらゆる手段を用意しろ」




