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元海軍少尉の受付嬢  作者: 影光
二章 狩場へ
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忘れ物

「討伐の証拠を確認しました、依頼達成です」

 狩猟終わりのベースキャンプ。

 討伐の証として切り取られた牙を確認した後、筆を走らせて狩猟証明書を発行。

 同時に作業着に着替えた兵士が大型トラックを運転して、モンスターの回収に向かう。

 力強い走行音と共に坂道をかけ下る車両。

 基本的に狩猟したモンスターは解体してトラックに乗せて運び、最寄りの基地でギルドのトラックに乗せ換えて搬送する。

「それでは、私はこれで失礼しますね」

 装備に付いた返り血を布で拭いたサクラが私とカレンに挨拶、軍用トラックに乗って帰還する。

 ザーザーと響く滝の音。

 1時間半程してランドファングを載せたトラックが戻ってくる。

 大きな猪がまるごと荷台に載っている姿は圧巻である。

「これ、お願いします」

 防毒加工のされた専用の布でくるんだ牙を兵士と協力して荷台に乗せる。

 ロープで固定された毒猪を載せた車両はそのまま山道を下り、基地へと運ばれてゆく。

 サクラのクエストが終わったことを備え付けの電信装置で軍部を通してギルドに連絡。

 ≪了解≫の返信が届く。

 これでサクラのクエストの手続きは終了だ。

「ふう」

 長線と短線の組み合わせの電信のパターンが書かれた紙を置き、一息つく。

 電信装置は士官学校で触れて以来だったので少しおぼつかなかったが、無事に送信することができた。

「お疲れ様です、ティレルさん」

 先輩であるはずのカレンが敬語で労う。

 ハンターズギルドに来てから1か月が経つ。

 カレンをはじめ、職員達とは休憩時間中に会話するが、後輩であるはずの私に対していまだに敬語で話しかけてくる。

 士官学校や海軍では高級士官の娘とはいえ先輩や教官からは呼び捨てだったし、アイリーンが年下のシャークから顔面を容赦なく殴られたりもしていた。

 鼻血を垂れ流しながらシャークに対して敬礼する彼女の光景は不気味で狂気的だった。


「ティレルさん、これ…」

 不穏な声色でカレンが1枚の紙を見せる。

 狩猟罠の設置記録。

 仕掛けた場所や解除の有無を記したもので、狩猟を終えたら安全のためにすべて無力化するのがルールとなっている。

「用紙を見る限り、1つ、残っていますね」

 そこに記されていたのは前のハンターが仕掛けた対竜地雷の位置。

 仕掛けられた3つの地雷のうち、無力化を示すバツ印が2つしかない。

「解除、お願いできますか?」

「任せてくださいであります」

 地雷の設置記録用紙を手に、手榴弾をポーチに入れる。

 キャンプには陸軍兵士が5人いるが、罠一つを破壊するためにベースキャンプの守りを疎かにしてはいけないと思い、拳銃を携行して単身で現地に向かう。

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