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元海軍少尉の受付嬢  作者: 影光
二章 狩場へ
19/21

討伐

 ミギナ山地にある湿地帯。

 料亭で提供される高級な食用キノコから一口で死に至る猛毒のキノコまで、多種多様なキノコが群生するジメジメしたエリアをランドファングが群れを成して闊歩する。

 全長五メートルを超える体躯。

 警戒色の派手な赤色の毛を揺らしながら、フゴフゴと鼻を利かせて毒キノコを探る。

「ブヒ、ブヒ」

 大人でも人間が一口かじれば死に至る猛毒のホムラダケの群生地を嗅ぎつけたランドファング。

 子分であるファングたちに知らせ、先行させる。

 先に餌を食べさせようとする群れの主としての優しさではなく、子分を使って思わぬ危険がないかを調べる。

 討伐依頼を受けたハンターがランドファングの群れを一気に打倒しようとして毒キノコの群生地に狩猟罠を仕掛けることがよくあり、それを警戒して探らせる。

「ブービヒ!」

 案の定と言うべきか、狩猟罠が仕掛けられており子分の示した場所を迂回して真っ先に餌を食べる。

「ブッ」

 仕掛けた者に対する煽りに地雷の上に大きめの糞を垂れる。

 狩猟罠の多くは人間に作動しないように開発されており、数百kgのモンスター相応の重量を感知しないと作動しない。

 

「ばれちゃったか…」

 仕掛けた狩猟罠に糞をされた様子を双眼鏡で眺めながら、サクラがため息をつく。

 足元には仕掛けた罠の位置を記した地図。

 後で回収する為に仕掛けた場所を記載している。

「子分の数は10頭か。

 使いたくないけど、これで数を減らすしかないか」

 支給された重機関銃を組み立てるサクラ。

 キノコ類を食べるファングたちを高台から見下ろしながら、重機関銃の三脚を開いて重心を固定し、弾薬箱から延ばした弾帯を装填。

 耳栓をして、射撃姿勢のままゆっくりと照準を合わせて引き金を引く。

 刹那に響く轟音。

 ギャガガガガという音と共に、無数の銃弾がファングたちの体をズタズタに引き裂く。

「ブッ―――」

「ブビャ」

「ブヒィィィィィ!!!」

 響く断末魔。

 無慈悲な死の暴風に砕ける子分を見たランドファングが残った部下を見捨てて逃走。

 銃弾の飛んで来ない洞窟にせっせと身を隠す。

「これで弾切れか」

 支給された100発分を撃ち切ると耳栓を外し、機関銃を片付ける。

「耳栓、ちゃんとつけたはずなんだけどな」

 耳栓の質が悪いのか、それを貫徹するほどに銃声が大きのか。

 いまだに銃声が鳴り続けている様な感覚に襲われる自分の耳を少し心配しながら、防毒マスクをつけて坂を駆け降りる。

 多量の水分を含んでぬかるんだ地面。

 武器や防具を装備した自身の体重は非常に重く、足跡が一歩一歩くっきりと残る。

「ブッビ...」

「ブビビ...」

「フゴフゴ...」

 痛みに悶えるファング達。

 ホムラタケの毒素の含んだ血液が水溜まりに流れている。

 虫の息のファングを一頭一頭しっかりと太刀でとどめを刺して、ターゲットの足跡を調べて逃げた先を確認。

「まずは罠を破壊してと」

 立派な糞が乗った麻酔罠を支給された手榴弾で爆破すると、大きなヒヅメの足跡を頼りにターゲットを追いかける。

「ブッブッ」

 洞窟に響くランドファングの鳴き声。

 子分を失った怒りに鼻息をふんすふんすと荒くする。

「いたいた」

 目標を見つけて太刀を抜いたサクラ。

 美しい波紋のついた白色の刀身を外気に晒し、目の前のモンスターとサシで対峙する。

「ブヒィィィィ!!!」

「群れをやったのはお前か!」と言わんばかりの怒声とともに突進。

 猛毒を含んだ双牙をサクラの体に突き立てようと、怒りに任せた猛スピードで突撃する。

「狙い通り!」

 突進をかわすサクラ。

 ランドファングは急停止するが、その隙を狙ったサクラの一太刀が無防備な大きなお尻に浴びせられる。

「ブビャァァァァ」

 激痛に喘ぐランドファング。

 二撃三撃と連撃が続く。

 筋肉質で硬い肉体ではあるが、対モンスター用に鍛えられた刃を防ぐことは出来ず、真っ直ぐに伸びた 大きな切り傷が体に刻まれる。

 激痛に悶えながらも体を素早く反転させてじたばた抵抗、サクラが距離を取ったのを確認すると、再び突進する。

 ホムラタケの毒素が分泌された牙。

 かすっただけでも致命傷になる、ランスのように大きく鋭い牙を突き立てようと、残りの力を振り絞って駆ける。

 ドーンと響く衝突音。

 洞窟の岩壁に根元まで突き刺さった牙を抜こうともがくランドファングに、攻撃をかわしたサクラはトドメの一撃を喰らわせる。

 ドスッと深々と突き刺さる刃。

 鼓動する心臓に切っ先が当たり、生命活動が停止する。

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