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なろうモノ嫌いの異世界記  作者: 不連続がと
なろうモノ嫌いの異世界記2

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4話 アキさん

「さぁ、始めようか。1本目……、だ。」


 アキは、両手をぱん、と叩くと同時に、アキのマナが両方の拳に集中する。紅のオーラが、何かの形へと収束していく。


(……っ、しまった、強化魔法(バフ)か!)


 オンもすかさず反応する。頭をフル回転させ、一瞬で自らの手札を整理する。



(僕に打てる手は……。)



[火の弾]:火属性のエネルギー球、基本の魔法。

[地の盾]:地属性の盾で相手の攻撃を防ぐ

[地の駆動]:地面を、マナの力で高速で駆動させる

[大地の球]:地属性の大きな球を生成する

[地の強化]:地属性のマナにより、魔力と身体能力を強化する


主人(マスター)の得た、この魔法が僕の選べるカード……、この状況で、相手に追従するには……!)


「[地の強化]!」



アキに追い掛ける形で、オンも自らを強化する。


「ほう……では、この[紅葉の手]、受けてもらおう。」


 アキの魔法は、既に、彼の両手を包む武器として、成していた。


 [紅葉の手]。まるで、ボクシンググローブの如く、半透明の紅のオーラが、アキのそれぞれの拳を包み込んでいる。



「行くぞ。」



 アキが、真っすぐ、オンに向かって走り込み、突っ込んでくる。


(まずは、受ける!それから、反撃の一手を……!)


「[地の盾]!」


 オンの目の前に、地属性を纏った、土の盾が生成される。[地の強化]を載せた、[地の盾]。



(初手で出遅れたにしても、合格点、上々の反応……。)



 そのオンの考えは、手応え、論拠に基づいており、少なくとも、慢心などでは無かったと言える。だが。



 アキは、[地の盾]へと走りながらも、大きく、右腕を振り被る。そして、フッ、と全力を込めるための呼吸とともに、右の拳を盾に向かって振り抜いた。


 

 バキッッ!ドス、ドスンッ……



「……、はぁ!?」



 いとも簡単に、[地の盾]が破られる。情けなく、真っ二つに割れた盾は、そのまま地面に倒れ、音と共に横たわった。


 空気が、ぴん、と張り詰める。


 アキの声が、オンの耳に響いた。



「さて、1本目は終わりだ。ここから……積み上げろ。」



 アキは、足を止めると、もう一度右腕を引き、オンへと、紅く輝く拳を食らわせた。


 オンは、大きく、大きく、遠くへ、遠くへ。まるで球技のボールの如く、吹っ飛ばされた。




――ズザァァ……。




背中から落ち、地面を滑る。確かに、痛みこそ無かった――。だが、オンは、自らの不足を知るには、十分過ぎるほどの衝撃を受けることとなった。


ちょうど、仰向けに寝っ転がる形になったオンの眼には、青い空だけが映っていた。




「さて。」



 そこへ、理性と調和の天使(キョウザメエル)が、オンの上から顔を覗き込む。




「修行パート、ということで。」


「どうか、効率よく、頭を使って鍛錬して頂き、()()()()を退屈させないよう、お願いしますよ。」



オンは、ニヤリと笑って起き上がる。


「あぁ、善処するよ……!」


そして、オンは、アキの元へと駆け出した。


(やるべきことは、苦しむのでは無く、楽しみながらやらなくてはならない……。例えどんなに実力が足りなかったとしても……。僕だって、ギムズの名前を背負っているのだから。)



 笑顔で駆け出すオンの背中を、天使は、微笑み、手を振りながら、見送っていた。


◇◇◇


「……。戻ってきたか。」


 アキは、オンが帰ってきたのを確認してから、手合わせ開始の位置へと戻って行った。



「アキさん!質問!」



 アキが位置につくと同時、『二本目』に行く前の隙をついて、オンは元気よく手を挙げた。


「さっきの打撃、明らかに、威力がおかしかったと思う!タネと仕掛けを聞きたい!」


アキは、静かに反応する。


「……そう簡単に、教えるとでも?」



「わからない!だけど、もうなりふり構ってる場合じゃないんだ。アキさん、さっきの一撃で目が覚めたよ。ここからは、少しでも可能性があるなら、取りに行く!」



ポタル・ギムズが宿ったかのような、オンの必死かつ全力な姿に、アキはフフッと笑った。


「……その貪欲さ、良し。」


アキは、魔法の相性について説明を始めた。



魔法の基本属性は、七つある。


まずは、(やみ)(ひかり)


この二つは、相反する存在で、互いが互いの弱点となっている。



それ以外には、()(みず)(かみなり)()(もく)


これらは五すくみとなっており、火は水に弱く、水は雷に弱く――、と続く。と。




(なるほど……主人(マスター)は、あくまでポタ姉のサポートに徹する戦い方だったから、弱点が明確になることはなかったけれど……。)


主体(メイン)で戦わなくてはいけない僕の場合、手段も身体(マナ)も地属性の魔法に偏っているせいで、弱点が(あらわ)になってしまったんだ……。)



 オンは、[地の盾]が割られたときのことを振り返る。しかし、アキの声で、その思考は遮断された。



「さて……、お気づきの通り、[紅葉の手]は、木属性の強化魔法(バフ)だ。それを踏まえて、行くぞ。二本目。」


 アキは、両手をぱちんと合わせて、鳴らした。


先程と同じように、アキの両手に紅葉型のボクシンググローブが形成される。



(ならば……!あっちの弱点の、[火の弾]!)



オンは左手で鉄砲を形づくると、炎のエネルギー弾を発射した。しかし、アキは、魔法を解くこともないまま、難なくそれを躱して見せた。



(魔法としての威力不足か……!)



準備が出来たアキが、再び走ってオンに迫る。



「二度同じ手は通せない……![地の駆動]!」



オンは、とにかくアキから距離を取り、『逃げ』に徹した。隙が無いか、あるいは、距離を取った時のアキの打ち手は何か、を探るべく、粘る選択をする。


 

「遠いか……[落葉(らくよう)]。」



距離を取られたアキは、攻撃手段を、遠距離用の魔法へとシフトした。マナで生成された数枚の紅葉(もみじ)の葉が、アキの周りを舞い、それらが誘導弾の如くオンに迫る。



「飛び道具の威力なら、まだなんとか……![地の盾]!」



[地の盾]が、アキの弾を弾く。


 アキは、再度、接近戦を狙って、オンに駆け寄る。オンは、そこから距離を取るため、[地の駆動]で、逃げる。距離を取られれば、アキはまたも遠距離攻撃に切り替え、オンはそれを[地の盾]で弾く。


 その攻防が、しばらく繰り返される。


(逃げることで、維持は出来ているけど、反撃の手段が足りない……。どうすれば……!)



そこで、ふと、オンに疑問が沸き起こった。



(待て……。逆、だ……。あっちは、なぜ、次の手を打ってこない……?)


(アキさんの目的は『育成』だ。だとしたら、なんのために、しつこく、木属性の攻撃で、地属性の弱点を狙い続けてくる……?)


(状況は膠着しているのに……?)



「……!」



オンの頭に、一つの答えが浮かび上がる。


全身に流れるマナが、呼応して、どくりと鳴る。



(「まずは、闇と光。」「火・水・雷・地・木」……そういうことか……!)


(だけど……自分に出来るのか……?いや、やるしかない!)



 気づけば、日は落ち、既に辺りは闇に染まっていた。 空に浮かぶ半月には、薄く、雲が掛かっていた。


◇◇◇


「アドバイスするなら……だ。オン、物事は常に複眼で見るんだ。」


「高く見える壁も、横から見れば、意外と薄いかもしれない。」


 アキのその言葉で、オンは自分の判断に確信を得た。


[地の駆動]で、アキからめいいっぱい距離を取る。



「アキさん、ありがとう。気付けたよ……!」



(そうだ、属性の相性の紹介で、闇属性を真っ先に紹介したのは、闇属性の変化型、「蝕」属性を使うことを示唆していたんだ。)


(それから、頑なに、木属性で攻めてきていたのは、地属性一本の僕の行動を抑制し、その示唆に気付かせるため。)



「勇者の英雄譚に、鍛えた(むしば)みの力で立ち向かう――、これは、そのための鍛錬だったんだ……!」 



オンは、夜空に、高く右腕を掲げた。蝕のマナが、右手に宿り、黒く濁った光と共に、球を成す。



(あの時、魔王フギリが、ポタ姉の召喚獣を滅した黒い光の波動……一発で、真似出来るかどうかは分からないけど!……)



「貫け!……[蝕の加農砲(カノンほう)!]」



オンが右腕を振り下ろすと同時に、アキに向かって光の大砲が放たれる。


ギュリギュリ……ドガァン――!



弾は、アキが()()()()の、その場所の後方の樹木に命中し、爆発した。


よし、撃てた!とオンが喜んだのも束の間。



アキは、()()()()()()()()




「「――秋風に、たなびく雲の、絶え間より――。」」




「「もれいずる、月の影のさやけさ――。」」




闇夜に、女性の声が響く。




「「月の如く輝く、若者。頑張る姿は、実に美しいね。」」




 アキがいたはずの場所から、遥か上、月を背にした上空に――、全てを紅葉(もみじ)で紡がれた軍服が宙に浮いていた。まるで透明人間のような姿の、その頭の部分には、見覚えのある、アキの紅の帽子が被さっている。



 オンは、その声の正体を知っていた。



「……リトル・ウィンター!?」



「「やぁ、いい月夜だね、オン。」」


「「紹介しておこうか。これは、アキの、使い魔としてのもう一つの姿、精霊・千秋楽(せんしゅうらく)。」」



「「ここからは、アキから、私に交代だよ。アキは、自分のことを伯父(おじ)さんと言っていたから……。そうだね、さしづめ私からは、おばあちゃんのプレゼントだと思ってもらおうかな。」」



 紅葉の精霊が、宙から、地上に舞い降りる。葉で出来た右袖をぐっと前に出して、オンへとアピールした。



「「私も、アキみたいに、ひとつ、なぞなぞを出しておくね。」」


「「オン、月は、とても綺麗だけど――。キミはね、()()()()()()()()()()()()()んだ。」」



「「さぁ、これが解ければ合格印だよ。……始めよう!」」



 オンが、再度戦闘態勢に入り、身構えた。



ビュオン――!



(突風――!?)



 オンが、そう勘違いするほどの速さで、アキが宙を舞い、迫る。



(やれやれ、年配の親戚って言うのは……。若者がいくらでも食べられると思っているんだから、全く……!)



 力の差を見せられ続け、なお、オン・オワリ・ギムズはこの時間を楽しんでいた。

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