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なろうモノ嫌いの異世界記  作者: 不連続がと
サイドストーリー:召喚屋ポタルの大会記

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25/28

Ex8話 準決勝第一試合!

 ――王都オルタナピア、ホテル内のレストラン。


「おつかれさまー!いやぁ、勝ったねぇ!よかったよかった!」


 ポタルが、上機嫌に夕食を楽しんでいる。

 大会の日程は、一回戦、準決勝、決勝と、一日ずつ進むため、サジとポタル、そしてオンは2泊3日の計画で王都に滞在していた。

 イニシアの召喚屋ギムズには、『召喚獣大会参加のため臨時休業』の札が掛かっている。


「おー、おめでとう。」


 サジも軽く拍手して見せる。


「ありがとうありがとう。ふふん。どう、どう?」


 得意げにポタルが胸を張っている。だが、その後すぐに表情を切り替えると、翌日の話題へと移る。


「明日の相手は、ゲンキ・パープルオーガさんだね。あの人の一回戦、けっこう衝撃だったよねぇ。」

「そうだな。っていうか、俺には全試合が衝撃の連続だったけどな。特に最後のクイダさん。」

「ね、サジ。これまでに何試合かさ、試合の展開予想とかしてたじゃない?だからさ、明日のわたしの試合も、展開予想、したい?わたしの作戦、教えてあげよっか。」


 ポタルが、『観光用』に、サービスの提案をしてくれる。


「ほら、身内に教えたって、減るもんじゃないし。」


 サジは、しばらくの間うーんと腕を組んで悩むと、一言。


「いや、減る……な。うん、減る。やめておこう。」


 ポタルの意外そうな表情を受けて、さらにサジは付け加えた。


「美味しいものは、色んな食べ方をしたい……、」


 そう言うと、サジは皿に残ったソースを最後のひと切れのハンバーグに絡めて口に運ぶ。


「今回に関しては、最後までワクワクして味わってみよう、と──。まぁ、そんなとこかな。」


 ◇◇◇


 ――翌日、競技場。


 競技場には、ゲンキ・パープルオーガと、ポタル・ギムズが、相対して、試合の開始を待つ段階にあった。

 残る四強のうち、ゲンキ、ポタル、ダーウェイ、クイダの誰が優勝するのか。

 会場のボルテージが、高まりつつあった。


 先攻、競技場東側に位置するポタルが、詠唱する。


「[サモンド・ビースト―ブルースカイ・ランサークン!]」


 天から光が舞い降り、召喚獣が現れる。

 メタリックライトブルーの鎧に身を包み、大きな槍を携えた女騎士。柔らかなブロンドが、風になびく。


 後攻のゲンキは、先程の試合と同様に、巨大な召喚獣[シマオニ]を召喚した。観客ですら恐ろしく感じるほどの、大きさの暴力が、威圧感を放つ。


 ――試合、開始。


 ◇◇◇


 幻鬼(ゲンキ)紫鬼(パープルオーガ)鬼人(オーガ)種族の召喚術士。

 鬼人(オーガ)種族の中でも、紫色を冠する彼らの一族は、自らを誇りと高貴さを併せ持つ血族と自負し、種族の発展に尽くしてきた。

 彼が、王都ランクを持たないため多額の参加費が必要、という不利な条件な下でもこの大会に挑んだ理由は一つ、鬼人(オーガ)種族の術士の実力をアピールするためである。


 鬼と言う種族に対しては、彼の体躯が表すように、世間的にその筋力・暴力については高い評価があった。

 しかし、彼ら紫鬼(パープルオーガ)種族は、それだけでは、種族のそう遠くない未来に行き詰まりが起こる、と考え、積極的に魔術、その中でも召喚術を身に着けてきた。

 そして、他の種族よりも経験が浅く不慣れである分、その差を埋めるため、ルールの範囲ギリギリの、召喚術士自体を狙うような、「鬼らしい」喧嘩術や、他にも”トリック”を活用しているのである。


 ◇◇◇


 一方、ポタル・ギムズ。彼女が召喚した[ブルースカイ・ランサークン]は、彼女が開発した中で、現時点では最高傑作の召喚獣である。

 特徴として、青空のエネルギーをマナとして活用出来る機能を持っており、そのため、日中の晴天下でなくては使えないという大きな制約がある。だが、その欠点を持ってなお、彼女の召喚獣の中では最強と呼べる性能を持っていた。


 そして、ポタルは、ゲンキのトリックを、半ば見抜いていた。

 それは、「ゲンキの召喚獣は、それ自体がフェイクである」ということである。


 あれだけ大きな召喚獣や、ギラギラを一発で怖気づかせた圧倒的な破壊力に”見える”トゲの攻撃。あれらは、常識的なマナ容量やマナ出力で可能な芸当ではない。とすると、考えられる可能性は二つ。


 ①ゲンキは、圧倒的な、稀代の、「超」がつく天才召喚術士である。

 ②召喚獣や攻撃そのものが、幻術のようなものでサイズを盛っている。


 だが、ポタルは①の可能性はかなり低いと踏んでいた。


 なぜなら、

 ・圧倒的な天才であれば、そもそも異国の大会にわざわざ出場してアピールする理由がない。

 ・キンネコを吹っ飛ばした際の棍棒のスイングによるヒットが、最も威力のある先端近くでなく、根本であった


 この2つの点から、ポタルは、自身の持つ最強の召喚獣で、小細工無しの真っ向勝負を挑むと決めたのである。

 だが、[シマオニ]の圧倒的な大きさは、ポタルの心を揺さぶった。ポタルの思考が巡る。


(もしも、昨日、この作戦をサジに言ってたら……、サジはなんて言ったかな)


 想像のサジの声が聞こえる。


『じゃあ、もしも、答えが①で、アイツの実力が、全部規格外の本物だったらどうするんだ?』


(そうしたら、わたしは、たぶん)


『そのときは、潔く散るしかないね。――だからこそ、後悔しないように、全力で、挑んでくるよ。』


 そんな、「起こらなかった」過去に思いを巡らせながら。

 ポタルと、女騎士の鬼退治が始まるのだった。


 ◇◇◇


 [シマオニ]が、ギラギラとの試合の攻撃と同じように、召喚獣ごとポタル本人を狙っているであろう、地面から突き出るトゲの攻撃を仕掛ける。

 大きく振りかぶった棍棒で、競技場を叩きつけると、トゲがポタルに向かって連続で生成されていく。


  [ブルースカイ・ランサークン]は、その攻撃を避け――、ることなく、槍を構えてトゲに向かって真っ直ぐ突撃した。

 地面から生える大きなトゲの連鎖は、――観客から見れば意外にも――脆く、槍と鎧によってへし折られる。槍を構えたまま、女騎士は、巨大な鬼に向かって突進し、そして。


(トゲはハリボテだった。)


(だけど、次に狙うのは、ハリボテじゃない、実体の部分。ここを逃すと、相手に時間を与えてしまう。)


(幻じゃない、実体があるのは、少なくとも、あの場所……!)


 大きくジャンプし、[シマオニ]が棍棒を握る右手を槍で狙う。


 ――ズドンッ!


 槍が[シマオニ]の右手を貫くと、風船のように、破裂し、消えた。


 威圧感と緊張感に押され、息を切らせるポタル。


 その姿をちらりと見ながら、ゲンキが、小さく呟く。

「ここまで、か……。見抜いた?否、腹を括ったか。……大した胆力だ。」


 クイダの試合に勝るとも劣らぬ速攻。


 ポタル・ギムズ、勝利。

 決勝戦、進出――。

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