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なろうモノ嫌いの異世界記  作者: 不連続がと
サイドストーリー:召喚屋ポタルの大会記

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Ex6話 一回戦第三試合、ダーウェイVSラエ!

 ――王都オルタナピア、競技場近くの食堂。

 サジとポタルは、大会の昼休憩の時間に合わせ、食事をとっていた。


「次の試合……ダーウェイ・ケンリス。コレによると……今回の大会の本命。で……、ポタルとは同級生?そうなのか?」


 サジは、『異世界人でもわかる王国と王都』を買ったときの、風で飛ばされなかった方のチラシを見て、尋ねた。


「うん、そうだよ」


「ダーウェイ・ケンリスくん……ね。ウチのお店よりもすっっっごく大手の召喚屋のプリンスで……。うん、同級生だったよ。」


「お互い、境遇から全く意識してなかった訳じゃないと思うけど……。直接話したことは、ほとんどなかったんだよね。」


 ポタルは、左上の遠くの方をぼんやりと眺めながら、答えた。


「ふーん。ま、そんな距離感の同級生っているよな、わかるわかる。」


 サジは軽く頷き、続けた。


「じゃあ、もう一個聞かせてくれ。……次の試合、勝つのはどっちなんだ?」


「この試合はね。」

 一呼吸置いて、ポタルははっきり言った。


「ほぼ、ダーウェイくんが、勝つね。」



 ◇◇◇


 ――競技場、バックスタンドの観客席。


「というのが召喚屋の見解らしいんですけど、剣士側だとどんな見解ですか?」


 試合開始直前。サジは、再度合流したロゼに尋ねた。

 競技場には、時間よりも相当早く、長髪で身長の高い剣士、ラエ・チバが入場していた。


「そうですね……召喚屋さんの見解に、私も同感ですが」


 そう言いつつ、ロゼは微笑を浮かべて続ける。


「ただ、ラエの剣術は伝説的です。もしも、召喚獣と本人をすり替えて、”本人”が戦ったら、ラエが勝つでしょうね」


 その瞬間。


「成る程。それは、極めてまずい。」


 突然、背後から声が響いた。

 振り返ったサジたちの目の前にいたのは──


 競技場に立っているのと瓜二つの、ラエ・チバその人だった。


「私を高く評価して頂けるのは大変光栄ですが、そんな疑念を抱かせるのは非常にまずい。召喚獣には、今回だけ、区別のための色塗りでもしておきましょうかね。」


 そう言い残すと、観客席に現れたラエはすっと消滅した。


「なにあれ、召喚獣?」「本人が聞こえてたってこと?地獄耳?」

 アーチとマーチが慌てて囁く。


「おい、ヤバすぎるだろあれ。」


 サジは鳥肌が立っていた。



「ね、すごいよね。王都が誇るSランクの剣士だから。」

「競技じゃない場所だったら、正直、直接戦いたくはないよね。そんなことになったら、わたしでも、ギム様にお祈りしながら全力で逃げるしかないよ。」



 ポタルも、サジから見れば呑気なことを言っていたが、少し真剣な眼差しに切り替えると、続けた。


「でもね、今回は……”召喚獣大会”だから。ダーウェイくんも、わたしと似て……そして、非なる才能……。”秀才”だよ。」



 ◇◇◇



 試合会場に、ダーウェイが入場する。


(おお……、ありゃ、『主人公』、だな。)


 サジがダーウェイを見た第一印象である。

 ダーウェイは、整った顔に、自信と謙虚さを兼ね備えた表情で、また”召喚術士”のイメージに相応しい、青く美しいローブに身を包んでいた。

 


 そして、試合が始まる。

 

 試合展開は、劇的な展開が続いたここまでの三試合とは、対照的なものとなった。

 

 極めて固く、変化の乏しい、ただし強度の高い、展開。



 ラエが召喚したのは、ラエと全く同じ形で、ただし色が真っ黒に染まった[分身]。

 [分身]は、剣を振るう物理的な近接攻撃と、剣に魔力を帯びさせて放つ遠距離攻撃の衝撃波で、攻撃の手を緩めず、また高速の動きで翻弄し、機動力と攻撃力を活かした戦いを進めた。



 対するダーウェイが召喚したのは、炎の召喚獣[イフリート]。

 その[分身]の足を止めるように、足元に炎を展開し、機動力を封じていく。

 加えて、衝撃波に対抗する火球、物理攻撃に対する火炎放射で、[分身]に対してリーチによるアドバンテージを徐々に稼いでいく。


 フィールドに帯びさせた炎は、[分身]の足を止め、逆に[イフリート]を加速させる。──まるで、火の檻を組み上げるように。



 観客席も、固唾を呑んで見守っていた。


 じりじりと、じわじわと。


 緊張感の続く展開の中で、時間は進み、そして。


 粘りを見せた、[分身]の足場以外は、全てのフィールドが炎に満たされてしまった。



「ここまで、ですね。こうなる前に逆転の一手が欲しかったのですが。降参です。」



 ラエの宣言によって、勝負は決した。


 ◇◇◇



「なにやってるか細かいことは全然わからなかったけど、ガッチガチな勝負をしてたのは、なんとなくわかったよ。達人級ともなると、なんちゅーか、こう、ストイックで、すごいんだな。詰めていく様子が、まるでチェスみたいだ」


 サジのそんな感想に対して、ポタルは


「そうだね。堅実に、確実に。ダーウェイが炎の召喚獣を選んでいるのも、完全にラエさんを想定した上での選択だった。わたしも、同じように相手に合わせた召喚獣を選んだけど、罠を張るような戦術を使った。ダーウェイは、そうじゃない。きっちり、教科書通り、積み上げる。お手本のような戦いをするのが、彼の強さ。」



「天才対秀才、見られるかな。どっちが勝つか気になるところだ」



「ふふっ、どうだろうね?まずはお互い決勝までいかないと。」



 ◇◇◇


 そんな二人の会話をよそに、競技場の外では――


「準備はいいか、お前ら。やることはいつも通りだ。」

「数とシステムの力で期待値を積んで、勝利を掴む。今回は、観客席の四隅に散らばって、サポートをしろ。」



 第四試合の出場選手、シゴロー・セティとその一派”セティ軍団”は、静かに動き出していた――。



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