Ex3話 予選会!
――エンデュラン王国、王都オルタナピア、南地区、競技場。
ポタル、サジ、オンは、ポタルの”王都召喚獣大会”予選のため、競技場、控室にいた。
本戦は八人制のトーナメント形式で、王都公認の公開試合として盛大に行われる。だが、その前に――まずは予選で出場者が絞り込まれる。予選は非公開、観客もいない静かな空間で行われるという。
試合会場を下見する。
「ほー、ここが本番の会場か。屋根は、ないんだな。空が青く澄んで見えるな。うん、ちょっとばかし、眩しいか?」
「屋根なんてあったら、貫いて壊れちゃうよー♪召喚獣大会以外にも、王都では色んな戦いの催しもあるし!」
ポタルの指摘に、サジは「そんなスケールなのか」と驚く。
その試合会場を下見した後、ポタル達は控室で会場と、対戦相手の準備を待っていた。
ところが。
控室に戻って待機していると、大会スタッフの一人が慌ててドアを開けて入ってきた。
「ポタル・ギムズさんですか? 本日予定されていた予選の対戦相手、ラーク・ダンスバードさんが体調不良により棄権との連絡がありました。つきましては、ギムズさんは予選免除で本戦出場となります」
「えっ!? ……えー……っ!?」
ポタルが露骨にがっかりした表情を浮かべる。
「ダンスバード氏になにかあったんですか?」
(なんとなくだが、こういうファンタジー世界での大会でのドタキャンと言えば。
陰謀が絡んでたりする……なんていうのが、定番だから、念の為。)
サジはスタッフに尋ねた。
「いえ、大したことではないらしいんです。張り切って、ご飯をたくさん食べて、結果お腹を痛めた、とのことで……」
深読みし過ぎていることが自分の表情でバレていて気恥ずかしくなったのと、 なんとも気の抜ける理由での欠場理由から、視線を遊ばせながらサジが答える。
「あ、そ、そうですか……。それならよかった、いや、よくはないですね。ハハハ。」
そして、そそくさと大会スタッフは控室から出ていった。
「やだー、せっかく体慣らしができると思ったのにー……」
「サジにいいところ見せる機会も一回分、減っちゃったぁ。」
ポタルは明らかにがっかりしていたが、対照的に、サジはふぅ、と一息つき、安心したようにソファにどかっと座った。
「いや、俺はほっとしたよ。ポタル、1,000リムを賭けた試合なのに、毎日フツーに食堂のご飯食べてただろ。なんか、刺激が強い、辛そうなやつとか。」
「受験生を見る親の気分でヒヤヒヤしたよ。大会参加を煽っておいて体調不良なんて、一番恐ろしいからな。」
「うーん、まぁ、確かにね」
ポタルは少しだけ気を取り直して体を起こす。
「食あたりで試合に出れなかったラーク・ダンスバードさん、一体どんな人だったんだろうね。」
「そうだなぁ、ダンスバード……。」
サジとポタルは、それぞれ、好き勝手に、ベッドに寝込む『ラーク・ダンスバード氏』の姿を想像したのであった。
◇◇◇
後日。イニシアの街、ギムズ召喚屋に、出場者情報が届いた。合わせて、本戦のオッズ(倍率)も発表されたようだ。
「サジー!出た出た!さっそくチェックしよう!」
サジとポタルが並んでパンフレットを覗き込む。
◇◇◇
【王都召喚獣大会・本戦出場者一覧】
-所属ブロック
-エントリーナンバー
-名前
-武/文ランク
-オッズ
-大会運営のコメント
-Aブロック
-No.1
-ゲンキ・パープルオーガ
-武:E/ 文:e
-オッズ:10.0倍
-王都ランク未所持のため、ランクは初期設定値。鬼人族の召喚士。
-Aブロック
-No.2
-ギラギラ・ゴールディング
-武:A/ 文:a
-オッズ:5.9倍
-小人族。種族内では有名人のスター召喚士。
-Aブロック
-No.3
-ハル-リトル・ウィンターの従者
-武:B/ 文:a
-オッズ:7.3倍
-使い魔の使役に長けた賢者リトル・ウィンターの従者。賢者の仲介役として王都に大きく貢献。
-Aブロック
-No.4
-ポタル・ギムズ
-武:B/ 文:a
-オッズ:8.0倍
-召喚屋ギムズの若き店主。一番人気ダーウェイとは元同級生の関係。
-Bブロック
-No.5
-ダーウェイ・ケンリス
-武:A/ 文:a
-オッズ:4.3倍
-大手召喚屋サモン・サモンの次世代を担う人材。堅実な戦いが魅力。今大会の本命か。
-Bブロック
-No.6
-ラエ・チバ
-武:S/ 文:s
-オッズ:6.4倍
- Sランカー剣士。本来の戦闘スタイルは、自身の高い能力と召喚獣によるコンビの剣技。
-Bブロック
-No.7
-シゴロー・セティ
-武:A/ 文:a
-オッズ:5.3倍
-『セティ軍団』を率いる長。寸前で失敗されたクエストを回収する「ハイエナ」ムーブは賛否両論。
-Bブロック
-No.8
-クイダ・レフト・オルトロス
-武:B/ 文:s
-オッズ:7.0倍
-王都西地区の役人。名門レフト・オルトロス出身。
◇◇◇
「……うっわ、倍率たっか。下から二番目か、8.0倍?」
サジは見て苦笑する。
「まぁ、普段から派手に暴れたりしないからね。地味なわたしに、あんまり賭けてくれる人はいないよ~」
「なるほど……」
サジはしばらく腕を組んで考え込んだ後、言った。
「ポタル」
「ん?」
「俺、ポタルに、2,000リム賭けるわ」
「へっ!? ちょっと、え、え、え? それ、参加費の倍だよ!? なにしてんの!?」
「これだけ倍率高いなら、優勝したら16,000リムになるってことだろ?参加を勧めた責任を取るさ。」
「なんなのその顔、やたら男前なんだけど!? っていうか、え!? わたしの方が緊張してきたんだけど!」
「大丈夫だろ? 君は召喚の天才だし。俺は知ってる。」
サジはニッと笑って、オンと顔を合わせるためにしゃがんだ。
「オンも、応援頼むな。勝ったら、取り分はオンにやるよ。」
「オンっ」
オンは、そんなにあっても使い道がないなぁと思った。
だが、それは贅沢な悩みだと思い返し、元気よく答えた。
◇◇◇
――エンデュラン王国のどこか、ラーク・ダンスバードの部屋
ラーク・ダンスバードはベッドで仰向けになっていた。くわえていた体温計を吐き出すと、呟く。
「え?オイラの出番、コレだけ?」
……普通は、ここで黒く画が絞られて、ラークの顔だけが残って、となるところだが。
その傍らには――、
「そうですね、お疲れ様でした」
その疑問に回答する者――女神ギムが居た。
「そんなあなたに朗報ですが、物語は、まだまだ続くようですよ。」
「え?じゃあオイラにも出番があるってコト?」
「いいえ、ありません。特に、あなたのようにメタ要素を発言してしまっては、本筋には絡めませんね。」
「なんだよそれ。」
「がんばって、映り込んだらどうでしょう。」
「映り込む?これ、マンガでもアニメでもなく小説でしょ?どうやってやるんだよ。オイラが場面に居たって、余計なノイズになる情報は切られちゃうよ。」
「あら、よくご存知で。そうですね、物語上必要の無い情報は載せるべきでない、というテクニックを、『チェーホフの銃』と言いますね。」
「ほらやっぱり。」
「でもね、努力は無駄にはならないと思いますよ。ほら、いま、一生懸命あなたの外見的な特徴をアピールして、みんなに覚えてもらったら、早く体を治して、競技場に映り込みに行きましょう」
「……え!?お、オイラ、ラーク・ダンスバード!青くて小太りな二足歩行のトリで、上半身はアロハシャツ、下半身は短パンを履いてて、陽気な感じで、えーと、あと、あと……。」
そうして、場面は暗転する――。




