Ex1話 参加動機!
本編12話中の召喚獣大会のお話、兼、設定資料まとめ的なもの、です。
一応、それなりにはちゃんと考えてるんだよ!っていう……
本編ではあまり多く割けなかった、戦闘シーンがたくさんです!
――エンデュラン王国領土、イニシアの街、召喚屋ギムズにて。
「それ、よいしょ、いちに、いちに、あーん、よがじょーず、と。」
その日、サジは店の裏手の広場で、オンの前足を持ち上げて、二足歩行の練習をさせていた。
きっかけは、ポタルの言葉だった。
『使い魔はね、熟練していくと、人型に変身出来るようになるんだよ!』
(そういえば……俺、オンのことペット扱いしてたかもな。)
そう反省したサジは、「少しはヒトとして扱わなくては」と思い立った。だが、
「オンも人型になれるのか?」
と本人に聞いてみたところ、首を振られたため、なんとなく、こうして歩行練習を始めたのだった。
「お、飲み込みが早いな! 今日中には二足歩行できるようになるんじゃないか?」
オンは賢い使い魔なので、本当はサジが想像する以上に高い知能を持っている。
使い魔の特性として、生まれた瞬間からサジの記憶を共有しているので、サジの現実世界の経験も、異世界での経験もちゃんと頭に入っている。
……ただ、それを知らない主人が一生懸命手を引いてくれるのが、なんだか嬉しくて。
だからオンは、黙ってこの時間を楽しんでいた。
そんなとき。
「こ~んに~ちは~↑」
聞いたことのある声が聞こえた。
店に来ていたのは、ハーピー。胸に「バラード・ランド・ハーピー」と書いた名札をつけている。
以前、「ハピサキ」のハーピーの代表として召喚屋ギムズに訪れていた人物である。
「これ、ポタルさんにぴったりだと思って~↑」
バラードが持ってきたのは
「王都召喚獣大会……?」
◇◇◇
――王都召喚獣大会。召喚術士が、己の召喚獣を1対1で戦わせ、その優勝者を競う大会。
「というわけらしいんだが、ポタルは出場しないのか?」
「やだ。」
研究室から連れ出してきたポタルの第一声である。
「「えー↑!?」」
サジとバラードが同時に声を上げる。
「面倒くさいし、目立ったって良いことないよ。今だって、別にお仕事には困ってないしね。」
「そうか?残念だなぁ。」
「お?」
「せっかくの召喚の天才の技、俺としては見てみたかったなぁ。」
「ほほう」
「仕事半分って言ってたけど、最高の観光の思い出に、なると思うんだよなぁ。」
「そうかそうか、なるほどなるほど」
ポタルの表情が変わった。
「そういうことなら♪いいかもねぇ。」
「そうそう、この大会、王都公認で賭けの対象にもなってるんだよね。」
「サジの衣食住は全部面倒見てたし、一人で買い物もしないだろうから、給料を渡してなかったけど」
「帳簿にはしっかりつけてあるから、今回、わたしに乗っておけば美味しい思いが出来るかもね♪」
(ノってきたな。ありがとう、女神ギム様)
ポタルをノせることに成功し、あの憎たらしいがどことなく憎めないあの女神に、初めて感謝する。
「そうしたら、問題は」
そう言いながら、ポタルがポスターを裏返す。
そこには。
『
参加費
・S/s以上のランカー 500リム
・A/aランカー 1,000リム
・B/b ランカー2,000リム
・C/cランカー 3,000リム
・D/dランカー 4,000リム
・E/eランカー 5,000リム
※1参加キャンセル時は半額返金
※2予選会勝利時は全額返金
』
「まぁ、<<薔薇の月>>案件で結構儲かったから、大丈夫そうだね?」
「なにこれ」
サジが質問した。
「見ての通りだよ。この大会はね、参加費がかかるの。わたしはBaランクだから、1,000リムかな。」
「1,000リム!?イニシアのパン屋が1個1リムだから100円としたら……ざっくり10万円ってことか?かなりかかるじゃないか。」
「予選で勝てば返ってくるから!あ、負けたらおしまいだけど」
「怖いって。」
ひと呼吸おき、もう1つ、気になることを質問するサジ。
「じゃあ、A/aっていうのは……?」
「それはね。」
ポタルが説明する。
王都のランクには、大文字で表される”武”のランク、つまり戦闘力のランクと、小文字で表される”文”、つまり学術や、政治的、経済的、文化的貢献のランクの2種類がある。
多くの冒険者の場合、クエスト等を成功させることで文武の両方のランクが上がるので、文ランクの方はあえて省略することも多い。と。
「へー……確か、ロゼさん達がC、カーロウがBって言ってたっけ。」
「そうそう。で、うちは商売を誠実にやってるけど、あんまり戦闘力を見せつけることはしてないから、Baランクなの。」
(予選で負けたら1,000リム、つまり100,000円失うのか……?体調不良で欠場とかでも5万円だろ?うーん。煽っておいて、少し申し訳ない気分になってきたな……。)
「ち、ちなみに、なんで大文字と小文字に別れてるんだ?」
「それはですね~↑」
バラードが教えてくれる。
「昔のエライ人が言うには――、」
「『剣はペンよりもデカし』、だそうです~↑」
(なるほど――。深いな……。)
こうして、召喚屋ポタル・ギムズの王都召喚獣大会への挑戦が始まるのだった。




