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時が止まった夏の日

蒸し暑い夏の日射しが町を包み込む。


私は汗をかきながら、猫を散歩で公園に連れて行った。母がこの世を去ってから、私の人生の友となったこの猫を、毎日欠かさず公園に連れて行くのが日課になっていた。


猫は草原を縫うようにしてのんびり歩き、時折小さな虫を追いかける。私はベンチに腰を下ろし、その姿を眺めていた。


すると、不思議なことに、猫の動きが徐々に遅くなっていく。まるで時間が止まっていくかのように。

周りを見渡すと、木々の葉も風にそよがず、バスの通り過ぎる音も聞こえない。鳥のさえずりも虫の音も途絶えていた。


私は戸惑いながらも、興味深く世界を眺めた。時が完全に止まった中、たった一人、私だけが動ける存在になっていた。

不安と好奇心が交錯する中、私は立ち上がり、猫のそばに行った。猫は固まったまま、途中で動きを止めていた。


私は猫に触れてみた。冷たくなかった。まるで生きているように。

町を歩き始めると、人々の表情や仕草が、ある一瞬で凍りついていた。赤信号で止まった車の運転手の焦燥感に満ちた表情。スーパーの前で野菜を選ぶ主婦の好奇心に満ちた眼差し。子供たちの遊びに夢中な姿。


時間が止まったこの世界では、人々の表情や動作が生々しく浮かび上がっていた。

私は町の公園に行き、ベンチに腰掛けた。まだ朝日が昇った直後の景色だ。美しい朝日が高層ビルに反射し、まぶしい光を放っている。


いつまでも同じ朝日を眺められる。ずっとこの瞬間に留まっていられる。それがこの世界の魅力だった。

しかし同時に、この静寂な世界に閉じ込められ、一人取り残されてしまった恐怖も感じた。


そんなとき、猫の鳴き声が聞こえた。時間が再び動き出したのだ。

猫は草原を歩き回り、虫を追いかけていた。人々の表情は生き生きと動き出し、バスの音、鳥のさえずり、すべてが元に戻っていった。


夢からさめたような、いや夢以上に実在感のあった出来事に、私は戸惑いと感動を覚えた。

猫に促されるまま、私は猫の散歩を再開した。時が止まった世界で味わった静寂な景色が、今になっては懐かしい思い出となった。


地上は快晴。空には夏休みを祝福するかのような、白い雲が浮かんでいる。

私たちはゆっくりと、この世界を歩み続けていく。

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