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星のささやき

夜風に乗って、星々のきらめきが舞い散る静かな夜。


そんな夜に、ある小さな村で1人の少年が一生懸命歩いていた。大きな荷物を抱えながら、時折つまずきそうになりながらも、必死に足を前に出し続けている。


「もうすぐだ、そこまで行けば星に会える」


少年の名前はリリウス。空の色が変わり始めた頃から、夜な夜な山の上にある小さな丘に行き、そこで星空を眺めるのが日課になっていた。


そこは誰もいない、静かな場所だった。しかし、リリウスはそんな場所が大好きだった。なぜなら、そこでは星々とひとりになれるから。

丘の上に着くと、リリウスはシートを広げ、その上に寝転がった。そして、いつものように星空を見上げた。


「きれいだなぁ」


幾億という星々が、まるで舞い散るように輝いている。その光は、まばゆいばかりに眩しい。しかし、リリウスはそれでも、決して目を逸らすことはなかった。

ふと、1つの星が、他の星よりも明るく光っているのが目に入った。


「あれは...?」


リリウスは大きな荷物の中から、望遠鏡を取り出した。そして、その明るい星を見た。


「綺麗な色をしている。まるで、ひとりでに話しかけてくるみたいだ」


そう感じたリリウスは、つい熱心に星を見つめていた。すると、突然、その星が大きく光りを放った。


「きゃあ!」


思わずリリウスは叫んでしまった。しかし、怖がっているよりも、どこか嬉しさを感じていた。というのも、リリウスはこの星との出会いを、何年も前から待ち望んでいたのだ。


両親に連れられ、初めてこの星を目にした時のことを、リリウスはよく覚えていた。


「あれが、きみの守り星なんだよ。きみが生まれた時から、きみを見守ってくれている星なの」


そう言われて以来、リリウスはこの星に強く惹かれるようになった。親から教わったとおり、いつも星に願いごとをしていた。


「助けてほしいこと、望むことがあれば、必ずこの星に伝えてごらん。きっと、星はきみの願いを聞いてくれるはずだよ」


時が経つにつれ、リリウスは星への想いを、誰よりも深く抱くようになった。


「この星といつか、会話ができたらいいなぁ」


それは、リリウスの一番の夢だった。

そして、この夜、夢はついに叶ったのである。


「光る...この星が、光っているんだ...!」


目を疑うほどの、強い光だった。だが、リリウスは怖がることなく、むしろ、喜びに満ちた気持ちで、その光を見つめていた。

やがて、その強い光は静かに収まっていった。しかし、リリウスにはもうひとつ、驚くべきことが待っていた。


「...はじめまして、リリウス」


低く、優しげな声が、リリウスの頭の中に響いたのだ。


「え...!? な、なんて言ったの...?」


リリウスは信じられない思いで、星を見つめ直した。


「私は、この星の守り手よ。きみが生まれた時からずっと、ここでひとりぼっちで見守っていたの」


「守り手...?」


「そう。私はこの世界のあらゆる星を見守る役目を帯びている存在なの。そしてこの星は、きみの存在を見守る私の大切な一部なのです」


リリウスは、唖然とした。

これまで夢に見ていた、星と会話することが、本当に実現したのだ。


「う、うれしい...!夢だと思っていた...!」


涙が込み上げてきたリリウスは、とっさに自分の願いごとを伝えた。


「僕、パパとママを亡くしてから、ずっと一人で生きてきたんだ。親がいなくなって、本当に辛かった。でも、いつもこの星を見ていると、少し安心できたんだ」


「そうか...辛い思いをしてきたのね」


優しい口調で、守り手は言った。


「でも、きみはひとりじゃないわ。この星があなたを見守っているのよ」


「本当に?」リリウスは期待に胸を膨らませた。


「ええ、本当よ。きみの両親は、きみを这う程愛していた。だからこそ、あの世からこの星を通して、いつもきみのことを見守っているの」


「え?!パパとママが?!」


リリウスは信じられず、涙が込み上げてきた。


「きみが寂しくないように、きみが幸せでありますようにと、二人は毎日この星に願っているの。だから、決して一人じゃないわ」


「パパとママが、僕のために...」


リリウスは心の底から嬉しく思った。自分の気持ちが両親に伝わっていたことを知り、胸が熱くなった。


「ありがとう、守り手。本当にありがとう」リリウスははにかみながらも、心から感謝の言葉を述べた。

守り手も優しく微笑み返した。


「これからもずっと、きみのそばにいるから。いつでも私に話しかけてちょうだい」


その夜、リリウスは守り手と長らく語り合った。自分の思いを打ち明け、守り手の言葉に耳を傾けた。

やがて夜が明けると、リリウスは丘を後にした。しかし、今度は一人ぼっちではなかった。


守り手が言うとおり、リリウスには大切な存在、両親の想いが寄り添っていた。それを感じながら、リリウスは自分の人生に希望を抱くことができた。


この出会いをきっかけに、リリウスの人生は大きく変わっていった。

守り手のように、誰かの支えになれる人間を目指し、リリウスは夢に向かって歩み始めた。

きっと両親も、この星からリリウスの成長を見守り、喜んでいることだろう。


そう信じながら、リリウスは進んでいく。

夜な夜な、希望の星に導かれながら。

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