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畢生賛歌  作者: しちく
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異世界の約束

目が覚めると、私は見知らぬ場所に立っていた。周囲は緑豊かな森林で、木漏れ日が柔らかく地面に降り注いでいる。ここはどこだろう?確かに私は自分の部屋で寝ていたはずだ。混乱と不安が胸を締め付ける中、私はゆっくりと歩き出した。


歩いていると、どこからか清らかな水の音が聞こえてきた。音の方向に進むと、澄んだ小川が流れているのが見えた。私は少し安心し、水を飲むためにひざまずいた。その瞬間、背後から優しい声が聞こえた。


「こんにちは、旅人さん。」


振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。彼女は長い銀髪を風になびかせ、透き通るような青い瞳で私を見つめていた。その美しさはまるで絵画のようで、私は言葉を失った。


「ここはどこですか?」ようやく声を絞り出して尋ねた。


「ここはエルドリスの森、あなたは異世界から来たのですね。」


異世界?その言葉に私は再び混乱した。彼女はにっこりと微笑み、手を差し伸べた。

「私の名前はエリス。この世界を案内して差し上げます。」


エリスに導かれながら、私は森を進んだ。彼女はまるでこの場所の守護者のように自然と調和していた。木々の間をすり抜ける風、鳥のさえずり、すべてが美しく、現実とは思えなかった。


「どうして私はここにいるのですか?」再び質問を投げかけると、エリスは少し考え込んだ後、静かに話し始めた。


「この世界はあなたの心が呼び寄せたのです。何か大切なものを失ったのでしょう?」


その言葉に胸が締め付けられた。確かに、私は最近大切な人を失い、深い悲しみに沈んでいた。しかし、どうしてそれがこの異世界と関係しているのか、理解できなかった。


「この世界には、失われたものを取り戻す力があります。」

エリスの言葉に、希望の光が見えた。

「しかし、そのためには試練を乗り越えなければなりません。」


試練。その言葉は重く響いたが、私は決意を固めた。何としてでも、失ったものを取り戻したいという強い願いが私を突き動かした。


エリスの案内で、私は様々な試練に立ち向かった。険しい山を越え、暗い洞窟を進み、炎の谷を渡った。それぞれの試練は私の心と体を試すものであったが、エリスの励ましと支えが私を前進させた。


最終的に、私たちは一つの古い神殿にたどり着いた。神殿の中央には、大きな水晶が輝いていた。エリスは静かにその水晶に手をかざし、優しい光が辺りを包んだ。


「これが最後の試練です。あなたの心の中にある真実を見つけること。」


私は水晶に向かって目を閉じ、心の中を探った。失ったものへの悲しみ、絶望、そして愛。それらすべてが混ざり合い、一つの真実にたどり着いた。


「私は失ったものを取り戻すためではなく、その存在を胸に刻んで生きていくことが大切なんだ。」


その瞬間、水晶が眩い光を放ち、私は強い引力に引き込まれた。気がつくと、私は再び自分の部屋に戻っていた。すべてが夢のようであったが、手には一片の輝く水晶が握られていた。


それはエリスからの贈り物だったのだろうか。私はその水晶を見つめながら、心の中で彼女に感謝を伝えた。異世界の旅は終わったが、私は新たな希望と共に生きていくことを誓った。


これからも、失ったものの記憶と共に、前を向いて歩んでいこう。異世界での約束を胸に、私は新たな一歩を踏み出した。

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